イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「住まいかた」後編

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

イタリアでの住まいかた (後編)

イタリアでの住まいかた(前編)の続きです。

日本と違う住まいかたあれこれ

一軒家かと見紛う様な建物に複数世帯が同居するタイプの住宅ですが、
呼び鈴はもちろん各世帯に独立した入り口があり、
完全に分離した住まいの造りになっている場合がほとんどです。
共有の玄関・階段ホールを有する場合も少なくありません。
またこのタイプの場合、親族同士で住み合っている場合も多く、
例えば、3戸が1軒の建物の中に存在する場合、親世帯と2家族の子供世帯、計3家族が共に住んでいたりします。

日本での二世帯住宅よりもここの家族のプライバシーが保持され、
それでいて「スープの冷めない距離」感が小さな子供を抱える子供世帯にはとてつもなく便利だったりするようです。
正にnonno(おじいちゃん)とnonna(おばあちゃん)がいる、保育園とレストランの隣接ですから。
また高齢化が進むイタリアですから、親世帯と近くに住めることはこれからもっと見直されるべきことになるでしょう。

さては我がコンドミニオには10家族が入居しています。
そうたった10家族しかいませんが、建物は6層でエレベーターも一基備わっています。
コンドミニオの多くは1階部分が各戸の物置兼駐車場になっており、2階以上から住居部分が始まります。
車社会ですので、駐車場は必須ですし、また防犯上も有効だと考えられますよね。

10家族が一緒に住んでいるわけなので、もちろん管理組合もあります。多くの日本のマンションと違って、自主管理の場合が多いようで、我がコンドミニオもご多分にもれず自主管理タイプ。
マンション内の有志が理事を務めてくださり、その方の音頭や差配でコンドミニオ内の問題を解決していっています。
もちろん日本と同様、管理会社も存在しますが、まだ半数以上のコンドミニオでは住人の中から理事を立て自主管理を行っているということです。
こんなこと、日本ではなかなかイメージできないことではないでしょうか?

コンドミニオ全体に対して皆がいつも注意を払っていて、住民同士もみな顔見知り。干渉をしあうことはありませんが、お互いをよく知っていることでコンドミニオの安全保持にも役立ちます。

私はというと、最初は“謎の東洋人”として、遠巻きに見られていましたが、入居一年目には2階に住む女性のお孫さんのベビーシッター補助をしたり、日本へ帰省の際にはお土産を各戸に配ったりしたことで「ご近所さん」へとなることができました。

住まいかたを左右するご近所さんの存在

そう、この「ご近所さん」ですが、とても大切な存在なのです。
日本のように何でもすべて時間通りに、予定通りに、きっちり進む国ではないので、何事にも“余裕”や”余剰“スペースが必要です。

急のできごとで子供のおもりを頼むことや、買い忘れた調味料を借りること、
宅配荷物の代理の受け取ることをお願いするとか、
ご近所さんがいるからこそお願いしたい事案が結構発生するんですよね。

日本でならば、サービスを買ってお金で解決するようなことでも、
ここではまだ人の手によってカバーされることも多く、
生活は人と人が助けあって生活することが大切で、
お金では買えない安心や快適さがあることがわかることができました。

良いことばかりではなく、やっかいなことや面倒なこともあることでしょうが、
人と人の付き合いなんだからそれも当たり前で、
日々少しずつでも隣近所の人とふれあっておくことで簡単に解決できる問題もあります。
安心感が得られ、価値がある住まいになるには、
このイタリア的な「おせっかい」なコミュニティが基本なのだろうなと気付かされた次第です。
日本ではなくなりつつある、この環境。
ここでは少しでも長くこのままであって欲しいな、と思わずにはいられません。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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