「台所」から「キッチン」、「ケ」から「ハレ」へ

リノベーション キッチン SIMPLE HOUSE

「キッチン」つまり「台所」。
いつの間にか、「キッチン」という横文字の方が使われる機会が増えた気がします。

今では家を決める際には、「キッチン」を重点的に考えることも増えてきました。
キッチンのデザインや仕様、間取りの中でのキッチンの位置など、生活スタイルに合わせてこだわりが見えてきます。

「台所」を少し振り返る

「間取り百年 生活の知恵に学ぶ」吉田桂二著から、「台所」の位置について少しみてみます。
明治中期には、玄関のすぐ隣に台所があり、外から直接台所にも入れる勝手口がありました。大きな屋敷になると、女中さんなどがいて、家の中でも玄関から離れた場所に台所があり、外から直接出入りできる位置にありました。
大正時代には、大都市に一戸建て純住宅を建て始め、ガス台が登場しています。流しはまだ木箱で土間にしゃがんで使うのは東京の定型であったとあります。
関東大震災の後に、鉄筋コンクリート造のアパートが出現します。台所は玄関からすぐ近くですが、扉などで仕切られるようになっており、別室扱いです。上下水道、都市ガス完備の新時代の住まいです。
昭和に入ると、壁面に台所が設置され、ダイニングテーブルとあわせた一つの空間ができます。
しかし、来客を通す部屋は茶の間であり、台所スペースはいわゆる「ケ」のスペースです。戦後、1950年からは「台所革命」が起き、DKスタイルが定着し、冷蔵庫が設置されるようになります。1975年あたりには「住宅産業化」が進行し、「1.床座から椅子座へ」「2.食寝分離」「3.就寝分離」「4.家事労働の削減」「5.設備の充実化」となり、現代の間取りへとつながります。

このように台所は徐々に変化を遂げました。
台所は、以前は居室から一番遠い位置にありましたが、今ではキッチンは、部屋の中心になるケースが増えてきました。
「ケ」から「ハレ」へ
そんな、キッチンの自由を叶えているのは、ひとつは「リノベーション」の存在です。
「リノベーション」ができるようになり、住宅選びの選択肢が増えました。

存在感のあるキッチンです

本記事のトップに掲載している写真は、リノベーションから生まれたキッチンです。

LDKの空間の中に存在するキッチン、まさに「キッチンが主役」です。
キッチンに立つと、部屋全体が見渡せて、ちょっとしたスポットライトを浴びているようです。
LDにいる側からも、キッチンの様子が伺えます。今日はどんなごはんなのかな、何か手伝えることはあるかな、など空気感を自然に感じ取れる素敵な距離感です。

このキッチンは、とても懐かしい風合いと優しいテイストを、かもし出し、空間をつくっています。
面材の色や取っ手の形、機能的な収納やデザインなど、ひとつひとつのこだわりが、見えます。

天板の素材は、どこかで見たことある素材


キッチンの中でもインパクトがあるのは、キッチンの天板です。
この天板は、人工大理石ではありません。しかし、どこかで見たことある素材です。
家の中で見たことはない素材です、外で見たとしてもどこで見たのか、すぐには思い出せませんでした。
少し考えて思い出したのは、昔遊んでいた公園の滑り台です。

このキッチンをつくられた、大畑さん(㈱シンプルハウス)は「レトロ感」と「ヴィンテージ感」を出したくて、ぴったりな風合いを出すにはどうしたら良いか、考えて、考えて、、、思いついたのがこの「滑り台」だったそうです。

こだわりのつくり方をお聞きしました。

キッチン本体を木工所で作り、それを現場で組んみ、その上から木とラスカットで天板下地をつくり。
そこからモルタルを下塗り、乾いてから白セメントに大理石の小石を混ぜ、最後に扇町公園の滑り台を見つつ「この色で行こう!」と決め、色を入れて塗り上げました。
最後に乾いてから磨き、グラインダーで磨いて、念入りに磨いてピカピカにして、ようやく完成です。

大変な手間がかかっていますが、気持ちが伝わってきます。

壁面の収納

キッチンスペースにアンティーク家具のように、しつらえられた収納スペースは、「観音開き」「引き出し」「ひき違い扉」「扉なし」「稼働式の棚」などすべての収納パーツが揃っています。これだけ揃うのは珍しいです。これもリノベーションだからできる技です。
収納する物によって、出しやすくて使いやすい収納の方法は異なります。すべて同じ収納の仕様だと、使い勝手が悪くなり、うまく収納できなくなることがあります。
これだけの収納パーツがあれば、思い通りに収納ができて、整理上手になりそうです。

置きたい家電や食器類、小物や雑貨、そして本など。キッチンには様々な物が集結します。
そのごちゃっとした感じも、この空間なら楽しめますね。

オリジナルのキッチンもリノベーションだからこそ叶う点です。

 

 

————————————
「間取り百年 生活の知恵に学ぶ」吉田桂二著 2004年彰国社
ラスカット=外装内装モルタル下地材
写真はすべてSIMPLE HOUSEより


カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.15 暮らしを整えてQOLを高める提案

    高齢期におけるモノの「整理収納」の方策

    高齢者の「整理収納」において、高齢者一人では難しい作業も、サポートしてくれる誰かがいれば「できる」ことが増えます。高齢者の「整理収納」は、高齢者と、家族と、周囲の人々と、みんなで向き合うテーマだと考えます。

  • vol.14 高齢者の「整理収納」の課題と特性

    本研究を通して分かった高齢者の「整理収納」の課題

    本研究を通して、高齢者の「整理収納」における様々な課題が明らかになりました。少子高齢化が進行する日本において、課題に対する解決策や高齢者の「整理収納」作業をサポートする方法を考えてみましょう。

  • vol.13 高齢者と共に「整理収納」をして分かったこと

    高齢者の「整理収納」の特性とは

    モノの処分の判断や、整理の進め方などの片付けの作業において、高齢者特有の性質はあるのでしょうか。実際の作業を通して、高齢者と他世代の「整理収納」の違いを読み解きます。

  • vol.12 新しい住まいと整理収納の工夫

    高齢者施設での生活を読み解く

    「住み替え」経験者の現在の施設での暮らしについて紹介しています。「住み替え」時の準備や持参品など、様々なヒントを得ましょう。

  • vol.11 住み替え経験者の声

    住み替えのきっかけとモノの整理

    今回は、自宅から施設への住み替え経験者の話をもとに、住み替えを決断したきっかけや、家の処分・モノの整理方法についてまとめています。

  • vol.10 高齢期に住みたい場所

    「遺品整理」の経験から読み取る「生前整理」の必要性

    高齢になった時にどこで暮らしたいか、生前にどのような整理を行いたいか、家族に何を残したいか。「生前整理」はモノの整理だけでなく、住み替え場所を決めることや、家族に自分の意志を伝えることも含まれると考えます。

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。