終章 高齢期におけるモノの「整理収納」のあり方
7.1 本章の視点
本章の構成は、「7.2 各章からの知見」において、第1章から第6章において得られた知見を整理し、高齢者の「整理収納」の課題を明らかにする。そして「7.3 高齢期における「整理収納」の特性」では、高齢期のモノの「整理収納」について、その特性を論述する。最後に「7.4 高齢期におけるモノの整理収納の方策」において、これまでの研究をまとめ、本論を締めくくる。
7.2 各章からの知見
高齢社会での「整理収納」の課題を以下にまとめる。
7.2.1 高齢者の独居の増加
(1) 住み替えのタイミング
高齢者にとって、一人で暮らすことが難しい場合、高齢者施設等への「住み替え」などを検討する必要がある。「住み替え」を検討する際は、自身の体調を理解することや、気持ちの整理、モノの整理を行うことなどを自分自身で判断しなければならない。第3章の岡本氏のような住み替えアドバイザーに相談をして、決断することも一つの手段である。そのような手段の判断も自身の意思が必要である。第5章で紹介した高齢者施設に「住み替え」をした人は、多くが子供からの提案であったが、子供がいない場合は「住み替え」のタイミングが非常に難しい。
(2) モノの整理
「住み替え」におけるモノの「整理収納」において、「住み替え」場所を決めると同時に、もしくはそれ以前から「整理収納」を始める必要がある。第5章で紹介した例では、「整理収納」の手伝いは子供や親戚が行っていた。子供や甥、姪による手伝いが「住み替え」の大きな手助けとなっていたことが分かる。独居であった回答者Gも甥の手伝いがあり、モノの整理収納が進んでいた。子供や親戚がいない場合、「住み替え」時の「整理収納」は大きな課題といえる。
7.2.2 高齢者による「整理収納」への影響
(1) 身体的問題
高齢になるにつれて体力低下や身体の痛みといった心身の衰えが伴う。「整理収納」におけるモノの分類や掃除、家具の移動などの動作は、日常的な家事と似ている作業ではあるが、高齢者はそうした行為が難しくなる。第6章のK氏との「整理収納」の体験からも、洗濯をたたむ、靴下をまとめる、といった動作が困難であることを学んだ。スムーズな動作が難しい状態では、「整理収納」の作業内容も限定され、あらゆる助けが必要であることが分かる。
(2) 捨てる判断ができない
「モノを捨てる」という行為に対して、多くの高齢者が不安に感じていることが分かった。また、自身にとって必要なモノの判断が難しいという。第6章のK氏の場合も、K氏からの「これはいると思いますか?」という質問に、「○○ような場合があれば、あったほうが良いですね」という返しをするやりとりが何度かあった。自分の考えだけではモノを捨てる判断が難しいことがわかった。
(3) モノの配置
限られたスペースの中で、同じ種類のモノが様々な場所へ保管されていることがある。別々に収納することで、モノが見つからず、また同じモノを購入してしまう事につながる。また、段ボール箱でモノを収納する人がいるが、空箱に新たにモノを入れて収納し、中身が分からないまま放置されていることが多い。K氏との「整理収納」作業でもいくつか見受けられた。結果的に、中身の分からない箱が部屋を占拠していくことになる。
7.2.3 高齢者のモノについて
(1) モノが多いという課題
高齢者の暮らしてきた過程で、「モノが手に入りづらい時代を経験した人はモノを手放すことに抵抗があり、モノが溜まってしまう」という点を調査するため、第2章でインターネットアンケート調査を行った。しかし結果は、高齢者も高齢者以外の世代も同じように、モノの量は多いという結果であった。また、モノを捨てられないケースでは、その理由の多くが「自分では使っていないが、使えるから」、「また使うかもしれないから」という回答であった。人々のモノが多いことはこの先も続き、今後も続く課題である。
(2) 住み替え時に持参したモノ
第5章の調査より、「住み替え」時に持参したモノの中には「思い出の品」があり、多くの人が大切にしていることが分かった。主に部屋に持参したモノは、生活に欠かせない服やキッチン用品などのモノである。そうした生活必需品は、部屋のスペースの大半を占めていたが、同様に「思い出の品」、「写真」などが必ず飾られていた。思い出のモノの奥には、数々の楽しい記憶や忘れられない大切な人の存在があるようで、それらについて話を聞くと、情景や人を思い浮かべながら楽しそうに話す様子が窺えた。また、何十年も前のモノについても、その当時の記憶をはっきりと覚えていて、説明している様子から、「思い出の品」が高齢者にとって心の支えであることが伝わった。
7.2.4 遺品整理について
(1) 遺品整理の実施について
最終的なモノの整理は「遺品整理」となる。第4章のアンケートの結果から「遺品整理」の前の「生前整理」は自分で行いたいという意見が90%を超えていた。その理由は、家族に面倒をかけたくないという理由が多数であった。自分が高齢になったときに、いつ、どのように、「生前整理」を進めるかを判断することが重要になる。
(2) 最終的な遺品整理
第3章でヒアリングを行った屋宜氏によると、子供世代は忙しいからという理由で親の「遺品整理」を全て業者にお願いし、子供自身は確認をしていないケースがある。第4章のアンケートの中では、遺品整理業者にすべてをお願いして、何も残らずに破棄してしまったことを後悔している人もいた。「生前整理」、「遺品整理」は、高齢者だけでなく、子供も一緒に取り組むテーマであると考える。











