vol.6 「モノ」への意識に関する調査

家の中のモノの量とモノを捨てること

第2章 生活におけるモノとの関わり

 

2.3 「モノの「整理収納」」に関するインターネットアンケート調査

 暮らしの変化で新たな商品が世の中に登場し、所有するモノも変化してきた。モノを持つことがステイタスである時代を生きてきた高齢者にとって、モノを捨てることが難しいのか、またモノへの意識は他の世代とは異なるのか。「2.3」では、「モノの「整理収納」」に関するアンケートから、高齢者の「整理収納」の特性の有無やその他の年代とモノの意識に相違があるかを確認する。

2.3.1 調査概要

 モノに対する意識変化の調査として、生活の中のモノへの意識は、世代や家族構成等により相違があるかを把握する。

※論文より切り抜き

※株式会社つなぐネットコミュニケーションズが運営する、マンションという集住環境をより暮らしやすく、より豊かに過ごすための情報や取り組みを紹介している WEB サイト「マンション・ラボ」内にあるマクロミルのアンケートシステムを使用した独自のアンケートシステムである。 回答者は主にマンション居住者に限られており、「マンション・ラボ」のサイト内のリサーチ研究員として申込みを行い、2016年7月現在約16,000人加入している。会員に対してアンケート開始の旨がアナウンスされ、約16,000人の対象者の中から、今回 2,273件の回答数があった。

2.3.2 アンケート構成

 アンケート構成は、まず自身のモノの量についての認識を調査し、実際にモノの量が「多い」と感じている人は、何が多いと感じているのかを把握する。また、モノを捨てられるタイプかどうかも調査し、具体的に掘り下げていく。

※論文より切り抜き

2.3.3 回答者属性

 アンケート回答数は全2,273件であり、回答者を年齢別に分類すると、20代は13件(0.6%)、30代は265件(11.7%)、40代は828件(36.4%)、50代は672件(29.6%)、60代は343件(15.1%)、70代以上は152件(6.7%)となった (図2.3-2、図2.3-3)。男女比は、男性が1487件(65.4%)で、女性は786件(34.6%)である(図2.3-4)。年齢別の男女比は図2.3-5の通りである。居住年数や同居人数も調査し、分析に用いる(図2.3-6)(図2.3-7)(図2.3-8)(図2.3-9)(図2.3-10)。

※論文より切り抜き

2.3.4 モノの量について

 「自分の住まいにあるモノの量についてどのように感じていますか?」という設問に対して、「比較的多い」は1,299人(57%)、「多い」は336人(15%)とおよそ7割の人がモノが多いと回答している(図2.3-11、図2.3-12)。

※論文より切り抜き

(1) モノの量と男女比
 男女比で比較すると、「多い」、「比較的多い」と回答した男性の割合は71.8%、女性は72.1%と性別による大きな差はないことが分かる。性別問わず、家の中のモノの量は「多い」と感じている人が多いことが分かった(図2.3-13)。

※論文より切り抜き

(2) モノの量と年齢別比
 次に、年齢別で比較すると、どの年代もモノの量は多いと感じていることが分かる。僅かではあるが、若い世代よりも年齢が高い世代の方がモノの量を多いと感じていることが読み取れ、年齢を重ねてモノの量も増えていると考えられる(図2.3-14)。

※論文より切り抜き

(3) モノの量と同居人数
 同居人数が3人以上になるとモノの量は「多い」、「比較的多い」と感じている比率が高い。しかし、4人暮らしの場合は、3人の場合と比較すると「多い」、「比較的多い」と感じている割合は減少している(図2.3-15)。

※論文より切り抜き

(4) モノの量と居住年数
 居住年数でモノへの認識に大きな差はないといえるが、居住年数が2~5年未満の人は、1年未満の人よりもモノの量を「多い」と感じている割合は低い点が興味深い(図2.3-16)。

※論文より切り抜き

2.3.5 モノが多いと感じている人は何が多いのか

 先ほどの「自分の住まいにあるモノの量にについてどのように感じていますか?」という設問に対して「多い」、「比較的」多いと回答した1,635件(2.3.3 図2.3-12)の回答を分析する。
(1) 多いと感じているもモノの種類
 最も多いと感じているモノは「服」という回答が最も多く、72.5%(1185/1635件)である。続いて「本・雑誌」も多数で、服以外のファッション用品(靴、かばん)なども多い傾向が見られた。

※論文より切り抜き

(2) 年齢別
 年齢別にみると、年齢は関係なく、「服」が多いと感じていることが分かる(図2.3-17)。本や雑誌は若い世代よりも70代80代の方が多く所有していることが分かる。

※論文より切り抜き

2.3.6 モノを捨てられるタイプかどうか

 モノを捨てることへの意識は性別で違いはあるか、また捨てられないモノや捨てられない理由を調査する。

※論文より切り抜き

(1) 捨てられる、捨てられないタイプの男女比
 男女で比較すると、「捨てられない」、「あまり捨てられない」と回答した男性は66%、女性は約60%でかなり多くの人が捨てられないタイプであると分かる(図2.3-20)。男女で大きな差はないが、男性の方がモノを捨てるのは苦手であるように感じる。

