イタリア時間「働くということ」

イタリア時間でびとくらし

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

働き場所を得るということ

イタリアに来て6年が経ちました。おそらく「イタリア暮らし7年目」と聞くと、さぞかしのイタリア通で言葉も自由に操っているのであろうと想像されるかと思いますが、現実はそれほど簡単にはいかず、まだまだ「日本からやってきました」という免罪符をいたるところで切る毎日です。
ありがたいことに、今は、午前中はイタリア人が経営する会社に勤め、午後はフリーエージェントとしての仕事をするというリズムが出来上がっていますが、この「会社勤め」について思いを馳せると、まぁ、なんとも長い道のりを歩んでだものだと感じずにはいられません。

日本を出るまで、仕事というものは、年齢や健康状態にもよりますが、内容を選ばなければ欲すれば得られるものだと考えていました。
「働かざる者食うべからず」という諺もあるくらいですから、人として生活を営む上で労働し、その対価として戴くお給金などを糧にすることは当然のことでしたし、働くことがしごく普通のことでした。

イタリアについての印象は、歴史が長く、ファッションやアート、食の文化が豊かな国というイメージが先行しがちで、国としての懐事情は日本ではあまり話題になりません。
現に私自身もここに来てその惨状を知った次第。日本にいる時にイタリア人の友人や、在伊日本人の友人からこの国の状況について聞かされることがあっても「またまたそんなオーバーな」なんてのんきに思っていたくらいですから。

良くない状況は更に良くない状況をうみだす

まず、経済状況ですが、ギリシャ、スペイン、イタリア、この地中海エリアに位置する三ヶ国はEUでは他の国々の経済状況におんぶにだっこをお願いしている肩身が狭い状態です。
生活してみた実感として、物価が高く給料が低い、この一言に尽きます。
国の財政を立て直すために、税金関係は非常に高く、私たちの食品などの生活必需品をのぞく一般消費物にかかる消費税はなんと22%。これでもなかなか追いつかないので、まだ税率をあげようとしているのだとか。
そして、もちろん法人税や人材雇用に関する税金関係も高いのが現状で、このせいもあってか雇用口がなかなか増えず、職になかなかありつけない人が増えるばかり。また、イタリアでの仕事探しと切っても切れないのが「ネーロ」と呼ばれる「黒色」の雇用契約。要は、無契約で人材を雇用し、帳簿外でお給料を支払うことなのですが、この状態で働いている人がどれほど多いことか。
正規で雇用されることがとても難しく、完全に売り手市場になっているので、雇用主は被雇用者の足元を見て人材を雇おうとしますし、仕事にありつきたい者にとっては藁をもすがる気持ちで、違法雇用であっても喜んで受け入れます。
失業率がイタリアに比べるととんでもなく低い日本に住んでいた私にしてみたら「違法な状況下で働くなんて!」と思ってしまいますが、平均的なここでの生活状況を見ていると、綺麗ごとだけを並べて語ることはできないと強く感じます。

相対的に働き口が少ないということで、もっとも割りを食うのが若者です。
大学を卒業しても就職がすぐに見つかることは稀ですし、親や知り合いのコネクションが無いと不可能に近いと言っても過言ではないかも知れません。そのため、大学卒業後も修士課程に進んだりする人が多く、20代後半でようやく社会に出るわけですが、それでももちろん職にありつくことは簡単ではなく結局30歳過ぎまで親元で親の助けを受けながら生活している人も多いことが悲しい現実です。
また、インターンシップという名ばかりの研修制度や仮雇用契約などを利用して、労働力を安価に搾取する企業も多く存在しています。もちろん生活の安定を求めて欧州にやってきた移民者たちの多くも、厳しい条件のもと働いていることは言うに及びません。

それでもみんな明るく生きていく

イタリアに住んでいるというと、羨ましい、といっていただくこともあり、そのときにいつもどこまで本当のことをお話しようかと迷うのです。
現実的なことをブツブツと語っても粋ではないし、かと言って、霞を食って生きているかのように想像されていてもなんだかちょっとしっくりこないし。
ただ、外からのイメージと現実生活のギャップが、悪い意味でとても大きいのがイタリアなのではないかなと感じています。こうやって、本当の姿を書いたところで、恐らく実際に生活をしてみないとその実情をしることは出来ないということもよく理解できます。
そして、やっぱりこの厳しさが見えてこないのは、「ここがイタリアである」ということが大前提なのかも知れません。
職が無い。貯金がない。借金だらけ。こんな状態の人たちがごまんといるはずなのに、バールやレストランはいつも人でいっぱい、長期休暇期間には海へ山へとでかけていく。
大声で不平不満も言うけれどその分愉快なことや楽しいことを他人と共有する気持ちにも長けている。
仕事がなければ無理に働かず、親や親戚、知っている人のご厄介になってしまえる。

果たして、私達にとって訓話の一つでもある「蟻とキリギリス」の童話は一体どのように受け止められるのでしょうか? 真実を知るのはちょっと怖い気がしちゃいます。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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