bitokurashiの主宰者小林朗子さんは整理収納コンサルタント。
単に住まいの整理を助けるという役割で終わるのではなく、整理するターゲットを住まい、ひと、街とへと広げ全体を俯瞰し、ひとの暮らしについて深く研究されています。
このコーナーでは小林さんが考える整理収納とは、彼女が提案したいbitokurashi (美徳と暮らし、人と暮らし)とは何かをライターによる書き起こし形式でご紹介します。
みなさんが、このbitokurashiの思いを感じてくださりますように。
※当サイトの主宰に対してインタビューを行い記事にしています。よって、敬称を使用しています。
お伺いする色々な住まい
整理収納コンサルタントとしてお受けしている「お片づけ」が私の仕事の基本となりますが、整理収納に対するちょっとした手助けを求めていらっしゃる方から、また、私が予想していなかったような内容での依頼を受けることも度々あります。
家を片付けるということは生活していく上の最も基本の事かも知れません。
衣・食・住、どれも人の暮らしでは欠かせないものです。
衣類については季節やご自身の体のサイズに合った清潔なものを身に着けること
食事については体をつくる大切な要素です、安心安全の食事をバランスよくいただくこと
住まいについてはそこに住まう人々すべてが健康な心を保てるような住環境を有すること
どれも全て大切ですが、住まいの存在が暮らしの一番の基盤であって、そこが適切な状態が整うことで、住まいの中にあるべき、人、家族、時間、生活などがうまく機能するものだと感じます。
「どうしても片づけられない」「気づいた時には家の中が足の踏み場もないくらいのモノに侵略されている」というある種レスキュー隊のように、ご連絡をいただくお客様もいらっしゃいます。
とにかくモノが多すぎる場合は、足の踏み場を作って一縷の希望を感じていただくためにも、まずは状態を整理しながら確認し、確認作業と同時に手放すものを決めていただくようにします。
大変ではありますが、お片づけの対象物を季節ごとや色ごと、形ごとなどでグループ分けをしてから、その中でどれが必要で何を手放しても良いか、を根気よくやり取りしながら決めていくのです。
不要なものを手放してもらう為にも確たる動機が必要で、なんとなく廃棄するではなく、この状況が何が原因で起こっているのかを、ご自身で発見していただく機会を与えていることになります。
この様な「全く片付いていない住まい」を何軒かサポートさせていただきましたが、みなさんご自宅の状況を自分でも把握されています。ですが、「どうせ片づけてもまた同じ状態になる」とか、「いつも片付いていない状況を他人に見られるのが恥ずかしい」、「この間片づけてもらったのに、また散らかしてしまっているので申し訳ない」などという理由でなかなかお掃除サービスなどを利用できないままになり、更に状況が悪化しているように見受けられます。
また、一部分だけ片づけて喜んでいたとしても、他の人にはそのわずかな差がわかってもらえなくて悲しくてモチベーションダウンしてしまうとか、お部屋を片付けることは、人間の心理作用に大きく影響を受けていますよね。
社会と個人のかかわり方
そして、一番感じるところで言いますと、この様な方に対して整理収納コンサルタントとしてお伺いするわけですが、私の業務領域でカバーできる内容を超えてしまいます。
もはや「整理収納」なんて生易しいモノではなく、家族や知人のサポートを得て、1ヶ月に1度のコンサルタントではまかなうことが出来ない対応をしていくことが大切です。近くの人のサポートが得られない場合は社会や地域がどのようにバックアップするべきか、などを考えていく必要性が高くなっているように気がします。
少子化、核家族化が進んだ今、遠慮なく物事を頼める相手が昔に比べると極端に減っています。社会の形が大きく変わった昨今、色々な問題が生まれています。
ただプライベート空間である住居の中の問題は、なかなか表面化しにくく、私の出会った依頼者の方々の様に困っている方も多くいらっしゃるでしょう。
お会いした方々から感じたことは「散らかしたくて、散らかしている」というわけではなく、一人でではどうしても片づけることができないということです。
その状況で長い間、放置されてしまったことで、手の付けようがないような住まいになってしまっていることが大半で、他の方の力を借りることで解決できるようになります。
今回お伝えした内容は、人の住まいという、基本的には他人なら見ることが無いプライベート空間にお邪魔してお仕事をさせていただくことで、自分が理解している社会像とは違う、様々な暮らしの現実のカタチを垣間見ているからこそ、感じて発信できる内容なのだと思います。
これからの社会問題の一つとして捉えるべき課題なのではないか、と感じます。
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なかなか難しい問題ですよね。助けてほしいと声を上げたくてもあげれない、もしくは助けてほしいとも思ってらっしゃらないかもしれない。でも健康な生活を営むためには、清潔で住みよい住まいは必要です。私も心を鬼にしてぐうたらな自分を鞭打ってお掃除していますもの。個人で太刀打ちできない状況は、社会全体がフォローアップしていく仕組みづくりが必要なのでしょうね。
6月1日公開予定の次回では、出会いや共感についてのお話しをご紹介します。
お楽しみに。
みなさんも小林さんに質問したいことがありましたら、ぜひメールやインスタグラムでのDM、メッセンジャーなどでお送りください。
聞き手と書き手:Atsuko Niwa