第5章 高齢期の住み替え時における「整理収納」調査
5.3.3 住み替え時のモノの選別・持参品整理
※論文より切り抜き
モノの搬入や持参するモノの選別など、高齢者が一人で作業するには負担が大きい。そのため、子供がいる回答者は、住み替え時のモノの整理を子供に手伝ってもらうなどしている。子供が遠方にいる回答者Fの場合は、ヘルパーの手伝いで持参品を決めていた。
5.3.4 現在の生活状況
※論文より切り抜き
回答者の多くは、家事をしたり、外出したり、趣味を楽しんだり、活動的である。そのため、衣服や道具などのモノをたくさん所有している。食事については、ロングライフ神戸青谷ではキッチンが備わっているため、自炊が可能である。回答者BとCは、リハビリの一環として朝食と昼食を自炊している。自炊をする2組の部屋には、炊飯器やオーブントースターなどの家電、食器などのキッチン用品が多い。夕食については、回答者全員、自炊はせず、施設のご飯を食べている。ロングライフ甲子園口では、キッチン設備はなく、皿とコップ、冷蔵庫などを置いている。
5.3.5 現在の収納スペース
※論文より切り抜き
現在の施設では、以前暮らしていた家よりも小さい部屋での生活だが、回答者はみな、掃除や防犯の面で納得している。しかし、衣服を多く所有している回答者からは、クローゼットが小さいという指摘があった。
5.3.6 部屋の収納、飾りモノ
各施設の部屋の家具としては、「収納ケース」、「収納棚」があり、ロングライフ神戸青谷では玄関廊下やダイニングスペースに「飾り棚」が置かれていた。飾り棚には、各回答者の「思い出の品」などが置かれており、例えば回答者AとCは、旅行のお土産や子供からの贈り物、回答者BとCは、高価な食器類を飾っていた。部屋における「飾り棚」の存在価値はとても大きいと感じた。
「思い出の品」として、「写真・アルバム」などが考えられるが、大きくて重たいアルバムはほとんど開くことはなく、収納スペースに困っているようであった。亡くなった夫または妻、子供、孫などの大切な写真は、多くの回答者が壁に飾っていた。ロングライフ甲子園口は「飾り棚」がなく、実用的な箪笥や書棚が置かれていた。先程と同様に、壁などに直接絵画や写真を飾っている様子が窺えた。
回答者は、「住み替え」に伴い、必ず持っていきたい!というモノに対する意識は持っておらず、新しい住まいでの新しい暮らしを楽しみにしていたという。「住み替え」時に必要なモノのみを持参した回答者Gは、モノが少ないことに対して気持ちが楽になったと話していた。自立可能な6組はそれぞれ趣味があり、部屋の中には編み物や洋裁、パソコン、音楽などの趣味に関するモノが場所を占めていた。
5.4 まとめ
今回のヒアリングから、「住み替え」のきっかけは子供からの後押しが大きく影響していたと分かった。また、モノの「整理収納」については、子供や親族の助けを必要としている。体力が低下している高齢者にとって、一人で引っ越しを行い、モノを「整理収納」することは困難であると分かった。回答者Aのように、家のモノの必要不必要を子供がテキパキと判断することで、身体的にも心理的にも支えられるのでは、と感じた。しかし、回答者Bのように、以前の家の片付けができていない状況で、「住み替え」をするケースもある。回答者CやFはモノを整理する予定がなく、最終的には子供に託すことが考えられる。そうした場合は、モノの整理について、家族で話し合い、計画することが大切である。一方で、子供がいない場合には、「住み替え」のタイミングや方法、モノの整理をすべて自身で判断する必要がある。体力の低下や判断力の低下を考えると、先延ばしにせず、早め早めに考えておくことが重要だ。
家やモノを家族へ残すことができる環境がある回答者が6組で、家やモノがなくなることへの不安よりも、残っているモノをそのままにしていること、徐々に体力が衰えていく中で片付けられなくなることを不安に感じていることが分かった。元気なうちに少しずつ、片付けを進めることが大切だと感じた。
「住み替え」の際に持参するモノ、処分するモノを選別することで、これからの新しい暮らしのQOLの向上につながると考えるため、高齢期の「モノ」の整理はとても大切である。「住み替え」時の持参したモノを確認すると、これまでの経験や思い出がたくさん詰まっており、それらは高齢者の「心の安心」になっていると感じた。「住み替え」の際に、必要なモノ以外をすべて処分した回答者Gも、思い出の品は大切に所持していた。各部屋には、家族の写真がいつも見えるところに飾ってあった。