※論文より切り抜き

(2) 捨てられる、捨てられないタイプの年齢比
 全体的に「比較的捨てられない」、「捨てられない」割合が多く、年齢で大きな差はないといえる(図2.3-21)。

※論文より切り抜き

2.3.7 捨てられないモノはあるのか

 「2.3.6」では、モノを捨てることへの意識について読み解いたが、次は家の中に捨てられないモノがあるかを調査した。

※論文より切り抜き

(1) 男女別年齢で比較
 「捨てられないものはあるか」という質問に対して、男女別に年齢で比較を行った(図2.3-23、図2.3-24)。男性は年齢が高くなるほど「はい」と回答している人が多い。女性も同様に捨てられないモノがある人が多いことが分かる。また、居住年数や子供の有無別で調査を行ったが、特に変化は見られなかった。

※論文より切り抜き

(2) 具体的に捨てられないモノは何か
 「捨てられないモノ」で最も多いのは「服(自分)」であり、次に「本・雑誌」であった。「2.3.5(1)」の結果と合わせると、家の中で多いと感じているモノが捨てられないモノであることが分かる。

※論文より切り抜き

(3) 具体的に捨てられないモノ年齢別
 捨てられないモノを年齢別に一覧に示した(表2.3-1)。ほとんどの世代で捨てられないモノの上位は「服(自分)」である。しかし20代と70代は「写真やアルバムなどの思い出の物」が上位であり、他の世代と違う傾向だと分かる。40代後半以降の年齢の高い層は「本・雑誌」が捨てられないものとしてあげられる。

※論文より切り抜き

(4) 捨てられないモノの入手方法
 モノの入手方法は「自分で購入」が最も多いが、他人からの「いただきもの」として「食器類」「文具類」「食品ストック」「大型家具(タンス類、収納棚類)」等は、捨てられないモノとして多いことがわかる(図2.3-26)。「いただきもの」ではない場合も、食品など消耗品以外の耐久品は、処分方法が難しいため、捨てられないと考えられる。

※論文より切り抜き

(5) 捨てられないモノの捨てたい理由
 モノを捨てたい理由は、「場所をとるから」という理由が最も多い(表2.3-2)。「収納スペースがいっぱいだから」という理由も多く、モノが多いと収納場所に困り、モノを捨てたいことにつながると考える。

※論文より切り抜き

(6) 捨てられない理由
 モノを捨てられない理由では、「また使うかもしれない」という理由が最も多い結果であった。また次いで、「もったいないから」という理由も多いことが分かる(表2.3-3)。「今は使っていないが、また使うかもしれない」と考える人ほど、モノを捨てるという先のステップに進めない原因かもしれない。

※論文より切り抜き

(7) 捨てられないモノを捨てようと思ってからどのぐらい経過しているか
 捨てようと思ってから10年以上経過しているモノは、「写真やアルバムなどの思い出の品」が最も多く、次いで「CD など音楽関係」、その他「大型家具」「本・雑誌」「DVDなど映像関係」が長年捨てられずにあるモノである。他方で、1年未満に捨てようと思って捨てられていないモノは「食品ストック」や「化粧品」、「子供服」などがあげられる(図2.3-27)。

※論文より切り抜き

2.3.8 まとめ

 モノを手に入れることが難しい時代を経験した高齢者の「整理収納」の特性を調査した結果、高齢者特有の傾向はみられなかった。モノへの意識に関しては、アンケートの結果から、家の中のモノが多いと感じている人の割合は全体の7割を超えており、大きな世代差はみられなかった。人々が多いと感じているモノは「服」であり、ほとんどの世代に共通していることが分かった。
 モノを捨てられるかについては、「捨てられない」、「あまり捨てられない」という回答が男女ともに全体の6割であった。年齢別の差は見られなかったが、男性の方が捨てられないと回答した人の割合が僅かに高かった。捨てたいモノの上位は、服やかばん、靴などのファッション用品、本や雑誌などで、「使っていない」ことが理由である。しかし、モノを捨てられない理由としては、「また使うかもしれないから」という回答が多く見られた。

2.4 まとめ

 第2章の「2.2」は、現在の高齢者について、これまでの暮らしにおけるモノとの関わりを把握するため、『生活財生態学』の1975年、1982年、1993年のデータに当てはめて読み解いた。暮らしのスタイルは大きく変化し、家の中で使用するモノも変化したことが分かる。特に、家電製品の進化は家庭に大きな影響をもたらしたといえる。次に「2.3」では、「モノの「整理収納」」に関するアンケートをもとに、高齢者の「整理収納」の特性の有無とその他の年代とモノの意識に相違があるかを調査したが、年齢や性別で大きな違いはみられなかった。モノの量に注目すると、ほとんどの世代の人がモノが「多い」と感じていることが分かったが、モノの「整理収納」方法やモノを捨てる方法が分からない人が多いのではないかと感じる。

〈注釈〉
*51 株式会社つなぐネットコミュニケーションズ、代表石塚和夫、東京都千代田区大手町所在、マンション ISP

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