旬の野菜、 Italia編をお届けします
毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。
日本の料理とはひと味違った、イタリア料理での旬の野菜の楽しみ方を、ぜひお試しください。
併せて、その料理にあうワインもソムリエより紹介いただいています。イタリア料理とワインをセットでお楽しみください。
「とうもろこし」イタリアでは粉状のものを料理に使う
トウモロコシをヨーロッパに初めてもたらしたのは、かの有名な探検家“クリストファー・コロンブス”、時にして1493年にまで遡ります。その後、16世紀初頭にはフランス、イタリアへと伝わり、栽培が始まりました。
当初は栽培されたほとんどは家畜飼料として利用されていました。その後、農家の人々が自分たちの食用として多く栽培するようになり、18世紀にはイタリア北部のポー川沿岸を中心に麦をはじめとする穀物類の畑がとうもろこし畑へと転換され、本格的にトウモロコシが栽培されるようになりました。
トウモロコシは、イタリアでの名称は学名のZen Maysが由来の『Mais / マイス』。そしてもう一つ『Grano Turco/グラノ トルコ』という呼び名もあります。これは『トルコの小麦』という意味になり、最初の大規模栽培はトルコで始まったことからの命名だとか。ヨーロッパ大陸での事象の伝播の仕方が見えて面白いですよね。
さて、先にも書いたように、トウモロコシは農家の人々の主食品としての地位を得たことによって、イタリアではよく知られる野菜の一つになりました。
ただ、現在でも、どちらかというと、そのトウモロコシの姿をそのまま食べるよりも、先人たちが食していたように“粉状”にしたものを食べる方が馴染み深いように感じます。
今月のお題がトウモロコに決まった際に、私がまず思ったことは「トウモロコシってイタリアに来てから食べてないな」でした。実際、レシピを探してみても、これぞイタリア料理!というようなトウモロコシ料理は見つからず。ですので、今回は、トウモロコシを使ったイタリアらしい一品ということで、この17、18世紀から食べ続けられている“粉状のトウモロコシ”『ポレンタ』を使ったお料理をご紹介します。
お料理は「Insalata estiva con Polenta fritta /揚げポレンタの夏サラダ」
ポレンタとは写真にある様な形状で、かなり粗目の小麦粉とでも言いましょうか。このオーソドックスないただき方は、まずポレンタをお湯で溶いた上で煮詰め、モタっとした硬さにし、そこにお肉や魚をベースにしたソースをかけたものになります。
寒い時期によく食べられるお料理で、実際、私のパートナー家族ではクリスマスの定番料理のひとつ。あくまでもポレンタは主役ではなく、和食で言う1膳のごはん的な位置づけになります。
さて、ただいま、季節は夏。あつあつのソースをかけたポレンタよりも、より夏らしく、色合いが綺麗なサラダ仕立てにしてみました。ポレンタの食べ方は、先に挙げているように柔らかい状態でいただく場合と、すこし硬めに仕上げたものをグリルして焼き目を付けていただく場合があります。
今回は、その二つの方法ではなく、ワインとの組み合わせも考え、あえて揚げポレンタを用意してみました。トウモロコシの独特の甘みをとじこめ、外側をパリパリに仕上げたキューブ状の揚げポレンタに、新鮮なバジルの爽やかな香りと、レモンのすっきりした酸味。お子様でもパクパクいただけちゃう、イタリアらしい素材を使ったちょっと珍しい逸品です。
・材料
4人分(主菜の付け合わせとしての分量)
ポレンタ 100g
バター 5g
塩(ポレンタ用) 小さじ1/2
プチトマト 10個
バジル 10枚
黒オリーブ(種なし) 5~6個
モッツァレラチーズ 1つ(100g)
オレガノ 適量
エクストラヴァージンオリーヴオイル 適量
レモン汁 大さじ1
塩 適量
こしょう 適量
-揚げ用-
卵 1個
小麦粉 適量
パン粉 適量
揚げ油 適量
・つくり方
1. 500㏄のお水に小さじ1/2の塩を入れ沸騰させます。火を弱火にし、ポレンタを少しずつ入れてよく混ぜます。
2. 1を煮詰め、モタっとなった段階で火を止めます。(ポレンタのパッケージにある分数に従って作ってください) 暖かい段階でパッドに流し込み、1.5cmの高さで整え冷まします。
3. プチトマト、黒オリーブ、バジル、モッツァレラチーズを適当な大きさに切り、ボウルに入れ、塩、こしょう、オレガノ、エクストラヴァージンオリーブオイル、レモン汁で味付けします。
4.冷めて固まったポレンタを1.5cm角に切り分けます。小麦粉、卵、パン粉の順番で衣付けし200℃の油で揚げます。表面が色づいたら油からあげ、キッチンペーパーなどで余分な油を取ります。
5.揚げたてのポレンタに、3でできたソースをからめてできあがり。
あわせたワイン
原産地:イタリア マルケ州
ワインの名前 : Verdicchio dei Castelli di Jesi Classico
ワインの種類 :DOC Verdicchio dei Castelli di Jesi
生産者 : Azienda Agricola Orlando Olivetti
アルコール度 :14.5%
年度 :2016 年
マルケ州の土着品種の白ブドウVerdicchio(ヴェルディッキオ)は、今やイタリアを代表するブドウ品種の一つと言っても過言ではありません。特徴は赤ワインを彷彿させるようなポテンシャルの高さ。アルコール度数が高めで醸造されることが多く、その味わいは深く、重たい酸味、塩気を感じるミネラル感などが楽しめます。Jesiエリアで造られるワインは早飲みタイプが多く、Matelica エリアで造られる”Verdicchio di Matelica”では熟成タイプも多くなります。
・生産者の紹介
1980年代にワイナリーとして操業を開始。モッロダアルバ地区に12ヘクタールの畑を有し、マルケ州の土着品種である白ブドウ、Verdicchio :ヴェルディッキオと、同じく土着品種の赤ぶどう:La Crima:ラクリマを栽培しています。彼らのワインの美味しさに魅了された地元の人達がこぞって買いに来る名カンティーナの一つ。地元近くのお店でも販売しているところは少なく、日本からも輸入の引き合いはくるものの、いまだに海外への輸出は検討していないとか。因みに、私がマルケ州に来て、美味しさに驚いたワインがこちらのカンティーナのワインです。
・アビナメント
2016年に収穫したブドウで醸造したワイン。まだ少し若い感じがありグラス内には細かい気泡もすこし見られます。そのためかグレープフルーツの様なちょっと苦みのある酸味と、塩気を感じる辛さが特徴的で、かなりやんちゃさが残る印象です。(秋になるころに飲めばまた落ち着いた味わいになっていると思います) カラっとあがったポレンタのアツアツ感と、口の中にひろがる甘さが、ワインの酸味と綺麗に合わさり、またバジルの香りが、涼やかな味わいにとてもよく合います。
参考:https://it.wikipedia.org/wiki/Zea_mays
文・写真/Atsuko Niwa