写真で日常を切り取る、びとくらし
「びとくらし」サイトトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。
写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。
「空の高さ」
ところ狭しと黒い雲が押し寄せた空は低く、今にもひと雨きそうな重たい空気。
駅から家までの帰り道で、雨の降り始めに遭遇しました。
すこしなら大丈夫かなと、カバンから折りたたみ傘を出す時間を惜しみ走ったものの「ざぁーーーっ」と木や屋根に打ちつける強い雨音が聞こえました。
そしてほんの少しの時間差で、雨つぶがわたしの頭や肩に届きました。
「あ、これはくるな」と思った瞬間はもう遅く、バケツをひっくり返したような雨に。
一瞬でびしょぬれになったところをご近所さんと顔を合わせて、苦笑いしました。
そんな局地的な雨がいくつかと、心配された台風10号が立ち去り、朝晩がずいぶんと過ごしやすい気温になりました。
太陽の軌道もすこし傾き、最高気温が30度を下回る日が、少しずつ増えてきています。
ひさしぶりの涼しい朝に窓を開けると、虫の声がセミから鈴虫へ交代し「リーンリーン」という静かな鳴き声が、遠くから聞こえてきました。
気持ち良く晴れた空とサラッとした空気に「秋ってこんなに涼しいんだ」とあらためて感動し、何度でも「涼しい!」と言いたくなりました。
暑過ぎた夏、それをマスク着用で乗り切ったことで、涼しさへの感じ方が増しているのかもしれません。
エアコンを入れずに窓を開けて仕事にとりかかると、リコーダー合奏の音や、運動会に向けての練習と思われる、先生が吹く笛の「ピピッ」という音が聞こえてきました。
臨時休校で中止になった春の運動会。「新しい生活様式」の中でがんばっている子どもたちに、秋の運動会はどんな様式であれ開催されますように、音楽会も楽しいものでありますように、できれば秋晴れの気持ちの良い日に当たりますようにと、心の中で応援しました。
休日、見上げた空は高く広く、良い天気に恵まれました。
秋雨前線や、また来るかもしれない台風シーズンに向け、いつ雨に降られても大丈夫なように、防水加工のスニーカーを買いに行くことにしました。
その足で、ちょっぴり旅行気分を味わえそうなメキシコ料理を食べることを計画し、思わず足どりも軽くなり、秋の街へと出発しました。