終章 高齢期におけるモノの「整理収納」のあり方
7.3 高齢期における「整理収納」の特性
7.3.1 整理ができなくなる意識の変化
高齢者のモノの「整理」において必要なことは、モノを「捨てる」ことである。しかし、高齢者にとってモノを「捨てる」という行為は難しく、「もったいない」、「モノを大事にしたい」という思いが強いと考えられる。また、今回の研究によって、高齢者は「モノがなくなる不安」と「モノを残す不安」があることも分かった。「モノがなくなる不安」は、モノを一旦捨てる(手放す)ともう手に入れられないと考えるからである。「今使う」、「今使わない」などは関係無く、モノが無くなること=不安になることが分かった。
※論文より切り抜き
7.3.2 整理する気持ちと実情のギャップ
アンケートの結果から、多くの回答者が「高齢期に自分のモノの整理は自分でしたい」という意思を持っていることが分かる。しかし、その中で実際に「整理」をした人の割合は約15%である。意思を持っていても、体力の低下や様々な生活環境の変化により出来ていない実情があると推測できる。家族がいる場合には、家族に整理を託すことができるが、残される家族としても「生前整理をして欲しかった」という思いがある。生前に大事なモノ、残したいモノの「整理」はしておく必要がある。
※論文より切り抜き
7.3.3 年齢変化に伴う「整理収納」のタイミング
「整理収納」を行うタイミングは様々であるが、ライフステージの変化などによってタイミングを逃さないよう、あらかじめ最適なタイミングを想定することはできないだろうか。以下の図7.3-3を使ってシミュレーションをする。体力の低下により「整理収納」の作業が難しくなることは精神的な「不安」へとつながる。「住み替え」に関しても、「住み替え」をする時期やタイミングによって作業内容が変わってくる。また、「整理」をする意識としても、「子供に迷惑をかけたくない」という意識があるものの、自分の身体のことで精一杯になり、周囲への配慮が難しくなってくるだろう。このように様々な観点を想定して、タイミングを逃さないことが大切であると考える。
※論文より切り抜き
7.3.4 実際に「住み替え」を行ったが、モノを最終的に残すかどうか
モノを残すことについては、今回の調査では大きく3つの分類に分けられた。はじめの分岐は高齢期に「住み替え」を経験しているかという点である。この「住み替え」は高齢者施設への「住み替え」ではなく、マンションなどへの引越しを指している。戸建からマンションへ引越しをした場合、戸建では庭の手入れが大変、管理が行き届かない、防犯面に不安があるなどの要因が考えられる。引越しの際に「整理収納」を行っていると、その効果は大きいと考えられる。マンションという「資産を残す」ことを前提とし、モノの片付けは重視していないというパターンが一つ目である。二つ目は、子供に負担をかけないよう、何も残さずすっきりさせるパターンである。「住み替え」の際にモノを全て処分または分類し、子供達に迷惑をかけないことを重視している。これは本人の意識もすっきりした気持ちになり、モノに対する不安がない。しかし作業を進める上では、子供や親族の協力が必要がある。そして三つ目は、「残したくはないが残ってしまう」パターンである。「整理したい」と思ったまま、年齢とともに身体が不自由になり、片付けができていないパターンである。子供がいる場合でも、忙しくて時間がとれないなどの理由で「整理」を進めることが困難なケースである。
※論文より切り抜き
7.3.5 「捨てる」から「整える」へ
高齢者における「整理収納」は、「モノを捨てて部屋をきれいに片付けたい」ということを目的としていても、実際はモノはあまり捨てずに、「整える」のみの作業になる。モノを捨てる判断をするために、一度確認をすることで安心感をもたらす。そして収納は分かりやすく、簡単に「収められる」ことが重要である。高齢者とともに作業をすることで、様々な作業をスムーズに進行でき、高齢者の達成感や自信につながる。「整える」ことが高齢者に対する「整理収納」となり、高齢者のQOLの向上につながると考える。
7.4 高齢期におけるモノの「整理収納」の方策
高齢期の「整理収納」は、高齢者本人の自助努力だけでは困難で、家族や親族の協力が必要である。最終的には第三者的な行政や業者が介入することになるかもしれない。しかし、第三者が介入する前に相談をする機会や一緒に「整理収納」を行える人が必要ではないかと考える。ここでの「整理収納」作業としては、日常的にモノの整理を一緒に行うことや、「住み替え」の予定がある場合は、「住み替え」のタイミングを目指して一緒に作業をすることを意味する。介護ヘルパーによる訪問介護サービスは「身体介護」と「生活援助」である。そのため、「整理収納」を仕事としてはいない。「生活援助」の一部として衣替えや整理をしているケースもあるが、時間内の対応を意識すると、きれいに整えることが目的となってしまう可能性もある。その場合、高齢者の意識は異なるところにあっても気が付かないかもしれない。できる限り一緒に作業をすることが、モノを「整理収納」していく上で大切なことである。
高齢者自身にとって、大切なモノを理解し分類することは難しい。誰かと一緒に作業することで発見できることもある為、そのように高齢者を支えられる機関が必要であると感じている。一人暮らしであれば、「住み替え」のタイミングや「整理収納」の判断も一人で考え、決断しなければならない。その判断は、身体が不自由になる前に行わなければならない。加えて、最終形のイメージを持つことが重要である。高齢期の「整理収納」の課題は様々あり、それらに対する方策を具体的に検討することを今後の研究課題としたい。











