旬の野菜でひとつきひとくぎりItalia編

「ブロッコリー」 イタリア料理編

旬の野菜、 Italia編をお届けします

毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。

ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインを併せてお楽しみください。

ローマ時代から食されるブロッコリー。“これさえ無ければ”と言われるものは…?

ボリュームがあって、安くて美味しい野菜の代表格と言うとイタリアではブロッコリーを思い出されます。
それもそのはず、ギリシャなどを含む地中海エリアが原産となるこのアブラナ科の野菜がイタリアで普及し出したのは遥か昔のローマ時代のこと。当時はアルコール類の吸収を助ける胃薬としても利用されていた歴史もあり、長い間、その味わいとカロリーの低さによってイタリアの人々から愛され続けています。

アブラナ科の一種になり、アブラナ科の仲間としては外側の葉の部分を食すタイプとして、キャベツやチリメンキャベツ、芽キャベツなど、また内部の茎の部分を食すタイプとしてブロッコリーやカリフラワーなどが存在します。

現代ではブロッコリーはほぼ一年中、スーパーマーケットで買い求めることができ、付け合わせやパスタの具材などで家庭でもよく使われますが、イタリア人が嫌う欠点がただ一つだけあります。それは“調理時の臭い”。
イタリア人の友達が「ブロッコリーを料理するときの臭いは強烈よねぇ」と言うのを聞いたり、また、自宅でブロッコリー料理を作った際に帰宅した主人に「わ!ブロッコリー、調理したの?」としかめ面で聞かれたりこともあるくらい、イタリア人たちはブロッコリー臭にとても敏感に思えます。
ちなみに、この臭いはブロッコリーの持つ硫黄から発せられるもので、茹でる際にレモンを加えることで抑えることが出来るらしいです。

お料理は「Crescia Marchigiana con broccoli e salsiccia  ブロッコリーとサルシッチャを挟んだマルケ風クレシャ」

先日、ピアディーナ(エミリア・ロマーニャ州生まれのパンの一種。ほぼクレシャと同じものです)を食べに行き、その際に偶然ブロッコリーを使ったメニューを見つけました。

今回のこのお題も決まった後だったので、丁度良いとオーダーしてみると、とても美味しく見た目もイタリアっぽく思えたので、今回の一品に決定しました。マルケ州住まいですので、せっかくなのでマルケ州生まれの“クレシャ”に挑戦してみました。同じものでも場所が変わると呼び名が変わり、また、愛され方もかなり変わります。

エミリア・ロマーニャ州では、ピアディーナは日常的によく食され、家庭の冷蔵庫には必ず出来合いのピアディーナが入っているそうです。
マルケ州でのクレシャ愛はエミリア・ロマーニャのピアディーナ愛ほど高くなく、レストランでもたまに見かける程度。逆に街にはピアディーナ屋さんがあるほどです。

簡単で素朴なパンですが、ラードが入っているので味わいはしっかりと感じることができます。

・材料 (6人分)
>クレシャの材料
小麦粉 500g
ラード 100g
全卵 2個
水 120ml
牛乳 100ml
塩 少々
コショウ 少々

>クレシャの具材
サルシッチャ 6本
ブロッコリー 1Kg
にんにく 2かけ
オリーブオイル 適量
塩 少々
コショウ 少々
唐辛子パウダー 少々(お好みで)

・つくり方
1. クレシャの用意をします。小麦粉、牛乳、卵、ラード50g分を入れよく練り込みます。水は必要な場合、加えるようにしてください。生地がひとつにまとまり表面につやがでたら、丸めてラップをし30分間寝かせます。注:私は水を殆ど加えずに完成しました。
2. 生地を1個100~125g程度、6~8個に分け小さく丸めたものを、綿棒で伸ばし円形状にし、表面にラードを適量(7~8g程度)塗ります。その後、生地を片方からきつく丸めて棒状にし、それを渦巻きのようにまとめます。
3. 渦巻き状になった生地にラップをし、冷蔵庫で1時間半程度寝かせます。
4. 具材の用意をします。ブロッコリーはよく洗い、適当に切り分けた後、10分程度蒸して柔らかくします。
5. フライパンに少し多めでエキストラヴァージンオリーブオイルを入れ、ニンニクを炒めます。香りが付いたところで4のブロッコリーを入れ、塩、コショウ、お好みで唐辛子パウダーを加え、クタクタになるまで炒めます。
6. サルシッチャもグリルをし、4枚程度にスライスします。
7. 3のクレシャ生地を綿棒などで厚さ3mm程度にまで円形状に伸ばします(サイズはお使いのフライパンの底に合う大きさで)。フライパンで両面に軽く焦げ目が付く程度に焼き上げます。
8. 焼き上げたクレシャの半分にブロッコリーを敷き、その上にサルシッチャを並べ、クレシャを折りたたんで出来上がり。
※我が家は二人暮らしですので記載している分量の半分で用意しました。

