写真で日常を切り取る、びとくらし。
写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。
スマートフォンの普及で写真を撮る機会が多くなった昨今ですが、何を写すか、どう感じるか、など、写真家の嵐さん自身を優しく感じることができる心地の良いコラムです。
「小花が咲く道」
6月の始まり。
いつものように通りかかった近所の道で、白くて小さな可愛らしいお花の群生が迎えてくれました。
「この時期、このお花はこんなにどっさり咲くんだったかな?」と、思わず足を止めました。
これまでのコラムに登場してきた街路樹や遊歩道の脇、近所の植込みに、ところせましと咲いていたのはヒメジョオン。
子どものころからよく見かけるこのお花は、調べると100年ほど前に鑑賞用として北アメリカから日本へとやってきて、そのまま全国へ広がり帰化していったとのこと。
風に吹かれてゆらゆらとゆれている姿は華奢で素朴なのに、生命力はとっても強そうです。
開花の季節は初夏から秋。
身近な場所で長い期間咲いているはずなのに、群生に気づいたのは今年が初めてだなぁと不思議に思いました。
近所をうろうろするばかりの生活で目線が変わったのか、あざやかなアジサイに気を取られていたのか、なにかのきっかけで突然群生になったのか、理由はわかりませんでした。
雨降りあとの晴れた日。
水をしっかり吸った植物たちは、1日で大きく成長しています。
今年最後のつぼみを咲かせるサツキ。プロペラ型の種をたくさんつけたモミジ。もりもりと葉っぱを増やしていくヨモギ。がくを大きく開いたアジサイ。
いろんな植物たちが、季節をぐっと進めていくようです。
そしてヒメジョオンも負けずにいっそう背をのばし、その元気な様子が、ずっと向こうの道へとつづいているのが見えました。
群生がどこまで広がっているか気になって、これから剪定が入ったり、長い梅雨空になるとすぐに景色が変わってしまうかもと思い、時間がゆるす限りお花にそって歩いてみることにしました。
雨あがりの草の香りをかぎながら進み、しばらくしてたどり着いたところは、昨年の秋に、家族でピクニックをしたときにお弁当を食べた広場。
そこはすっかり別世界のようになっていて、あたり一面が白く染まり、同じ場所とは思えないほどでした。
目の前に広がる、かすみ草の花束のような、きれいでやさしいお花畑。
これはもしかして在来種にとってはありがたくない環境なのかも…と思いつつ、わたしには梅雨の合間の、ちょっとうれしい発見となりました。