イタリア生活で見つける「びとくらし」
イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。
イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?
住まいの美しさはイタリアンマンマたちの誇り
もともと掃除が苦手なわたし。
子供時代の自室は正にジャングル状態で、今思うと不思議でならないが、
正に足の踏みが無いような有様だったのをよく覚えています。
母親が見かねてたまに掃除機をかけてくれていたように思いますが、
教科書や参考書、洋服などが無造作に山積みとなって置かれていたもので、
もちろん忘れ物や無くし物も多く、小学生時代の”忘れ物検査”で注意されたこともあるほど。
ホコリ取りや雑巾がけをした記憶も年に一度の大掃除のときくらいでしょうか…。
ひとり暮らしを始めると、部屋をなんとなくきれいに保つコツを得たようで、
片付いた部屋に過ごしてはいましたが、掃除する頻度はそれほど高いものではありませんでした。
そんな私がイタリアにやって来て、お友達や知り合いの自宅にお招きを受けること数回。
どこのご自宅も「ここはモデルルームか?」とびっくりするほど美しい。
天井高が高かったり大理石やタイルが敷き詰められた床であったりと、確かにそもそもの家の造りが日本とは全く違います。その上、センスの良い調度品の数々、ピカピカに磨き上げられた床やチリ、ホコリのない空間に驚くばかり。
日本の家の風景とは完全に違う住まいが目の前に広がり、今でもいつも軽いカルチャーショックを受けるのですが、なんでこんなに完璧にキレイなのでしょう?
多くは家を守るイタリアのマンマの”仕事ぶり”から来ています。
自宅が常に清潔で、美しく飾られていて、自分(達家族)のセンスをアピールすることが、
イタリアのマンマたちにはとてもとても重要。
自分たち家族のリラックスと健康のためにが一番の要素かと思いますが、
他の人から「褒められたい」っていう自己承認欲求が高めのイタリア人っぽさの現れなのかも、なんて思ってしまいます。
日本とは違うイタリアでの掃除ポイント
イタリアに来て最初の3ヶ月は主人の両親宅に住まわせてもらったのですが、
この経験は本当に役に立ちました。
だって、住宅のタイプが日本とは全く違うから、掃除の仕方も違うんです。
そもそも欧米の住宅は基本的に土足での生活です。
海外に住まれた方はお気づきかと思いますが、家がとにかくすぐに汚れる。
イタリアの住宅の多くは、玄関をあけたら直ぐにサロットと呼ばれるリビングルームや、
ダイニングルーム、キッチンへと繋がります。
そう、玄関スペースがないのです。
もちろん、上がり框もない。
玄関扉近くには、靴の汚れを落とすマットは殆どの場合備え付けられてありますが、
外からの汚れをつけた靴でそのまま自宅内に入って来ます。
上がり框が無いことで、室外のチリやホコリも宅内に入り放題。
経験するまではわかりませんでしたが、家の中が汚れるスピードがとても早く、
しかも畳や絨毯敷きではないので”汚れの可視化”が際立ちます。
そしてまた、家自体の気密性が非常に高く日本のように「家が息をする」感覚はありません。
ですのでホコリやチリが家の中に溜まりやすい状況になってもいるのでしょう。
冬場は特に家中の窓を締め切った状態が続き、家の中の汚れは室内にとどまりがちになります。
これらの汚れを取り除くためには、まめにお掃除をすることが必然になるのが当然ですよね。
<ポイント>
我が家もスリッパ制を導入してはいますが、2日に1度はワイパーでホコリをとってから、
掃除機をかけています。そして少なくとも1週間に1回はモップがけ。
日本の一般的な住宅でモップを使ったお掃除はほとんど無いかと思いますが、こちらでは主流派。驚くことに、”掃除機”を持っていない家庭も多いです。
<ポイント>
簡単に掃き掃除をしてチリを集めてから、床用の洗剤が入った水でモップがけをし、その後”床磨き機”をかけます。
日本だったら、掃除機だけで完結できる床掃除も、こちらではなかなかの大仕事です。
生活していて結構な困りものは硬水すぎる水道水
海外でシャンプーをしたら髪の毛がごわごわになった、など、海外硬水あるあるネタとしてよく語られていますが、実生活ではより一層の曲者になります。掃除の観点からでいうと、とにかく水滴が汚れとして付きまくります。
ご想像にやすいと思いますが、洗面台やバスルーム、キッチンシンクなどデザイン重視で作られているものがほとんど。キラキラのクローム材の水栓や、ガラス張りのシャワーボックスなど、
ピカピカに磨き上げても、一度使うと水痕がピッチリと残るのです。
たった一度でですよ。
一度使っただけで、まるで何日も掃除をしていないかのような汚れぶり。
このカルキ汚れは普通の洗剤ではキレイにすることはできず、専用の洗剤が必要になります。
左側はガラス張りのシャワーボックス、右側は洗面台の水栓部分です。
水痕がこんなにしっかりと。。
これほどひどい水痕が付くのがわかっていても、
キラキラに輝くクローム材を水回りに使うという選択はイタリア的だとなと感心します。
なかなか水跡が綺麗にならず、そのことを相談した友人から、
「水跡落とし専用洗剤を使わなきゃだめよ」と言われてからというもの、
この洗剤を我が家から切らしたことはありません。
上の写真のような洗剤が他種類、販売されています。
カルキの存在は家庭生活で色々と問題を来します。また、機会があればご紹介しますね。
住まい綺麗に保つコツは魔法の手を使って楽をすること
家事を完璧にこなすイタリアのマンマの存在は有名な話しとして知られていると思います。
日本のTV番組でもよく紹介されていますよね?下着にまでアイロンをかけちゃうとか。
掃除に炊事、洗濯に子どもたちの世話、そして最近ではほとんどのイタリアンマンマは外に働きに出ているのが現状です。というのも、近年の経済状況の悪化から、一般的な夫婦はダブルインカムであることが平均並みの生活を送る上での基本になっているようです。
そんなイタリア家庭の現状から、いま、重宝がられているのが”お手伝いさん”の存在です。
お手伝いさんというと、日本ではお金持ちの方が雇うイメージですが、
ここでは一般的なサービスとして浸透していて、通いのお手伝いさんさんが多く存在します。
毎日ではなく週に1度か2度程度のもので、彼女たちの仕事の多くは住まいの徹底的なお掃除です。
ルーマニアやマチェドニア、チュニジアやタイなどからの移民女性が多く見受けられますが、
私の知人のイタリア人女性達もお手伝いさんとして働いています。
日本では、たとえダブルインカムで時間がないと言っても、
お手伝いさんを定期的に雇って家の掃除をしてもらうことには「贅沢すぎる」と抵抗を感じる方は多くいるかと思います。
でも、こんな風に割り切って「掃除する時間がないから他の人にお願いしよう」と考えることができるなら、汚れた家に住まうことや、掃除をしなくてはいけないプレッシャーからも逃れられて、精神的にとても安らかに過ごせる、安心して働く事ができるようになりますよね。
確かに、こちらの女性たちが「今日はお手伝いさんが来てくれるの」と語るときは、とても安らかな顔をしているのが印象的です。
自分たちだけで解決できないことは、”魔法の手”を効果的に使うこと。
これがイタリア時間の作り方の一つの方法、といって良いかも知れませんね。