第6章 高齢者の「整理収納」実施調査K氏の場合
6.1 本章の視点
第3章から高齢期における「整理収納」と「住み替え」について、課題や実態調査をまとめてきた。本章では、実際に高齢者と共に「整理収納」を行い、「整理収納」の進め方やモノの処分の判断方法などを把握する。また、高齢者以外の世代と比較して、異なる特性があるかを参与観察法により調査した。今回の高齢者とその他の世代との「整理収納」について、筆者が実務として「整理収納」作業を行っている事例より、比較調査を行う。
6.2 実施概要
6.2.1 対象者について
・有料老人ホームに入居中の女性 K氏(86歳)
→1ルーム(24.8㎡)、トイレバス付き、キッチンなし
・戸建自宅所有
・息子二人 (千葉・兵庫尼崎)
・性格
おしゃれが好きで、きっちりとした性格。
部屋の中のモノの収納位置を覚えているなど、整理への意識が高い。
・趣味
編み物、工芸、人形づくり、飾り箱、パソコンなど
→現在は、手に力が入らない・目が見えづらいなどの理由から、十分に行えていない状況
6.2.2 実施期間
合計10回実施(2016年6月~2017年1月)
当初は月1回ペースであったが、年末のお掃除時期に回数が増加した。
実施日や作業項目は「表6.2-1」に示す。
※論文より切り抜き
6.3 実務作業項目
K氏と共に作業を行うことを前提に、収納されているモノの内容や量の確認を行い、「整理収納」に取り掛かる。また、「モノを減らしてきれいにしたい」というK氏の希望を考慮して行う。部屋の中での配置修正や、モノの整理について、見やすく分かりやすくなるよう工夫をする。
※論文より切り抜き
6.4 実施作業レポート
合計10回行った「整理収納」の記録を以下に示す。









※論文より切り抜き
6.5 まとめ
6.5.1 高齢者の「整理収納」の特性
今回、高齢者のK氏と共に「整理収納」作業を実施し、高齢者の「整理収納」とその他の年代との異なる特性についてまとめる。
[ 特性 ]
・モノはもう買えないという思いが強く、「捨てる」という作業が難しい
・「いつか使う」という意識はあまり強くはない
・手先が動かしにくい点を考えると、きれいな収納よりも「片付けやすい」収納を意識すると良い
・洗濯物をたたむことが難しい
・誰かが使ってくれると分かれば手放す判断は早い
・色の配置は暗い色をまとめないようにする
・収納に収納するような深い収納は特に避ける
・中身がわかるように大きめのシールを貼り、大きいな文字で示す
6.5.2 高齢者の「整理収納」に対する”不安”の意識
「整理収納」をするきっかけとして、「部屋をきれいに見せたい」「部屋に飾り付けをしたい」という意識があげられる。「第2章 生活財生態学」において示したように、かつては「床の間」があり、部屋を「飾る」という文化が残っていた。高齢者施設という限られた空間のなかでも、季節ごとの飾り付けや、自分で作ったモノ、家族の写真などを飾り、部屋のアレンジを楽しんでいた。
今まできっちりと整理をして暮らしてきたからこそ、以前できていたことができなくなっている現状への不安はとても大きく、焦っている気持ちが窺えた。またK氏は、以前住んでいた自宅が残っていることから、家のモノの整理ができていないことへの不安もある。少しずつ「整理収納」をすることで、心の安定を保つようにしていた。
6.5.3 「整理収納」は「捨てる」から「整える」へ変化
当初のK氏は「モノを捨てて部屋をきれいに片付けたい」ということを目的として、「整理収納」を始めた。しかし、実際に「捨てる」作業はとても難しく、例えば「着ていない服」があったとしても、思い入れがあるなどの理由から捨てることができない。中年の方であれば、「いつか着る」という理由で捨てられないことが多い。本人の捨てたい気持ちと捨てられない思いで葛藤がある時は、無理をせずに保管することにした。
K氏の場合、言葉では「捨てる」意思を示しても、表情や声のトーンに少し違和感を覚える時があり、そのような時はいったん保管をすることで、安心してもらうようにした。「整理収納」を行う上で無理をしないことは大切で、徐々にストレスのない「整理収納」作業へ移行できたと感じている。結果的に保管しているモノが多いため、モノの量は大きく減少してはいない。しかし、「部屋をきれいに片付ける」ことが「整理収納」の目的であり、モノの量を「確認」し、モノを「整え」て、「収める」ことができたと考えている。
実際に高齢者と一緒に作業を行うことで、「整理収納」作業の流れが把握できた。「整理収納」を行う上で、モノの量を把握することや、一つずつ丁寧に作業を進めていけば、高齢であっても片付けができるという意識を持ってもらい、自信につなげられたらいいと思う。











