旬の野菜、 Italia編をお届けします
毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。
ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインをセットでお楽しみください。
イタリアではズッキーニの陰に隠れて人気は薄めのキュウリ
キュウリはヨーロッパでも古くから食べられる野菜の一つの様ですが、イタリアではそれほどメジャーで愛されている野菜であるようには感じられません。
愛され野菜としては、見た目がそっくりなズッキーニの方に圧倒的に軍配があがります。
一つの理由としては、あくまでも私の想像の域を超えませんが、イタリア人はあまり生野菜を食しません。
日本でならば、ランチセットや、コース料理を戴くときは必ずと言ってよいほどミニサラダがついてきますが、こちらでは温野菜を食べるほうが多いように思います。
衛生上の問題や、消化の良し悪しで、“生”物をあまり食べない彼ら。そう、前にもお伝えしましたが、野菜を食べるならクタクタになるまで煮て食べる彼らの食習慣に、“食べるなら生食が一番“のキュウリはあまり食べられてこなかったのかな、と想像します。
ただ、最近では強烈な夏の暑さもあってか、夏場はつめたいパスタやサラダを食べる機会が増えているようで、年配の奥方が自慢げに「今日はきゅうりでパスタを作って食べたのよ」なんて事をわざわざ言ってくることも多く、人気は徐々にあがりつつあるように見受けます。
ちなみにイタリアのキュウリは日本の様に細くはなく、結構、ずんぐりしています。大きさで言うと、日本のキュウリに比べて3倍はありそうですね。
お料理は「Insalata di riso venere con gamberetti e cetrioli 海老とキュウリが入ったリーゾヴェーネレのサラダ」
今回のお料理は海老とキュウリが入ったリーゾヴェーネレのサラダ
リーゾヴェーネとは聞きなれない名前ですが、リーゾ:risoはお米を意味し、これはお米の一種の名前になります。
見た目は真っ黒。イタリア品種とアジア品種の黒米を交配して作られたもので、近年の健康食ブームに乗っかりレストランや家庭の食卓でも見かけるようになってきました。
こちらのお米の食べ方は、パスタのように茹でることが基本です。
このリーゾヴェーネレの茹で時間は通常40分。自宅で簡単に食べるにはちょっと手が出しにくい調理時間であることに加え、値段もリゾットなどで使われるArborio米などに比べると二倍程度高めになりますので、我が家の食卓にも初登場です。
ビタミンやミネラル、タンパク質も多く含まれるとのことが、健康食として注目されている所以でしょう。お米はイタリアでは、リゾットもしくはサラダとして食べられるのが殆どです。
今回はサラダ仕立てにしてみました。
サラダなので冷たくして食べないと!という日本人的思考を持つわたし、お料理が完成してから冷蔵庫にてすこし冷やして食卓に並べたところ、イタリア人の主人から「冷たすぎる」とのコメント…。 そうです、ここイタリアでは冷たくして戴くものも、冷やしすぎてはいけないことをスッカリ忘れておりました。
・材料
リーゾヴェーネレ 120g
キュウリ 1本
黄パプリカ 1個
人参(小さめ) 1本
玉ねぎ 半個
パイメイ海老 10尾程度
西洋パセリ 適量
レモン 半分
エキストラバージンオリーブオイル 大匙1
白ワイン 適量
塩 適量
こしょう 適量
・つくり方
1. リーゾヴェーネレを炊きます。
イタリア式ではパスタのようにゆがくのが普通の様ですが、私は圧力鍋を使って炊いてみました。
リーゾヴェーネレと、その嵩の二倍にあたる水と小匙1程度の塩を鍋に入れ蓋をし、圧力がかかってからも約15分間弱火を保ちます。その後、圧力が自然に落ちる待ち、蓋を開けます。少し水分が残っているかも知れませんが、お米ががプチっと炊けていたら大丈夫です。
2. パイメイ海老の皮をむき、頭と背ワタを取り除きます。鍋に30㏄程度の白ワインとお水を入れ、蒸し籠や蒸し器を使って1~2分ほど海老を茹でます。
3. キュウリ、黄パプリカ、人参、玉ねぎを細かく刻み、氷水に5分程度漬け、その後、ペーパータオルなどを用いてしっかりと水を切ります。また、飾り付け用以外のパイメイ海老を細かく刻みます。
4. レモンの絞り汁、レモンの皮を削ったもの(小さじ1程度)、オリーブオイル、パセリ、塩、こしょう、氷1粒をブレンダーなどで混ぜ合わせ、クリーミーなソースに仕上げます。
5. リーゾヴェーネレ、刻んだ野菜と海老、4で作ったソースを混ぜ合わせ、最後に西洋パセリとパイメイ海老を飾り付けて出来上がり。
あわせたワイン
ワインの名前:Passerina Bollicina
生産者 :San Filippo
年度 :2013 年
生産地 :イタリア マルケ州オッフィーダ地方
マルケ州の南部エリアにあたるオッフィーダ、パッセリーナやペコリーノといった土着品種を使った白ワインが多く生産されるエリアです。アドリア海に面したエリアで、魚介類とのマリアージュにとても適しています。
Bollicinaとは、イタリアでよく使われる言葉ですが、泡のあるワインという意味になります。
泡系のワインはガス圧によって、スプマンテ、フリッツァンテとこしょうが変わりますが、Bollicinaは泡系ワインのイタリア的総称としてとらえてください。
イタリアで、アペリティーヴォ(食前酒)でのお勧めやお食事のスターターと合わせるワインをカメリエラやソムリエに尋ねられると、「Bollicinaはどう?」と提案されることも多くあると思います。
Passerina品種は白ブドウ品種で、香りも味わいも軽やかでさわやか。アブルッツォ州やウンブリア州、ラツィオ州の一部でも栽培されています。
・生産者の紹介
1999年に設立後、少しの間はほかのワイナリーに栽培したブドウを販売していましたが、2003年から自分たちの夢をかなえる様ワインの醸造事業を本格的に開始しました。2001年の当初からBIO・有機農法を取り入れ、化学薬品を全く使わないワイン造りを行い、今では50haの畑を所有するまでになりました。
・アッビナメント
リーゾヴェーネレのほんのりとした甘み、海老のうまみとクリーミーなソース、この三つのミックスから、合わせるなら「Bollicina」が良いな、と思い、今回は軽やかなPasserinaを選びました。
BIO製法で作られており、飲み口もとてもシンプルですが、ガス圧はさほど高めではないものの泡は細やかで、お料理のさっぱりとしていながらも噛めば噛むほど味が出るという特性によくあっていました。ほどよく繊細な香りも、サラダ仕立てのこのお皿によく合っていました。