イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「夏の到来」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

日本より格段に早くやってくる夏シーズン

7月の二週目。日本では梅雨明けが待ち遠しい頃で、
気温はかなり高くなり暑い日々が続いていたとしても、
雨が多い梅雨の時期にはなかなか夏シーズン到来というイメージにならないもの。
ここイタリアではどうなのかと言うと、”夏”は日本に比べるとかなり早い時期からやって来ます。
日本同様、南北に長い地形を持つイタリアでは、北部と南部の気候はかなり異なります。
北部は国境にあたる北側にアルプス山脈がひかえ、冬は寒く夏は湿気を感じ、
南部から中部にかけては地中海性気候となり、比較的乾燥していて雨が少ないのが特徴です。
私が住むマルケ州はイタリアの中部エリアにあり、
気温に関しては日本の東京や大阪とあまり変わらないのですが、
ジリジリと照り付けるひの陽の力や、夏は21時頃までは日が残ることで、
地中海性気候であるイタリアらしい気候を感じ取ることができます。
逆に冬は日が短く、雨が多めで湿気が高くなり、日本より陰鬱な雰囲気に包まれます。
その反動なのか、イタリア人の”夏”に対する思い入れはとてもアツく、
その到来を今か今かと待ち望んでいる熱を感じることが出来ます。

待ち遠しい夏も大人にとっては難しい問題も

日本でもニュースで流れたようですが、2019年の今年は6月末にアフリカからの熱波がヨーロッパの西部を襲い、30度後半から40度という気温を記録した場所も多く、
5月が涼しかったこともあり、まさに突然の夏の始まりとなりました。
ただ、ここではこのように気候の変化から感じる夏の到来と、
イベントで感じる夏の到来の2つが存在しているように思われます。
イベント、、、そう学校の夏休みです。
私自身も相当驚いたのですが、とにかく夏休みが長い。
我が家近所の学校の夏休みのスタートはなんと6月の3週目(にある月曜日)。
ですので、今年は6月8日の土曜日から子どもたちの夏休みが始まりました。
ちなみに終わりは9月中旬です。
このようにして、やっとで夏が始まるかなという時期に強制的に夏がやって来るのです。
子どもたちが夏休み期間に入ると、街は子どもの姿であふれ、一斉に夏モードに突入します。
想像にも易いと思いますが、子供を持つ親にとっては本当にたまったものではありません。
そこに登場するのが、Centro Estivo(チェントロエスティーヴォ)と呼ばれる、
子供を預かってスポーツや遊びなどを指導してくれる活動団体と、
ベビーシッター役のおじいちゃんとおばあちゃん達です。
夏が近づいてくると、ママたちはCentro Estivo探しを始め、いろいろな情報を交換し合います。
内容や時間帯、価格なども様々で、自分たちの条件にフィットするもの選りすぐるためです。
また、おじいちゃん、おばあちゃんは、孫の為に自分たちの時間を全て捧げなくてはなりません。
それにしてもこの学校の運営状況については本当に疑問です。
普段の授業はお昼までの場合が多く、子どもたちは昼過ぎには帰宅します。その上このロングな夏休み。
恐らく、授業時間数も日本等に比べるとかなり短いでしょう。
子どもたちの為にも、その周りの大人のためにも、もう少し「勉強させる」環境を持続させたら良いのにと思わずにいられません。
この状況は誰にとって得なのかしら?と。
そう言えば、私が行く砂浜にいる毎回必ず出会う、真っ黒に日焼けした女性の職業は「小学校の先生」。
このイタリアの教育カリキュラムは、もしや先生達が楽をするために考えられたのではないか?
なんて、疑問に思ってしまうくらいです。

イタリア的な海の楽しみ方

さて、せっかくですのでイタリアでの海ライフの楽しみ方を紹介します。
私が住むのは町の名前にも海を意味する言葉が含まれているくらい、”海近”な街です。
街に住むのはもちろん普通に暮らしている人がほとんどですが、
夏の間はいくつかのアパートは長期滞在用のアパートとして貸し出され、ツーリストの人たちの姿もチラホラと見かけるようになります。
海岸は遠浅で砂浜で、冬の間に海水が浜辺を侵食するため、季節の始まりには砂を補充する作業をするようです。
砂浜はStabilimento(スタビリメント)と呼ばれる海の家が立ち並び、
そのStabilimentoがビーチパラソルを固定して設置し、それに椅子やベッドを付けて海水浴客に貸し出します。また、貸しロッカーなどもあり、海通いの人たちはそこに荷物を保管することが出来ます。

スタビリメントごとに統一されたパラソルが美しい混み合った浜辺

海に来る人の8割以上は、このスタビリメントの貸しパラソルを利用しているように思います。
シーズンごとで、月ごと、日ごと、と借り方のパターンもいろいろとあります。
また、Spiaggia Libera(スピアッジャリーベラ)と呼ばれる浜辺もあり、ここは自由に利用でき、
家から持ってきたパラソルやベッドを広げることができます。

がらんとしたSpiaggia Libera。無料で利用できるのに、こんなに広々とした空間が残っています

パラソルを伝い歩いてお友達とお喋りをしたり、ちょっと泳いでみたり、延々と海岸を歩いたり、楽しみ方はそれぞれ。
午前中お友達とお喋りしてして過ごし、お昼ご飯は自宅に帰って取ってから少しお昼寝。
そしてまた午後4時頃から浜辺へ、といった スタイルの人が多いでしょうか。
もちろんスタビリメントの中には、レストランなどを併設しているところもあり、
こんな感じで浜辺のオープンテラスで食事をとることも出来ます。

水着とバスタオルを持てば、気軽に浜辺でくつろぐことができるのはとても良いですよね。
この時期に日本からいらっしゃる方には、ぜひ、一日だけでも良いので、
このイタリア的な海の楽しみ方を経験されて頂きたい。
不思議なもので、貸しパラソルとベッドを借りるだけで、贅沢感はとてもUPします。
「お金を出して借りるならば、買ってでも持っていって繰り返し使ったほうが経済的だ」、
なんて思ってしまいがちなのですが、この少しの余裕が大きな違いを生み出します。
驚くほどのバカンス気分を得ること出来ますので、ぜひ、お試し下さい。
「イタリアでの所得は低く、とても大変な状況だ」と耳が痛くなるほど聞くのですが、
快楽のためになら、”節約できる余分なもの”にでもお金を使う彼らを見ていると、
楽しむことに対しての貪欲さの違いをまざまざと感じずにはいられません。
私が彼らのようになれる日はまだまだ来なさそうです。


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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