毎日、家で生活する上で欠かせない道具がいくつかあります。
「食」で欠かせない道具といえば、「包丁」です。
道具は長く使えば使うほど、愛着がわきます。
だから長く使える物を、大切に選びたいとも思います。
包丁は食材を切るための道具ですが
包丁は食材を切るための道具ですが、その包丁によって料理の出来や、味が変わることまでを気にして料理をすることはありますか。
料理をするときの包丁の役割は、切れ味は良いか、効率よく料理ができるかなど、食材を切ることばかりを意識しています。
包丁の切れ味は、最後に料理への味にも影響してきますが、そこまで意識していることは少ないですね。
暮らしに欠かせない「包丁」について、「びとくらし」では少しずつお話をさせていただきます。
「包丁」についてお話を伺わせていただいたのは、「三寿ゞ刃物製作所」の宮脇さんです。
「三寿ゞ刃物製作所」は、兵庫県三木市で400年培われた伝統的な製法を受け継ぐ包丁メーカーです。
(最後にご紹介させていただきます。)
包丁は何から選べば良いのか
まず、包丁を揃えようと思った時、どのようにして、何から選べば良いか迷います。
包丁も様々な種類が出ているので、何を基準にどのような種類を選べば良いのか難しいです。
安価な物でも使えれば良く、また、高価な物であればなんとなくいい物を使っている意識になったりもします。
本来の自分に合う包丁が何かわからないまま、包丁を使っている人も中にはいるでしょう。
包丁には、たくさんの種類があります。
そういうと、刃の形状や食材によって使い分けることを思い浮かべます。
長年使う道具の場合「メンテナンス」が必要になります。
包丁は刃が欠けてしまったり、切れ味が悪くなったり、柄の部分が傷んでしまうなど、使うほどに修理やメンテナンスが必要になります。
道具は、メンテナンスをして長く使えることが、物を揃える時の大事な点です。
使い捨てではなく、長く使うことで自分の手に馴染んでいき、愛着がますます湧いていきます。
包丁は刃の部分はもちろんですが、持ち手となる「柄」の部分も傷んできます。
その点の修理やメンテナンス方法の違いを理解しておくことも、包丁選びの基準になります。
包丁の種類は大きく分けると二種類あり、一つ目に洋包丁、二つ目に和包丁があります。
ヨーロッパから伝わってきた洋包丁
洋包丁は刃が両刀に研いであり、ハンドルは下の図のように強化木などを鋲で留めたタイプの包丁です。
柄が傷んでしまった場合は、新たな柄と中子をまた挟みます。
しかし、柄と中子の形状が一致していないことが多く、柄の形に合わせて柄と中子の双方を削ることが必要になります。
その分、非常に手間はかかります。
素材を生かした和包丁
一方、和包丁の柄の部分は、下の図のように刃の中子部分を柄に刺して固定されています。
柄の部材には「朴(ほう)」が使用されていることが多いです。
昔から柄に使用されている「朴」は、刀の鞘として使われており、柔らかくて加工しやすく、手に入りやすい素材でした。
和包丁の場合、この「柄」を簡単に取り外すことができるため、傷んだ時の交換がとても容易にできるのが特徴です。
和包丁の場合、柄に包丁の中子部分が挿入されており、留金具はついていません。
木の弾力だけで、固定されています。
中子が挿入されているだけでは、抜けやすくて危ないのでは?と思いますが、とてもよく出来ているのが、和包丁の特徴です。
昔ながらの日本の製法です。
まず、柄の部分に中子を挿し入れるには、すでに小さめに穴のあいている柄の部分に赤く熱した中子を挿し込んでいきます。
熱せられた中子は、中子自らの形に沿うように、柄の中を焼きながら、入り込んでいきます。
最終的に熱が冷めて、木の弾力で締めつけられて止まります。
柄に使用される「朴」は柔らかいので、収縮しやすいのが特徴です。
さらに、「朴」には特徴があります。
中子を熱し、柄の穴を焼きながら中へ挿し込んでいくと、ヤニが出ます。
そのヤニには錆止めの効果があり、接着剤の効果もあります。
現在は、少しボンドも入れていることもありますが、昔からこのやり方は変わっていません。
素材の特性が生かされていますね。
柄の部分を交換するときに、柄と刃の部分を外すことも簡単です。
刃の根元の柄の部分(口輪上部)をトントン上から叩くと抜けます。
下に力を加えるとすぐに抜けます。
包丁は横にして使用するため、抜けることはありませんが、普段使わない角度や使わない力方向を加えると取り外せます。
このように、和包丁はとてもシンプルなつくりですが、素材を生かしてとてもよくできています。
修理やメンテナンスができる道具選び
包丁ひとつとっても、道具は修理やメンテナンスを繰り返しながら、長年使い込むことで、自分の手に馴染んできます。
馴染む前に簡単に買い替えるのではなく、長く使うことを前提に大切に選んで使いたいです。
よく手に馴染んだ道具は、使う人のクセが道具に反映されて、購入時よりも使い易くなっています。
そして、使って馴染んだ道具を修理やメンテナンスをしてくれる場所があることを、大切にしたいです。