イタリア時間「見た目良ければ全て良し」

イタリア時間でびとくらし

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

住まいに潜む予期せぬ「危険」

ちょっとした休憩時、仕事の途中にお茶を戴く。
日本では当たり前の光景ですが、イタリアにはその習慣はあまり浸透していないように思われます。
食後と言えば日本では温かいお茶をいただきますが、こちらでは食後酒や小さなデミタスカップで提供されるエスプレッソコーヒーが主流。食べ過ぎた時にはTisana(ティザーナ)と呼ばれる消化を促すハーブティを摂ることもありますが、これも自宅でならの話しで、外食の際にTisanaを頼んでいる人を今まで見たことは一度もありません。
こう改めて文字にしてみると、不思議なのが「彼らは日中は何を飲んでいるのか」ということなのですが、これも思い当たるものが無いのです。そもそもコンビニや自動販売機も無いですし、どうやって頻繁に水分を補給しているのでしょうか?不思議です。

話しが大きく逸れてしまいました。
イタリア人の水分補給の謎はまた別の機会に迫るとして、温かいドリンク類を頻繁にとる習慣がないイタリア人の住まいには日本人の住まいには必ず常備されている”ある”電化製品が存在しません。
それは電気湯沸かし器、「ポット」です。
インスタントコーヒーや紅茶も飲まない、インスタントラーメンを食べない、となると、たしかに卓上にあっていつでも熱湯が出るポットは必要ないモノですものね。
とは言うものの、我が家では私が一日の大半をマグカップ片手に過ごすので、ポットは生活必需品として購入しています。
電気屋さんに出向いて、いろいろな商品の中からデザインが良く、お値段も安すぎず高すぎないもので選び長年使っているわけですが、このポットがとにかく危険きわまりない。
というのも、お湯を沸かすとポット本体も熱せられ、水が入っている胴体部分の温度が火傷を引き起こす程にまで急上昇するのです。ポット自体が熱くなるなんてこと、予想だにもしていなかった私にとっては、この事実は本当に驚きでした。
確かにポットの胴体は銀色に輝くメタル素材を使った一重構造で、熱伝導率の高さは半端ないと見て取れます。こんなに危険な作りの電化製品が、安かろう悪かろうのお店ではなく超大手の電気屋さんで売られていたこと、また「そんなものだ」と認識され、問題にもならないということに大きなショックを受けました。

ちなみに日本の家庭にあってイタリアの家庭では稀にしか存在しない電化製品の一つに、電子レンジもありますよ。

使い勝手は二の次がイタリアらしさ?

キッチンでのポット事件はこちらに来た当初の話しですが、時同じくして寝室とバスルームでも「窓」で危険な目にあいました。
イタリアの窓は、日本の様に省スペースを意識して引き戸タイプではなく開き戸タイプが主流です。開く方向は内側になりますので、窓を開けると室内に窓部分がグインと侵入してくる形になります。
イタリアの多くの家庭ではカーテンを付けていない場合が多いのですが、恐らく、窓を内側に引き開けるのでカーテンを吊り下げると邪魔になるので取り付け無いのだろうな、と私は想像しています。
ですので、カーテンは付けずタッパレッラやセランダと呼ばれる雨戸の存在で外からの視線や光を遮断している場合がほとんどです。

イタリアの窓のカーテン問題は、窓枠にレースカーテンを付けるのが主流ですが、窓を開けると意味がなくなります。窓の外にカーテンを付けている場合も…。

そもそも内側に開いている窓の存在は、私にとっては全く未知のモノ。
窓を開けたら風が通って良い気分だと感じはするものの、それと同時に室内には「窓枠と窓ガラス」という物体が宙ぶらりんになって存在している状況を、脳内にうまくインプットできないのです。
本当に慣れというものは怖いものです。窓を開けて障害物が発生する事象なんて永く親しんできた日本の住まいではあまり起こりませんからね。

何が起こったのかと言うと、その日、私は開けきらず中途半端に開いた「窓」の下にいる状態から、そのまま勢いよく立ち上がったのです。
窓枠は木枠なのですが、構造枠はアルミ製。
鋭利な部分がユニバーサルデザイン思考で保護されていたりするのか?
いえいえ、こちらの家具にはそんな気遣いはまったく為されておらず、先端部分はアルミがむき出しのままでその部分を背中に食い込ませる、という惨事に襲われました。
もう痛いことこの上ない。
そして、その後も寝室や洗面室で何度かリピート体験をしてしまいました。
日本で暮らしていると、使い手のことを考えた安全に配慮された仕様や家具、設えが当たり前なのですが、その「当たり前」がここには存在しないのです。

見た目が大事だということ

開いた窓で背中を強打したことについてのイタリア人夫の見解は「窓を閉めなかった君が悪い」というもので、ユニバーサルデザインを求める私との間に、大きな感覚の差があることに気づきました。
そもそも、どうしてこんなに危険なものが家の中にゴロゴロと存在しているのかと言うと、デザイン性を重視しているからなのでしょう。
危険性をカバーする作りにすると、見た目が悪く野暮ったいものになることが予想できます。

デザイン性を重視するという点で、もう一つある不便なことは、あらゆる家具の掃除がしにくいということ。
素材が適しているものではなかったり、構造が力学的に間違っていたり複雑になっていたりする場合がよく見受けられます。
我が家の中でも数え上げたらきりがありませんし、なんどイラッときたことか。

使い勝手や耐久性はデザインの美しさを崩してまでも追求するものではない、というイタリア的な価値観のあり方で、それが普通と認識されているのでしょう。
ただし私は「掃除しにくい」と嘆いてはいるものの、イタリアでお伺いするイタリアンマンマ達のお家はどちらもいつもピカピカです。
どれほど、イタリアンマンマが日頃からしっかりお掃除しているのか、また、彼女たちの住まいを美しく見せることに対しての意識の高さによるものなのでしょう。
自信は全くありませんが見習いたいものです。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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