旬の野菜、 Italia編をお届けします
毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。
ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインを併せてお楽しみください。
イタリアでの秋のおやつの定番は焼き栗
10月中旬ごろからが栗の季節、秋から冬は家庭の食卓によく登場します。
イタリアで栗は“Castagno/カスターニョ”と呼ばれ、秋の中盤ごろからは我が家近所の八百屋さんやスーパーマーケットに必ず存在します。
日本の食卓に上がる栗料理というと、やはり「栗ご飯」がメジャーですよね。こちらでの栗の食べ方はというと、焼き栗にしてデザート感覚でいただくことが一般的なのではないでしょうか。
他の家庭で栗をどうやって食べるかということを聞いたことが無いのですが、少なくとも我が家(主人の実家)では、秋から冬の間、デザートとして自宅のオーブンで焼いた栗が食後に出されることが多いです。
栗は量り売りされているので好きな量だけ買い求め、皮にナイフで開け口として傷をつけ、それに軽く塩をまぶしてからオーブンで約1時間ほど焼き上げて出来上がり。
手間いらずで、しかも美味しいということで、この季節にはたびたび登場するお馴染みの一品です。また、お肉料理でもよくつかわれます。
一緒にグリルしたり煮込んだりと、栗の素朴な甘さとお肉のソースの塩加減が織りなす“あまじょっぱい”味付けを楽しめます。
そんな栗の木はイタリアの国内によく自生しており、古くから人々に食され、その栄養価の高さから「質素なパン」と呼ばれていたそうです。
ちなみに、よく“マロン”という呼称で栗を呼んでいますが、厳密にはCastagno(栗)とMaronの二種類が存在するようで、Maronの方が少し大きくて甘いとか?ただ、イタリアでMaron(マロン)と言ってもよく理解してもらえないので、カスターニョと呼んでくださいね。
お料理は「Ravioli di farina castagne 栗粉を使ったラヴィオリ」
栗の実が手に入るようになるのは秋が深まったころで、残念ながらこの記事を作成している今の時期(9月中旬)にはどこにも見当たらず。
日本の様に瓶詰めタイプなどが無いものかと探してみましたが、そういった類も全く見つけることが出来ませんでした。
本当にイタリアは“旬”以外の時期にお野菜を見つけることは難しい。
イタリアに来た頃はとっても不便に感じていましたが、今となれば旬のモノを旬の時期に食べる正しさにとっても納得がいきました。話がそれました。
今回は生の栗を手に入れることが出来ませんでしたので、私自身も初めて手に取った”栗の粉:Farina di Castagne”を使ってみたいと思います。
栗の粉は、乾燥した栗を細かく粉砕して作られ、味わいには甘さと栗独特のちょっとしたえぐみの様な苦みがあります。
古く中世から存在し、1300年代にトスカーナでペストが大流行した際、人々が丘陵部へ移動した際などにも食されていたとのことです。
Farina di Castagne/栗の粉は、とろみ付けの為にスープに入れたり、ケーキやポレンタづくりの材料としても使われます。今回はこの栗の粉で生パスタを作ってみました。イタリアでは乾燥パスタも生パスタもよく食べられ、お店でも簡単に買うことが出来ます。日本と同様、お店で購入した方が時間の短縮にもなるし、費用的にも安くなることも多いので、パスタを購入することもよくありますが、手間と愛情をこめてパスタを自宅で行うマンマもまだまだたくさん存在します。
パスタ作り、決して難しくありません。私でもできます。
ぜひ、みなさんも挑戦してみてくださいね。今回のレシピ、具材も作り方もとってもシンプルです。ラヴィオリは餃子の要領で、パスタ生地を小さな円形にしそこに具を置き半円型に閉じるだけ。
中身の具の味わいを感じるために、ソースはシンプルにバターとサルヴィアのみになっています。
・材料 (6人分)
栗の粉/Faria di Castagne 30g
セモリナ粉 30g
薄力粉(イタリアのレシピではFarina00) 60g
全卵 1個
卵黄 1個
塩 少々
水 少々(必要に応じて)
リコッタチーズ 200g
スペック(燻製ハムの一種) 50g
チャイブ 1把
塩・こしょう 適量
>味付け用
バター 40g
サルヴィアの葉 適量
・つくり方
1. パスタの用意をします。ボウルに3種類の粉と全卵、卵黄、塩少々を入れ混ぜ合わせます。水分が足りない場合は、お水を少し足してください。
生地は丸めて30分以上休ませます。
2. チャイブを細かく切り、リコッタと混ぜ、そこに粗目に切ったスペックも投入。
塩コショウもし、混ぜ合わせます。
3. パスタの成型をします。台に小麦粉を軽く撒き、その上にパスタの塊をのせ、薄くなりすぎない程度に麺棒などで伸ばします。
コップを使って、円形のパスタを切り出します。
4. 円形に切り出したパスタの上に具材を乗せ、半円型に閉じます。
また、閉じ口をフォークの刃部分で押しつけ型付けます。
トレイにくっつき防止としてセモリナ粉を振りかけ、成型したラヴィオリを並べます。
5. 沸騰したお湯に塩を適量入れ、4で出来たラヴィオリを入れ4~5分茹でます。
バターをフライパンで温めて溶かし、サルヴィアを加え香りを立たせた中に、ゆがいたラヴィオリを入れ軽く合わせて出来上がり。
※3.コップで成型したところ大きすぎたので、小さなエスプレッソ用のカップを使って切り出しました。切り出した後、麺棒で少し押し伸ばして餃子の皮より一回り小さいサイズに整形しました。
あわせたワイン Marche Rosso IGT 「Benedetto」
原産地 :マルケ州アンコーナ県クプラモンターナエリア
ワインの名前:Benedetto Marche Rosso IGT
生産者 :Azienda olivitinicola Giulia Fiorentini
年度 :2015 年
マルケ州アンコーナ県、クプラマリッティマは白葡萄酒ヴェルディッキオの生産地としてとても有名なエリアです。
エジノ川の両岸に500m程度の丘陵地が続き、多くの集落でその土壌や気候を生かした個性豊かなワインが作り出されます。
クプラモンターナエリアはアッペンニーニ山脈が東側にすぐ近く、夏は比較的涼しく、湿度がそれほど高くならず、ワインづくりには素晴らしい気候を持つエリアとしてよく知られています。
・生産者の紹介
品質の良い有機ワインの生産者の一人として注目される若き醸造家ジュリア・フィオッレンティー。
もともとワイン造りの経験も知識も持ち合わせず、このマルケ州クプラモンターナにブドウ畑とカンティーナを手に入れ、ワイン醸造を数年前に開始しました。耕作面積3ヘクタール、生産本数は年に5千本と小さなカンティーナですが、野生酵母を使ってpied de couveで酵母菌を発生させたり、機械に頼らず昔ながらの方法を用いたワインを造り出しています。
・アッビナメント
スペックにあわせて、モンテプルチアーノ、サンジョヴェーゼ、カヴェルネソーヴィイヨンがブレンドされた赤ワインを合わせてみました。
この赤ワイン有機農法で育てられたブドウを、野生酵母を利用して発行させ長期の醸しと熟成を経てリリースされているもの。
葡萄が持つ生き生きとした赤い果実の味わいや、フレッシュな酸味が感じられ、また研ぎ澄まされたタンニンも残るものでした。
パスタはバターソースをまとってまったりとしているので、この酸味が綺麗に合わさり、またチャイブのスパイス感や栗の粉にあるふっと感じる苦みが、ワインにあるスパイス感と非常によくマッチしていました。
味わいがどちらも複雑でとても良いアッビナメント(組み合わせ)でした。