イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「おしゃべり上手の秘密」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

おしゃべり術の3つの特徴

日本に住んでいる時、イタリアを訪問した友人がイタリアでの出来事を語ってくれました。
とある場所まで行くためにどのバスに乗れば良いかがわからず、バス停にいる人たちに質問したところ、みなそれぞれが違うように返事をしたとか。
彼らにとってはこの行為はあくまでも「嘘をついている」つもりはさらさら無く、自分が思う「本当のこと」伝えているのです。
日本でなら、間違っているかもと思ったら「教えてあげる行為」すら止めてしまうか、正しい答えを見つけて教えるようにするでしょう。
彼らはそんな行為はせずに、自分が今知っていることを伝えてくるのです。
後から「間違っていたよ」なんて伝えたところで、「へー、そうだったんだ(でも私は間違ってない)」と対応されるだけです。
ですので簡単に人の言葉は鵜呑みしてはいけません。
「色々な人の意見を聞いて、調べて、自分で総合的に判断する」という技を習得する必要があります。今でいう、フェイクニュースの真偽の見分け方に似ているかも。

もうひとつの特徴でいうと、会話に会話をかぶせてくるというものがあります。
その上声が大きいというのが非常に困りもの。
グループでの会話の際は、たとえたった4人であっても、常に4人で共通の会話をし続けることが出来ず、会話が2組に分かれることが多いです。
そしてその会話がなんと対角線上で行われるという恐怖。
対角線上で二つの会話が行き来しているということで、必然的にボリュームは上がります。
残念ながらこの状態になると私にはお手上げで、自分の会話が全く頭に入ってこなくなります。
例えグループだからと言って、みんなで同じ会話をする必要は全くないことを覚えておいてください。

そして、一番顕著な特徴は話しを盛ること。
とにかく、話題が面白くなるのならば嘘も方便で、小さな話しがとても大きなものに変わっていきます。
”数字”を使って何かを表現するときは、必ず大きな振れ幅があるのが当然で、病院で1時間待たされた時は「病院で2時間も待たされたわよ!」となり、徒歩15分の所にスーパーが出来た時には「新しいスーパーが歩いて2分の所にできたのよ!」という具合です。
外国人の私たちが注意すべき点は、彼らは話しは盛られているもとして認識しています。
ですので、私達の場合はどうしても正確に物事を伝える傾向にありますが、これも良し悪しで”正確な時間”を伝えていても、”既に盛られた時間”で換算しています。
嘘をつくのは忍びないという気持ちをお持ちの方も、イタリア人に何かの度合いを表現する場合は、本当のことを伝えたいのならば少し過剰気味に伝えることをお勧めします。

老若男女、おしゃべり上手

こんな会話の技術を巧みに駆使して、おしゃべりを楽しむのは女性も男性も同じです。
おしゃべり好きな男性はあまり良い印象が持たれない場合が多いのが日本ですが、こちらでは、おしゃべりの上手な男性が本当に沢山います。
女性も男性も会話の中ではこちらのことを気遣い会話を一生懸命にふってくれることも少なくありません。
また、イタリアの子たちは、子供の時から大人に混じって大人と同じように会話しています。
日本の様に赤ちゃん言葉を使ったりはもちろんしませんし、会話に関してもまるで大人同士の会話か、と思うように対等な立場でやり取りします。子供だから年上を敬って言葉を選ぶように、といいう躾は特に存在せず、たとえ親の友達であってもまるで自分の友達の一人かの様に話をします。
もちろん子供の時から他人と会話することは大切で、両親が子供を他の大人と会話するように促している場面を何度も見ましたし、子供と話す大人たちも彼らを子ども扱いせず、一人の人間として会話を楽しんでいるように思えます。
こうして、みんな小さなころから鍛えられて、大きくなったときには一人前の「おしゃべり好き」になるのでしょうね。
そう、お天気の良い平日の昼間、街に出ると決まって見る光景があります。
それはおじいちゃんたちのお喋りグループです。
おそらく彼らの奥さん達は家事や孫の世話で忙しくしているのでしょう。
手持無沙汰なおじいちゃんたちが街のあちこちで輪になって、とっても楽しそうにお喋りしています。

立ち話だったり、ベンチに座っていたり、街を散歩しながらだったり。
雀の子踊り百まで忘れず、にあやかって、「イタリア人、おしゃべり百まで忘れず」ですね。

トップ写真 マルケ州の名所めぐり(2) マルケ州内陸部、ペーザロウルビーノ県ペルゴラの美術館に飾られているローマ兵の鍍金ブロンズ像

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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