第1章 「整理収納」の課題と傾向
1-1 本章の視点
本章の構成として、「1.2 高齢社会の実態」では、近年の高齢社会における家族構成を調査し、高齢社会における「整理収納」の課題を確認する。また、「1.3 整理に関する書籍調査」では、「整理」に関して、どのような視点から関心が持たれてきたかを出版書籍をもとに把握する。
1.2 高齢社会の実態
1.2.1 高齢社会の家族構成の変化
内閣府が公表する「平成28年版高齢社会白書*16」の「65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合*17」より、65歳以上の高齢者のいる世帯は長期的に増加していることが分かる(図1.2-1)。2014年の65歳以上の高齢者のいる世帯数は 23,572千世帯であり、これは全世帯50,431千世帯の46.7%にあたる。また1980年は、高齢者世帯のうち三世代世帯が50.1%と半数を超えていたが、2000年には夫婦のみの世帯が三世代世帯の割合を抜いている。そして2000年以降、三世代世帯の減少が続き、2014年には13.2%とかなり減少したことが読み取れる。一方、親と未婚の子のみの世帯や夫婦のみの世帯、単独世帯は増加傾向にある。2014年では夫婦のみ世帯と単独世帯を合わせると56%であり、65歳以上だけで生活している世帯は半数を超えていることが分かる。
図1.2-1 65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合

出典:内閣府「平成28年版高齢社会白書」より引用
1.2.2 一人暮らし高齢者について
1.2.1と同様に「平成28年版高齢社会白書」より一人暮らし高齢者の動向*18について確認すると、一人暮らし高齢者は30年で大幅に増加している(実績値)(図1.2-2)。そして今後の推計値もさらなる増加が予想されている(推計値)。一人暮らしの者が高齢者人口に占める割合は、1980年の男性4.3%、女性11.2%から、2010年には男性11.1%、女性 20.3%まで増加している。一人で暮らす高齢者の「孤立死(孤独死)」が起こるのを防ぐには、高齢者とその家族による事前の身辺整理が重要になる。
図1.2-2 一人暮らし高齢者の動向

出典:内閣府「平成28年版高齢社会白書」より引用
1.2.3 まとめ
本研究は、高齢者の「整理収納」における課題に着目している。1.2.2では一人暮らしの高齢者における「孤立死(孤独死)」の可能性をあげたが、高齢者の「整理収納」に関する問題は他にもあると考える。例えば、体力の低下により身の回りのモノを整理できず、最終的にごみ屋敷になる可能性や、記憶力の低下により大切なモノの保管場所が分からなくなるなどである。
あらゆる課題への対策を考える上で、高齢者のいる家族は、高齢者と共に「整理収納」に関与しているか、また高齢者の気持ちを見過ごしてはいないかを改めて考える必要がある。そして家族間で大切なモノを理解し共有することも必要である。
高齢者は、残りの人生を考える中で、自分にとって大切なモノを判断しておくことは大事である。また、一人での片付けに限界を感じる高齢者に対して社会的な受け皿も必要であると考える。
<注釈>
*16 高齢社会対策基本法に基づき、平成8年から毎年政府が国会に提出している年次報告書であり、高齢化の状況や政府が講じた高齢社会対策の実施の状況、また高齢化の状況を考慮して講じようとする施策について明らかにしているもの。
*17 内閣府「平成28年版高齢社会白書(全体版) 図1-2-1-1」p.13
(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_1.pdf)より引用
(2016/12/28)(2025/10/15)
*18 内閣府「平成28年版高齢社会白書(全体版) 図1-2-1-3」p.15
(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)より引用
(2016/12/28)(2025/10/16)











