イタリア時間「不合理な日常茶飯事」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

イタリアの残念なイメージ

「イタリア時間」のモットーは、イタリアの日常の出来事を紹介し読み手の方に豊かさを感じていただく事なのですが、実際の生活では日本での生活ではなかなか遭遇しないような、多種多様な厄介事が多く潜んでいます。みなさんがイメージしやすいところでは、特に海外からのツーリストが狙われるスリや荷物の置き引き。鉄道の主要駅や人があふれかえる街中などは要注意。貴重品は肌身離さず持っておくこと、そして、出来るだけモノを持ち歩かず、常に他人とは距離を取る位置関係に身体をキープしておくことが大切です。
このようにイタリア旅行と言うと「スリ、盗難」が多い、というイメージがいまだについて回っているわけですが、これがツーリストの方だけに起こる悲劇ではなく、私たちの日常生活でも常に隣り合わせにある悲劇でもあるのです。
イタリアでの移動手段と言えば自動車が主となりますが、長距離移動やバカンスなども自動車で出かける場合が殆どです。電車の時刻表を見てもわかりますが、日本の新幹線の様に密な感覚で縦横無尽に走行しておらず、その旅客量も推し量れ、その分、自動車での移動が多くなることが理解できます。ですので自動車にまつわる盗難話はあとを絶ちません。
先週にも、義妹カップルが被害を受けました。彼らにふりかかった悲しいエピソードをご紹介しながら、イタリアで普遍的に起こっている盗難についてご紹介させていただきますね。

サービスエリアに居つくモノ

先々週、ピエモンテ州で親戚の結婚式があり、私たち夫婦、義妹カップルもマルケ州からはるばる参列しました。もちろん、それぞれのマイカー移動。義妹たちは結婚式参列の後、数日間は山へヴァカンスへ行くとのことで、二匹の飼い犬を連れてバンタイプの車でやってきていました。
悲劇はバカンスからの帰り道、食の都としてもよく知られるパルマ近くにあるサービスエリアで起きました。
彼らの車はメタンガス車で、この給ガス所はガソリンよりも数が少なく、高速道路上でも決まった場所にしか設置されていません。拠点数が限られている上に、ガス充填に時間もかかることから、よく多くの車が列をなして順番待ちをしています。というのも、我が家の車も以前はメタンガス車でしたので、その苦労はよく知ったもの。
その日、長旅を経てからの給ガスだったため、義妹は二匹の犬を軽く散歩させるために車から降りて緑のあるスペースへ、そして彼が車に残りサービスを受けました。ちなみにメタンガスにはセルフサービスは存在せず、必ずスタッフが作業します。ガスを充てんした後、彼はトイレへと向かい、ほんの5分程度の間だけ車から離れたそうです。その後、車に戻り、何事もなく発車し、帰宅後に後部扉を開けたとき彼らの荷物である二つスーツケースが忽然と姿を消していることに気づきました。移動行程から、盗難されるタイミングとしては、あのサービスエリアしか思い当たる場所が無く、すぐに高速道路の交通警察課に問い合わせをしたそうです。警察から言われた言葉はと言うと、「あぁ、あのサービスエリアか。あそこはイタリア国内にあるサービスエリアで、最も盗難発生率が高い、盗難のメッカなんだよ。内部スタッフが犯行に携わっているみたいでどうしても盗難集団の尻尾がつかめなてないんだ」。

GS SによるPixabayからの画像

解消できない社会構造のひずみ

内部で犯行を手伝っているスタッフがいる、それが判っているにも関わらず犯人を捕まえることが出来ない。なんと恐ろしい警察の発言でしょう。日本ならば「そこまでわかってるなら、必死のパッチで捕まえろよ!」となりそうですが、責任感の無い言葉にはほとほと呆れてしまうばかり。前にも書いた様に、私たちも何度も利用したことがありますが、そのスタンドに「盗難多発!」といった注意喚起すら見たことがありません。まるで皆が見て見ぬふりをしているよう…。
多くの人が行きかう場所だし、少しの時間だからと施錠せずに車から離れる人は少なくないでしょうし、また、スタッフならば他人の車に触れていても不思議に思われることは無いでしょう。監視カメラを設置したところで、好き勝手に操作されることも容易に予想できます。日本よりも旧型車が多く、集中ロックを搭載していない自動車も多くあります。現に彼らの車も集中ロックがうまく作用せず、おそらくその時も後部扉は施錠されていなかったとか。
盗難については、本当に多くの知人たちも被害を受けています。
サービスエリアで同じようにスーツケースを盗まれた友達カップルもいますし、我が家も新車の盗難にあっていますが、二人の友人もそれぞれ車が盗まれていて(その内の1人は2台も!)、初夏には近所に住む友人宅に泥棒がはいったばかり。ちなみに友人と書いていますが、わたしにはこの地に友人と呼べる人は10人ほどしかいませんので、その頻度の高さは尋常ではありません。
イタリア国内でも南北エリア間で生活水準に大きな差があるうえに、数多くの移民を抱えるイタリアです。また日本のやくざとは少し異なりますが、マフィアも大きく力を振るっていますし、いろいろな団体と行政や政府の癒着も無限に存在しています。
盗難ひとつを見ても、単独犯ではなくてバックに大きな何かが存在するような組織的な犯行が多く、イタリアに根付いた解消が難しい根深い問題がいろいろと絡み合っていることがよくわかります。生きていくためには倫理も道徳も解さない、という判断する人が日本よりも圧倒的に多いということを、しっかりと意識しておくことがここでの生活の備えになります。ちょっと寂しい一面ですが、これがイタリアの現実です。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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