イタリア時間「たのしみの5月」

イタリア時間でびとくらし

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

心たかまる高揚の季節

ようやく、本当にようやく5月がやってきました。
去年の3月から断続的に施行されていたイタリアのコロナ政策ですが、4月末にイタリア政府は大きく舵を切り経済活動の復活を前向きに行うようになりました。
去年の夏、イタリア全体が一時的に「通常運転」に戻ったものの、秋には全てにブレーキがかかり、この4月までは国民の多くが自由に身動きができない状況でした。初期に比べ緩やかな雰囲気ではあったものの、やはり気持ちはストレスフルで自由な日々をどれほど待ち焦がれたことでしょう。
そして5月という月は、間もなくやってくる夏への期待を胸に、高揚する気持ちを落ち着けることが必要な季節になります。
そんなイタリアの5月の様子を今回はご紹介しましょう。

まず5月1日は労働者の権利を謳う日になります。
私が幼いころ、日本でもこの日は電車のストなどが予定され、学校が休みになるかどうか、わくわくして待っていたことを覚えています
イタリアでは祝日となりお休みで、基本的に家族や友達と屋外でピクニックを楽しむ日として知られており、私も毎年、夫のお友達たちとBBQを楽しんだりしています。そしてこの日に食べられるものが「Le FAVE e IL Pecorino 」空豆とペコリーノチーズの組み合わせ。空豆は茹でずに生のままでぼりぼりと、そしてその合間に羊乳からできた塩気のあるペコリーノチーズを齧る、このスタイルでいただきます。ワインを片手におつまみ的に、子供たちにはスナック的なもので、この時期になると野菜売り場には沢山のガラ付き空豆が並びます。
空豆の姿を見ると「春真っ盛り」と、不思議と青々としたすがすがしい気持ちになります。

そして私達日本人からするとちょっと興味深いしきたりが5月4日と5月8日。
この2日に関してはこのエリア界隈に住む人のみが関係する祝日で、4日はアンコーナの守護聖人「サンチリアコ」、8日は私の住むファルコナーラマリッティマの守護聖人「ロザリオの聖母」の日なのです。
各コムーネには守護聖人が存在し、彼らはそれぞれ「守護聖人の日」を持っています。
その日にはそのコムーネに存在する会社や学校はお休みになり、街中には屋台が出たり教会では特別なミサが執り行われたりします。アンコーナに関して言えば、例年は1日の祝日から4日までお祭り仕様で、多くの人が連休にしてお休みを楽しみます。ですので、他のエリアでは感じられないことですが、お祭りの陽気な気分で5月は始まります。

また、なんと言っても私が住むエリアで特に気持ちを盛り上げてくれるのが海の存在です。
春先までは海辺エリアは全てクローズしており、海岸線を散歩しても、レストランなどの閉まった姿しか見ることが出来ません。そして浜辺の砂が海に持っていかれないように、山高く積まれている様子など、閑散とした様子になります。
それが、4月に入ると徐々に活気を帯びてきます。
海開きということで、海に入るにはまだ気温が上がりきっていない4月末から5月頭にかけて、海の家がオープンしだすのです。
そのために4月は冬の間無人だった施設を改装したり、装飾を施す工事が浜辺では一斉に始まります。また、冬の間に波でさらわれた砂浜の砂を戻したり調整して、浜辺を作り上げる準備をします。

そして2021年の初夏はいかに

さて、私の住むマルケ州は4月26日にコロナ政策におけるエリア分けで黄色ゾーン(Zona Gialla)に指定されました。
赤色、オレンジ色、黄色、白色と4つの色に区分けし、その規律を変えて「コロナに負けるな!」とがんばっているわけですが、この黄色ゾーンでは飲食店にてお客様を迎えて営業することが可能となります。オレンジゾーン以上だと、お店は開けれるものの、テイクアウトか配達のみでしか営業できず、客側にとっての「外食」が不可能な状況でした。
しかも、この状況がおおよそ6カ月程度続いたと記憶します。途中数週間の中断はありましたが、現に私は2021年に入ってから外食したのは一度だけ。日本にいるころは、ほぼ全食外食と言ってもよい状況だった私が、よく毎日食事を作り続けられたものだなぁ、と我ながら感心します。

また、これもイタリアらしいのでしょうが、飲食店は通常営業が可能となったものの、客席スペースはオープンスペースに限られます。外の空間でなら着席することができるという意味なのです。
イタリアでは多くの飲食店が店外で食事が出来るようになっています。
特に海辺のお店は日が落ちた夕食時間は屋外スペースをフル活用します。
ですので、日本で考えるほどハードルは高くは無いのでしょうが、それでも5月は日没後はまだ肌寒いですし、天候にもかなり左右されてしまうのが気の毒でなりません。

5月4日、8日のお祭りはかなり小規模で開催され、海開きもなんとか5月1日にこぎつけたという感じです。

とはいえ、去年のこの季節はみな不安に押しつぶされそうな日々を過ごしていました。
イタリア全土で完全なロックダウン、そしてまだまだウィルスについての認識もほとんどなされていなかった時期ですから。
それに比べると今年の5月はみなかなり前向きで、例年の様に本格的な夏へ向けての期待を徐々にふくらませていくのではないかと思います。
いや、もう無理にでも前を向いていかないと、老若男女問わず気持ちを持ち堪えることが難しい状態に来ていることが肌で実感できます。

「Andrà tutto bene “うまくいくよ”」と言う合言葉でこの緊急事態を乗り切ろうとした1年前のイタリア。いまだ「Andato tutto bene ”うまくいったよ”」とは言えないのが実情ですが、少しでも早くいつも通りのイタリアに戻ることを望んでやみません。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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