あわせたワイン シチリアワイン「Vecchio Samperi」

原産地:イタリア シチリア州
ワインの名前:Vecchio Samperi /ヴェッキオ サンペーリ
生産者: Marco De Bartoli
アルコール度数:16.5%

今回のワインはかなり変わった凄いワインです。
シチリア州、島の南西部にあるマルサラエリアで作られる酒精強化ワイン、マルサラをご存知でしょうか?
マルサラは、通常、ワインの製造時にはご法度となるアルコール分を添加して作られており、高めのアルコール度数を保有した、主に食後酒として飲まれるものになります。
このマルサラ酒の伝統的な作り方はソレラシステムと呼ばれ、年代順に仕込んだ樽を積み重ね、一番下段にある樽(この樽が最も古く熟成している)から瓶詰めされるわけですが、この瓶詰めで減ったワインの分量をその上段の樽から、そしてまたその一つ上段の樽からと順に補填していきます。こうすることによって、味わいを一定に保つことが出来ます。
この製造方法はもともとこの地方で古くから“通常のワイン”(酒精強化していないアルコール無添加ワイン)を作るために使われていた手法ですが、今ではアルコールを添加しないと、このエリアでの特産品となる”マルサラ“と呼ぶことが出来ません。
このワインの生みの親であるMarco de Bartoli氏は、あえてアルコール分を添加せずままソレラシステム20年間の醸造を経て、ワインの醸造を開始。1980年代、もちろん法律の関係上、マルサラ酒と呼ぶことが出来ないため” ヴェッキオ サンペーリ“と名付けて、このワインを世に送り出しました。よって、このワインには年度はありません。20年にわたる期間で収穫された葡萄が混在している状態になります。

・生産者の紹介
1980年、消えつつあるマルサラ酒の伝統を復興させようと、200年以上に続く先代たちから引き継いだ25haの畑を利用してワインづくりを始めたのが、このカンティーナの創始者マルコ デ バルトリ氏でした。彼は、元来のマルサラ酒を作り、その町の名前を使って、Vecchio Samperiと名付けました。現在は、彼の息子 レナート氏が跡を継ぎ、自然農法、自然酵母を用いたワイン造りを行っています。

・アッビナメント
ワインは非常に特徴的で香りは熟成香で満ち、まるでマルサラ酒そのもののよう。その豊潤さから受ける印象と対極的に味わいはしっかりとした酸味を伴う辛口でした。余韻も非常に長く、口に含んだ瞬間に口いっぱいに香りが広がり、まろやかでアルコール感をしっかり感じます。
さて、アッビナメントについてですが、正直にお話しますとこの記事、加筆修正を後日させていただいています。
というのも、一度目のアッビナメントは金曜の夕飯時に行ったのですが、その際は掲載している写真のように、敢えて香りを楽しむことが出来るブルゴーニュ用のワイングラスを利用。
そして生産者がWEBサイト上で勧める飲み方:室温より少し冷やした程度の温度、でワインを戴いたのです。
そう、驚くほどの香りと、しっかりとしたアルコール感の熱さを感じるブランデーのような“食後酒”のような雰囲気で、ワインのポテンシャルが高さが顕著となり、アッビナメントは完全に失敗に終わってしまったのです。
ですので、修正前の原稿では“残念な結果のアッビナメント”についてのご報告だったのですが、その翌日の土曜日に、たまたま残っていたクレシャで同じメニューを作り、このワインを戴いてみたところ、なんと完璧なアッビナメントが誕生したのです。

クレシャにはラードがしっかりと混ぜ込まれているので単なるパンとは違う味わがあります。
またサルシッチャの奥深いコクと、ブロッコリーの新鮮な青い香りが、ワインにピッタリと合うのです。
もちろん同じ“Vecchiio Samperi:ヴェッキオ サンペーリ”なのですが、この時は、白ワイン用の小さなグラスを使い、また温度はキンキンに冷えた8~10℃程度で戴いたのです。温度が低いとワインは香りが開きにくく、またアルコールの感覚を和らげることができます。
樽で熟成した香りがあるものの、キリッとした酸味がしっかりと出た辛口の白ワインとして、全く違うこのワインの一面を楽しむことが出来ました。ワインの戴き方、とても勉強になりました。それにしても、驚く程のポテンシャルの高さを持っています、このVecchio Samperi!

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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