「静かなお正月」

写真家からみえる景色

写真で日常を切り取る、びとくらし
「びとくらし」サイトトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。
写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。

「静かなお正月」

今年のはじまりは、初詣や親戚へ新年の挨拶を予定しない、静かなお正月を迎えることになりました。

冬休みに向けて「おうち飲み」用に準備していたビールや日本酒、とり寄せたお節料理やお餅をかこみ、兵庫県からの要請どおり、家でおとなしく過ごしていました。

子どものブロックで作品を作ったり、動画配信を鑑賞したり、ごろごろしたりとインドアに努めていましたが、三ヶ日を過ぎたあたりで体調をくずしてしまい、しばらく自宅にこもっていました。

毎冬、どうしても体調を崩しがちなのですが、今季は特に気をつけているし、外出先でもマスクや手指の消毒をしているひとが多いし、無事に乗り切れるのでは?と期待していましたが、ざんねんでした。

このコロナ禍のご時世…発熱の症状があるわけじゃないし、できるだけ病院へ行きたくないな…と考えていました。

栄養をつけて、しっかり寝て、ゆっくり過ごしていたら治るかもしれないと休養しましたが、状態は平行線。
これ以上の改善は薬を服用しないと無理だなと観念し、かかりつけのクリニックへ行くことにしました。

ある程度は想像していたものの、クリニックでの患者さんへの対応が思っていた以上に慎重で、ひとつひとつの作業に時間がかかることにとまどったり、納得したりしながらの受診でした。

そして医療現場のみなさんは、感染リスクを予測しながら通常の診療ができる環境を維持してくださっていて、それは本当にたいへんなことだと目のあたりにし、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

長く待った診察が終わってホッと胸をなでおろし、顔見知りの薬剤師さんから薬をもらい、ひとことふたことお互いをねぎらって、無事に帰路につきました。

その日の朝は冷込みが強く、路面が凍っていました。わたしより先に家を出ていた夫から「転んでるひとが何人かいたよ。気をつけてね」とメッセージをもらい、慣れた道を慎重に歩きました。

帰るころには雲のあいだから太陽の光がさして、鳥の明るいさえずりと、街ヘ出てきたひとたちの活動する足音が響く、いつもの道に戻っていました。

ひさしぶりの外の世界。
あたたかくなって水たまりに張っていた氷は解け、木の枝や葉についた霜が、きらきらと雫になっていくところでした。
そのまぶしい様子は、とても気持ちの良い気分転換になりました。

その後はおかげさまで薬が効いて回復し、仕事と日常生活に、すこしずつ戻っていくことができました。

在宅ワーク中、キリの良いタイミングに休憩しようと、お湯の湧く音にいそいそとキッチンへを立ち、熱めのドリップコーヒーをいれました。

時間をかけてゆっくり味わおうと、大きなマグにたっぷりのコーヒーと、小皿にミルクチョコレートをのせて準備したのが、たちまちからっぽに。
それを見て「すっかり元気になったんだな」と、ひとり笑ってしまいました。

2021年もおそらく、とりまく状況が刻々と変化し、それにどうにか対応しつづける、課題の多い日々になるのだろうと思います。

そのめまぐるしい中でも、自分なりのちいさな楽しみや希望を見つけて、前向きに一年を過ごしていけたらなと、願っています。

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Shoko Arashi 嵐祥子

2009年、デジタル一眼レフの面白さを知り「写真を撮ること」に興味を持ち、写真表現大学で作品制作を学ぶ。 その後、ウェディングフォトに従事、2012年からフリーランスカメラマンとして活動中。2015年から一児の母です。

https://arashishoko.localinfo.jp

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