写真とエッセイ「遠くの景色」

写真で日常を切り取る、びとくらし。
写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。
スマートフォンの普及で写真を撮る機会が多くなった昨今ですが、何を写すか、どう感じるか、など、写真家の嵐さん自身を優しく感じることができる心地の良いエッセイです。

「遠くの景色」

麦茶を作る回数が増えてすっかり夏本番。
今年から全国的に、熱中症を予防する情報として「熱中症警戒アラート」が環境省より発表されています。

毎日毎日ほんとうに暑い!と過ごしていたはずが、お盆休みごろには大雨がつづく天気となりました。

その雨は長引き、太陽が顔を出す時間が少ない日が1週間以上つづくとさすがに重たい気持ちになり、メディアから発信されるニュースも気落ちするものが多いなぁと感じ、気分転換に、撮りためた写真のデータ整理をすることにしました。

良い香りの紅茶をお供にしようと、いただきもののマスカットティーを選び、どのマグカップに淹れようかと食器棚の前に立つと、旅先や色んな場所で出会った食器たちが目に入りました。

今は行けない遠くの景色や夏らしい景色が見たいなぁと思い、コロナ禍以前の写真を見返すことにしました。

神戸市の打ち上げ花火大会で、大勢の見物する人たちの歓声や、拍手をおくった夜空に咲く大輪の花。

青い空を飛ぶ飛行機からは白い雲が近く、はるか下に見える山や町は和歌山県かな?と想像した地形。

旅の目的地に到着し、その景色が予想していたよりも素敵で、予想していたよりもたくさんの団体さんが来ていた、にぎやかな観光地。

なかなか楽しそうな夏を過ごしているな…と数年前の自分をうらやましく振り返りながら、今年の夏はどうだったろうと部屋を見渡しました。

息子が作った朝顔の折り紙。夏祭りや夏休みを題材にした絵本。新調した扇風機。まだ空気を抜いていない浮き輪。セールで買った新品の白いサンダル。北海道からお取り寄せしたラベンダーの入浴剤…

それぞれのアイテムから楽しく過ごした空気が伝わってきて、遠くへは行けなかったけれど、今年なりの夏に満足しました。

口の中に広がった紅茶の甘い香りをいっそう美味しく感じながら、どっさりあるデータに向かい、その写真をじっくり味わいながら作業をすすめていきました。

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Shoko Arashi 嵐祥子

2009年、デジタル一眼レフの面白さを知り「写真を撮ること」に興味を持ち、写真表現大学で作品制作を学ぶ。 その後、ウェディングフォトに従事、2012年からフリーランスカメラマンとして活動中。2015年から一児の母です。

https://arashishoko.localinfo.jp

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