写真家からみえる景色

「小さな楽しみ」

写真で日常を切り取る、びとくらし

「びとくらし」のトップのメイン写真をいつもご提供いただいている、Arashi.Shokoさん。
今月からArashi.Shokoさんの連載がはじまりました。
いつもの日常も切り取り方、感じ方次第で特別な日になることもたくさんあります。
そんな切り取り方を少しのぞかせていただきます。

お気に入りの景色があります。

それは、たびたび利用する路線の車窓から見る景色です。

わたしの自宅は、兵庫県神戸市の西に位置しています。
仕事ではほとんどの場合、ターミナル駅の三宮まで出てから、さらに電車で東へ向かいます。

神戸の街は、六甲山地が海の近くまで迫っているために南北に狭く、東西に長いです。
山・街・海が、ほぼ平行に並んでおり、各路線もその間をぬって、東西に並走しています。

電車に乗り、目的地駅まで到着するまでの10分ほどの時間を、スマートフォンを開かずに、外の景色を見て過ごすことにしています。

北側の窓には、六甲の山並みが続いているのが見えます。
目に映るその山のいろどりは、四季、天気、時間帯、自分の心境で変化し、それはいつ見ても飽きない、お気に入りの景色です。

いまの時期は、空気がぴーんと張り詰めて澄んでいて、山と空の境界、景色の輪郭がくっきりときれいです。
葉を落とした木々を見ていると、外の寒さを想像し、暖かい場所から冬景色を眺めることができるのって贅沢だな、と感じます。

神戸は真珠が有名なのですが、それは六甲山の南斜面に反射した自然光が、真珠の選別に適しており、真珠産業が発展したのだそうです。

真珠を照らす優しい光のイメージ。

その話を見聞きしたあと、わたしの景色の見え方、感じ方は、頭の中でそのイメージを通し、やわらかく見えているかもしれません。

「少しの時間の、特別でない、小さな楽しみ。」

それでもそのささやかな時間を持つことは、日常や仕事へ気持ち良く向き合えることにつながる、大切な時間のひとつとして過ごしています。

ここにお気に入りの景色を紹介しようと、過去にさかのぼって写真を探しましたが、見つかりませんでした。

カメラマンの職業柄、日常的にデジタルカメラは持ち歩いていますし、スマートフォンカメラもあります。

しかしよく考えたら、レンズを通さず「自分の目で見て」いたので、写真を撮っていないことに気づいたのは、探し始めて2時間ほど経ったあとでした。

写真は、西宮市の香櫨園浜から見た、ちょっぴり雪をまとった六甲山系です

当サイトの画像やイラスト、文書等の無断転載・無断使用はお断りいたします。ご使用をご希望される場合はお問い合わせください。

Shoko Arashi 嵐祥子

2009年、デジタル一眼レフの面白さを知り「写真を撮ること」に興味を持ち、写真表現大学で作品制作を学ぶ。 その後、ウェディングフォトに従事、2012年からフリーランスカメラマンとして活動中。2015年から一児の母です。

https://arashishoko.localinfo.jp

記事一覧を見る

カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。

  • vol.3 高齢社会の実態-家族構成と一人暮らし-

    高齢社会の実態をデータから読み解く

    日本の高齢社会の実態を理解したうえで、高齢者の「整理収納」における課題を考えます。

  • vol.2 既往研究から探る -高齢者と住み替え-

    「高齢者」「住み替え」「モノの整理」に関する先行研究のまとめ

    高齢者の住み替えやモノの整理に関して、これまでの研究ではどのようなことに着目し、どのような結論を見出しているのでしょうか。過去の研究内容を分かりやすくまとめました。

  • vol.1 高齢社会における「整理収納」

    高齢期に向けた整理収納の課題とQOL向上のヒント

    暮らしにあふれるモノは、人生の節目ごとに見直しが必要です。高齢期には生前整理や遺品整理と向き合う場面も増えますが、自分らしく整えることが、安心と心地よい暮らしにつながります。

  • bitokurashiリニューアルのお知らせ

    みなさま、はじめまして。あるいはお久しぶりです。「bitokurashi.com」をご覧いただき、ありがとうございます。 2017年7月にスタートした「びとくらし」は、2025年9月に内容やコンセプトをリニューアルをさせ […]

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]