vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

遺品整理の実情とは

第3章 高齢者と関わる仕事に従事する2者へのヒアリング

3.3 株式会社スリーマインド屋宜氏へのヒアリング

3.3.1 ヒアリング概要

株式会社スリーマインド 屋宜明彦(やぎあきひこ)氏。一般社団法人心結(しんゆう)おかたづけアドバイザー、遺品整理、生前整理の現場を2000件以上リーダーとして携わり、「社会から孤立しない為にも片付ける」をテーマとし、元気なうちに部屋を整理しておくことを推奨している。遺品整理事業に関して多数セミナーを開催している。

※論文より切り抜き

[(株)スリーマインド 業務内容]
1 片付け作業
2 生前整理
3 遺品整理
4 特殊清掃作業(消臭,除菌消毒,害虫駆除)

ヒアリング日時 平成28年7月15日(金)14:30-16:00

3.3.2 遺品整理業者のニーズについて

屋宜氏:子供世代が忙しい日々の合間を縫って遺品整理をすることは減りつつある。一人暮らしの高齢者は増加傾向で、遺品整理の需要は高まっていることから、業者の参入も非常に多い。片づけをしなければならないという使命感から、手早く綺麗に整理する事にニーズがあるように思う。

3.3.3 「生前整理」について

屋宜氏:「終活」について取り上げる際に、同時に考えられるのが「生前整理」である。ライフステージに合わせて、家具・調度品などの量を調整できれば理想的である。終活の一環として、身の回りの片付けを始める人や、自身の老後を考えて高齢者施設へ引っ越しする人も増えてきている。しかし引っ越しの時に、一気にモノを減らすことがストレスになったり、やる気をなくしたり、精神的な影響をもたらす場合がある。そのため、身体が元気なうちに、身の回りにあるモノが適正量であるか、本当に必要なモノかを、考えるようにアドバイスしている。

3.4 まとめ

 本章では、高齢者と関わる職業の2者から、高齢期の「住み替え」や「整理収納」に関して話を伺った。岡本氏のインタビューから、高齢者の「住み替え」は元気なうちに決めることや、「住み替え」に向けてモノの整理を進めることを学んだ。屋宜氏のインタビューから、遺品整理のサポートは、遺族の負担が大きい点から依頼されると考えられる。高齢者が終活を始める際に、大事なモノや残したいモノは自分自身で判断し、それを「住み替え」の時に持参できるように準備する必要があると感じる。

〈注釈〉
*53 株式会社スリーマインド,http://3mind.biz/ (2017/2/2)

当サイトの画像やイラスト、文書等の無断転載・無断使用はお断りいたします。ご使用をご希望される場合はお問い合わせください。

カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。

  • vol.3 高齢社会の実態-家族構成と一人暮らし-

    高齢社会の実態をデータから読み解く

    日本の高齢社会の実態を理解したうえで、高齢者の「整理収納」における課題を考えます。

  • vol.2 既往研究から探る -高齢者と住み替え-

    「高齢者」「住み替え」「モノの整理」に関する先行研究のまとめ

    高齢者の住み替えやモノの整理に関して、これまでの研究ではどのようなことに着目し、どのような結論を見出しているのでしょうか。過去の研究内容を分かりやすくまとめました。

  • vol.1 高齢社会における「整理収納」

    高齢期に向けた整理収納の課題とQOL向上のヒント

    暮らしにあふれるモノは、人生の節目ごとに見直しが必要です。高齢期には生前整理や遺品整理と向き合う場面も増えますが、自分らしく整えることが、安心と心地よい暮らしにつながります。

  • bitokurashiリニューアルのお知らせ

    みなさま、はじめまして。あるいはお久しぶりです。「bitokurashi.com」をご覧いただき、ありがとうございます。 2017年7月にスタートした「びとくらし」は、2025年9月に内容やコンセプトをリニューアルをさせ […]

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]