写真家からみえる景色

「変わらないこと、変わること」

写真で日常を切り取る、びとくらし

「びとくらし」のトップのメイン写真をいつもご提供いただいている、嵐祥子さん。
いつもの日常も切り取り方、感じ方次第で特別な日になることもたくさんあります。
そんな切り取り方を少しのぞかせていただきます。

「変わらないこと、変わること」

この9月は、昨年のいまごろの時期に撮影した写真を見返し、作品づくりへ向かうの気持ちの整理をする機会がありました。

その写真はわたしが育った場所で、子どものころから日常的に見ていた光景が写っています。

撮影に向かい「何を撮ったらやりたいことに近づけるだろう」と、頭の中で課題についてぐるぐると考えつつ、ファインダー越しに目に入ってきたのは、30年前と変わらない場所にあるもの。

昔から秋になると実をつけ続けている道端の柿の木。
小学校の裏手に植えてあるモミの木のかたち。
その小学校のとなりにある高校をぐるりと囲む、柵のつながり。

自分の居場所が変わっても、こころがそこへ帰ることができる原風景がありました。

そのそばを通ると、懐かしく楽しい気持ちと同時に、数々の失敗を思い出して切ない気持ちになったり、それからずいぶん時間が経って、いまはもう大人になっていることに安心したりもしました。

過去と現在をいったりきたりしながら撮影したそれらを、帰ってきてパソコンに読み込むと、画面に写真がずらりと並びます。

そのたくさんの写真の中から「感情移入をとりのぞいてどれを選ぶか」が大切な作業で、なかなか難しく、一年間そのことに向き合ってきました。

作品づくりには、講座、合評、展示など、たくさんの人と関わりがあり、そこで意見やサポートをもらえ、自分では気づきにくい答えが出てくることもあります。

ある日、いただいた助言から、自分のこだわりから距離を置いて「考え方が変わっても良いんだな」と自然と思え、一歩前へ進めたように感じたことがありました。

そしてすこし整理ができたあたらしい気持ちで撮影に向かえる、これからの季節が楽しみになりました。

「そういえば去年は見に行けなかったけど、秋になるときれいに色づいていた木は、いまどうなっているかな」と、気になり、さっそく出かける理由を見つけました。

当サイトの画像やイラスト、文書等の無断転載・無断使用はお断りいたします。ご使用をご希望される場合はお問い合わせください。

Shoko Arashi 嵐祥子

2009年、デジタル一眼レフの面白さを知り「写真を撮ること」に興味を持ち、写真表現大学で作品制作を学ぶ。 その後、ウェディングフォトに従事、2012年からフリーランスカメラマンとして活動中。2015年から一児の母です。

https://arashishoko.localinfo.jp

記事一覧を見る

カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。

  • vol.3 高齢社会の実態-家族構成と一人暮らし-

    高齢社会の実態をデータから読み解く

    日本の高齢社会の実態を理解したうえで、高齢者の「整理収納」における課題を考えます。

  • vol.2 既往研究から探る -高齢者と住み替え-

    「高齢者」「住み替え」「モノの整理」に関する先行研究のまとめ

    高齢者の住み替えやモノの整理に関して、これまでの研究ではどのようなことに着目し、どのような結論を見出しているのでしょうか。過去の研究内容を分かりやすくまとめました。

  • vol.1 高齢社会における「整理収納」

    高齢期に向けた整理収納の課題とQOL向上のヒント

    暮らしにあふれるモノは、人生の節目ごとに見直しが必要です。高齢期には生前整理や遺品整理と向き合う場面も増えますが、自分らしく整えることが、安心と心地よい暮らしにつながります。

  • bitokurashiリニューアルのお知らせ

    みなさま、はじめまして。あるいはお久しぶりです。「bitokurashi.com」をご覧いただき、ありがとうございます。 2017年7月にスタートした「びとくらし」は、2025年9月に内容やコンセプトをリニューアルをさせ […]

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]