旬の野菜、 Italia編をお届けします
毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。
ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインを併せてお楽しみください。
パルミジャーノチーズとの相性は抜群のMelanzane、でも下準備で嫌われがち?
茄子のイタリア語名はMelanzane(単数形の場合はMelanzana)。
店頭に並ぶ季節は夏から秋で、イタリアでは比較的手に入りやすい野菜の一つかと思います。
ポピュラーなタイプで3種類ほどよく見かけ、日本の長茄子の様な形のもの、米ナスのように丸っこい形のもの、そして薄い紫色や白色をまとった異色なものです。
もともとはインドが原産地とのことで、ヨーロッパには15~16世紀ごろ中近東の国々を経由して伝わってきました。この連載が始まってから10を超える野菜の歴史をひも解いてきましたが、私達が今、当然のように口にしている様な野菜であっても原産地が色々なことに驚かされます。
とあるエリアでのみ食されていた野菜が、古代の大航海や大発見、交易を経て様々な地域にもたらされ、その後その地域で育てられ普及し、今の食につながっている…、そう思うと、先人たちの勇気と尽力があるからこそこんなに種類多くの野菜を毎日簡単に戴けるんだなぁ、と感動までも覚えます。
茄子を使ったよく知られたイタリアのお料理で、素揚げした茄子の輪切りにパルミジャーノチーズをたっぷりとかけてオーブンでグリルするメニューがあります。
シンプルで茄子の甘みとジューシーさが楽しめる一品ですが、こちらでは茄子の灰汁が嫌われて「下準備が手間だわ」なんて言葉をよく聞きます。灰汁の持つ苦みを嫌って、調理前にしっかりと灰汁抜きをする奥様が多くいらっしゃるようで、岩塩をふりかけて時間を置いて灰汁抜きするそうです。彼らの味覚的に、水でさらすだけじゃ間に合わないのでしょうが、確かにそのひと手間はちょっとメンドクサイですよね。
お料理は「Melanzane al forno 茄子のオーブン焼き、モッツァレラチーズとトマトソースを添えて」
上にも書いたようにこちらの茄子は基本的に灰汁が強め。
だからかどうかはわかりませんが皮がとっても厚いのです。日本で調理する要領で茄子を火にかけてもなかなか火が通らず、心配にすらなったこともありました。
今回ご紹介するお料理は、米ナスの様に大きな茄子を使ったほうが調理しやすいと思いますが、たまたま、魏両親の自家農園からたくさんの長ナス、しかも小さめサイズを戴いたのでそれを利用してみました。
小さい分、作業がちょっと面倒でしたが、アペリティーボなどでオツマミの様にお出しできるタイプになりました。
日本の茄子の皮の厚さで、この調理方法が可能かどうかはわかりませんが、こちらの茄子の場合は皮が破れることなく、すんなりと調理が可能でした。バジリコの緑、モッツァレラの白、トマトの赤色。見た目も可愛く、かなりイタリア気分を感じることができる一品です。
水分量が少なめで、皮が厚めの茄子でぜひ試してみてください。
・材料 (4人分)
長ナス(かなり小さめ) 6本
モッツァレラーチーズ 1個
トマトソース 200g
バジルの葉 2~3枚
にんにく ひとかけ
バゲット 10㎝程度
パルミジャーノレッジャーノチーズ 適量
エキストラバージンオリーブオイル 適量
塩 適量
・つくり方
1. 茄子を縦半分に切り水をはったボウルに10分程度さらします。実の部分にナイフでスイスイと切り込みを縦斜めに入れます。この時、皮を傷つけないようにしてください。
2. クッキングシートを敷いたオーブン皿に1の茄子を並べ、少量のオリーブオイルを切った茄子の断面に垂らし、少量の塩をふりかけます。これを180度に温めたオーブンで45分程度焼きます。
3. フライパンにオリーブオイルを入れ、にんにくを香りがでるまで炒め、その後トマトソースを入れて温めます。少量の塩と数枚のバジルの葉を加え、3分程度火にかけます。
4. 焼きあがった茄子の実の部分をスプーンで丁寧に繰り出し、その実をまとめて細かくすりつぶしてペースト状にします。
5. 茄子の黒い皮の部分をお皿のようにし、まず3のトマトソースを塗ります。その上に4の茄子のペーストを乗せ、バゲットの皮の部分を少しちぎってまぶします。その上に小さくスライスしたモッツァレラチーズを敷き、もう一度トマトソースを乗せ、パルミジャーノチーズを振りかけます。200度のオーブンで10分程度、モッツァレラチーズが少し溶けたら出来上がり。
あわせたワイン
ワインの名前:Hausum Marche Chardonnay IGT
生産者 :SGALY
年度 :2014年
生産地 :イタリア マルケ州 フェルモ県
作る料理は決まったがワインがなかなか決まらず…。
近所のエノテカ(ワインショップ)に行って見つけたのがこのワイン。SGALYなんて全く聞いたこと無いワイナリーだったのですが、「SGALYは質の良いワインを作っているけど、あまり知られていないワイナリー。ぜひこのワインを飲んでみたい」という主人の一言(安心してください、ソムリエ資格保有者です)から、今回のワインになりました。
かく言う私自身はこのワインの購入にかなり乗り気ではなかったのです。
というのも、シャルドネ種が苦手なのです。ワインをグラスに注いだ時「あぁ、こんな感じだったよね」と、今では殆ど飲む機会が無いシャルドネ種のワインの味わいなどを思い出したりしていました。
アンナータが2014年ということで、かなり熟成がかかってきています。色目もかなり濃い目の金色。
フルーティな感じは少なく、重たい酸味とまったりとしたアルコール感があり、非常に存在感のある味わい。余韻もあります。
シャルドネの特徴はしっかりと表現されているワインであることは間違いないので、シャルドネ好きな方にはお勧めです。
・生産者の紹介
1800年代後半に先代であるAntonio Sgalippa氏がワイン造りをはじめ、1960年代にはオーストラリアに移住をしていた一族のMarioとRosa夫妻がイタリアに戻り、Ortezzano と Monterinaldo二つのコムーネでのブドウ栽培に携わり始めました。
今ではBIO法に則っり、現代的な方法を使ってのワイン醸造から品質の高い製品を作り出しています。
・アッビナメント
野菜主体の料理でオリーブオイルもさほど使わず、モッツアレラチーズも少しだけしか乗せていない、軽めの味わいを持つ一品であろうと想像しており、合わせるワインもフルーティなモノを探していましたが、上記したようなしっかりしたシャルドネを選んでしまった今回。
お料理とワインを味覚として共に試してみるまでこの相性を疑わしく思っていましたが、実際にあわせてみるとあら不思議。とっても合います。
野菜の味がふんだんに楽しめるであろうと信じていた茄子のオーブン焼きですが、茄子の味の強さと軽い苦みの主張が想像以上にあり、シャルドネの熟成感にしっかりと包まれて素敵な余韻を楽しむことが出来ました。