イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「イタリアの朝食」

「少しずつ日常が戻ってきていますよ」とイタリア、マルケ州アンコーナ住まいのライター丹羽淳子さんからのメッセージと今月のエッセイを受け取りました。
コロナ禍で大きな被害を受けている様子はニュースで見聞きしていますが、このように彼女から直接、生活の空気を知ることができると安心できます。

生活で見つける「びとくらし」旅で訪れたり、テレビや雑誌でみることが出来る外国の様子ですが、実際に暮らしてみるとどんな感じなのでしょうか?
ファッションや美術品、数多くの世界遺産で知られるイタリアですが、もちろん”日常生活”も存在します。
そんな生活の中から「びとくらし」的なトピックを、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

食事とは呼べないイタリア式朝ごはん

ようやくイタリアにも日常が戻ってきました。
約二か月以上に及ぶ外出規制、日本で言うロックダウンが続きましたが、私が心待ちにしていたのは街にあるバールでエスプレッソコーヒーを戴くことでした。
最初の一杯を戴いたときは、本当にしみじみと「いつものありがたみ」を感じることができました。
さて、今回はイタリアでの朝ごはんについてご紹介しますね。
一日の活動において朝ごはんを摂ることの大切さはよく唱えられる話題の一つです。
朝ごはんを抜く方も多いようですが、私自身は絶対に朝ごはんを摂るようにしていて、その習慣はここイタリアに来てからも変わっていません。
小さいサイズの食パン2枚と手作りジャム、果物と暖かい飲み物、これが私の定番の朝食です。
さて、では私のイタリア人の主人が何を食べているかと言うと、内緒でこちらの写真をお見せしましょう。

果物と飲み物は良いとして、数種類の”ビスケット”と食パンに塗るジャムやクリーム。
驚くことに、ここイタリアではこの類のビスケットはおやつ用としてではなく、多くの場合が朝食用として売られているのです。
我が家は主人たっての望みを叶えてあげるべく常備物としてビスケットは複数種類ありますが、通常の家庭でも1,2種類のビスケットは朝食用として常備されているのが常識。
そして、その食べ方も驚くことに”飲み物に浸して食べる”という一見すると、とても行儀が悪く感じてしまうもの。
ビスケットやクッキーはサクサク感が楽しく、美味しいものという認識を覆す行為で、最初にその行動を見たときは本当に驚いたものです。
小さな食パンはと言うと、厚さ1cm程度でジャムやクリームを塗りたくり、なんとそれもそのまま飲み物に浸してから戴きます。
写真でも見て取れますが、紅茶が入ったカップの飲み口がとても大きいですよね。
そう、これはビスケットやパンを浸すために、この大きさが必要になるのです。

この「甘い朝ごはん」スタイルはいつ頃からイタリアで始まって定着したのか、と言うと、何でも第一次世界大戦の軍隊の朝食が牛乳とビスケットを食べるものだったからだとか。
それまでは、固くなったパンやとうもろこしの粉や、サラミやチーズ等を摂るのが主流で、まさに畑仕事に従事するお百姓さんたちにとって、体力づくりに重要なプロテイン補給がメインだったことが伺えます。
「より良く仕事をするためには脳に糖分が必要だ」という大義名分を持って、現在のこの甘い朝食が市民権を得ていますが、最近ではサラダやシリアルなどといった健康的な朝食を好む若い世代が増えてきているのも事実です。

朝ごはんはBar(バール)で楽しむのも主流

いろいろな種類のブリオッシュ(クロワッサン)からパニーニまで並ぶ、BarのBancoの朝

自宅で朝ごはんを取る人が多い日本ですが、イタリアではかなり多くの人が自宅近所のBarや、通勤途中のBarで朝食を取ります。
イタリアの街にはどれだけ鄙びた小さな街でも必ず1軒はBarがあると言えるくらい、街には数多くのBarが存在します。
BarとはBanco(バンコ)と呼ばれるカウンターが有り、基本立ち飲みスタンドタイプのコーヒーショップとでも言いましょうか。
ウェイターたちは、Bancoの内側で飲み物を用意したりせわしなく動き回り、私達お客は外側で飲食をします。立ち飲みスタイルが基本ですが、椅子やテーブルを備えているお店もありますし、また多くのBarでは数種類の新聞が備え付けてあり、短い時間でサッと目を通したりするのにはとても便利なです。
ちなみにツーリストが多い都市圏のBarでは、着席すると料金がアップするのが普通ですのでお気をつけて。

オーソドックスなメニューはこちら


朝のBarで大半の人が選ぶのが、ジャムやクリーム入りのブリオッシュ(クロワッサン)とカップチーノのセット。カップチーノとはエスプレッソコーヒーに泡立てた牛乳を加えたもので、ジャム入りのブリオッシュと言っても、日本の様に「どこに入っているのか気づかなかった」などという事は無く、どちらかと言うとジャムそのものを食べているのではないかと錯覚に陥るほどの大量なジャムが使われています。
Barでも、もちろん、ブリオッシュをむんずと掴みずっぽりとカプチーノに漬け込んでから食べます。そして最後にカップに残る牛乳の泡はスプーンで掬って残さず食べるのがイタリア流。

Barには出勤前にさっと立ち寄る人や、仕事の休憩時間にやってくる人など様々ですが、店員さんから渡された紙ナプキンにくるまれたブリオッシュを立ちながら頬張っていると、俄にイタリア気分が盛り上がること請け合いです。
朝ごはんに対応するために、5時や6時といった早朝から店を開けているところもあり、イタリア人からたまに見える「真面目さ」を見て取ることもできます。
イタリアにいらした際は、ぜひ、朝のBarに足を向けられて、「Un Brioche e un cappuccino per favore(ウン ブリオッシュ エ ウン カップチーノ ペル ファヴォーレ):ブリオッシュとカプチーノをお願い 」とオーダーし、イタリア気分に浸られてられてはいかがでしょうか?


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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