旬の野菜、 Italia編をお届けします
毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。
ご紹介するイタリア料理は、日本人の口にあうように一工夫されています。
日本の料理とはひと味違った、旬の野菜の楽しみ方をぜひお試しください。
併せて、ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインをセットでお楽しみください。
イタリアで白ネギは下仁田ネギにも見まがう様な立派なタイプ
子供の頃、においの強い野菜が苦手でピーマン、ニンジン、セロリなどが食べられず、ネギ類も嫌いな野菜の一つでした。これが不思議なことに、年齢を重ねるうちに徐々に偏食の幅が狭まり、今では大抵のものは食べられるようになってきました。ただ、美味しいと感じるほどまでにはなかなかなれず、大人として恥ずかしくないよう残さず食べることができるようになった程度。しかしながら、今回のテーマ野菜「白ネギ」は、塩のみで炙った下仁田ネギを日本で頂戴して以来、大好物のひとつとなった私にとってはメモリアルなの野菜の一つです。
そんな私話しはさておき、イタリアで白ネギはPorro(ポロ)と呼ばれています。
日本では一般的にはリーキと呼ばれているものになりますが、たまにポロ葱という表記も見かけることがあるのではないでしょうか。
西日本でよく見かける葉の部分がほとんどの細ネギで細長い細ネギタイプではなく、それこそ下仁田ネギにも見まがう様な立派な白ネギタイプになります。
ポロ葱を使ったレシピの多くは、この白い部分のみを利用したものになりスープやソース系にしているものをよく見かけます。
スーパーの店頭では写真の様に白い部分だけをきれいに切り分けて販売されていることがほとんどですが、葉の部分を違う料理に使いたかったため、あえて緑が多く残ったものを購入しました。
お料理は「Braciole di Lombo con Porro 豚ロース肉のソテー ポロ葱添え」
今日ご紹介するメニューは、かるく煮込むだけで甘くとろけるような味わいになるポロ葱の性質を利用した、わたしのオリジナルレシピになります。
ご紹介したいワインが赤で、スパイス感と適度なボディがあることも考慮し、使うお肉には味わいがしっかりとした豚ロース肉を用意しました。
お料理自体はとても簡単でシンプルですが、秘密兵器としてマルケ州でSapa(他州ではSaba)と呼ばれる天然の甘口調味料を使っています。(最下部写真)
Sapaとは、ぶどう果汁を長時間煮込んで作られる凝縮したモストのこと。アイスクリームのソースとして使うのが一番簡単な食べ方ですが、お肉やお野菜料理の味付けやコクを出すためにもつかわれます。イメージは酸っぱくないバルサミコ酢です。 天然の果汁のみを利用しているので、安全で自然の旨味をお料理に取り入れることができます。
・材料(二人分)
豚ロース肉 350g
ポロ葱 1本
Sapa 大匙1
赤ワイン 大匙2 ※
バター 15g
エキストラバージンオリーブオイル 大匙1
ローズマリー 適量
塩 適量
黒胡椒 適量
※赤ワインは料理用ではなく、今回アッビナメントするワインを使用
・つくり方
1. ロース肉を軽く棒でたたき、塩と黒胡椒をまぶし下味をつけます。
2. フライパンにバターを入れ、溶けたところにローズマリーとオリーブオイルを加え温めます。
3. 2のフライパンにロース肉を重ならないように入れ、裏表を2,3分でこんがりと焼き、赤ワインを加えます。
4. 厚さ5㎜程度の輪切りにしたポロ葱をお肉の上にかぶせる様に入れ、その上からSapaをふりかけ軽く塩をします。
5. フライパンに蓋をし、弱火で5分ほど蒸らしながら焼き、その後ポロ葱の上にロース肉をのせかえ、もう一度3分ほど蒸し焼きにします。
6 . ポロ葱が良い具合にしんなりしたら出来上がり。
あわせたワイン
原産地: イタリア トレンティーノアルトアディジエ州
ワインの名前: TEROLDEGO ROTALIANO 2013
ワインの種類: DOC TEROLDEGO ROTALIANO
生産者: De Vescovi Ulzbach
アルコール度: 13%
年度: 2013 年
トレンティーノアルトアディジエ州はイタリアで最も北部に位置し、オーストリアやスイスと国境を接しており異国の文化を色濃く感じるエリアです。
標高も高いことからイタリアの他地域では生産が難しいようなブドウ品種が数多く生産されています。
今回のワインはTEROLDEGO(テロルデゴ)という土着品種。
黒スグリや熟しきったブルーベリーといった森のフルーツの香り、またハーブや重さを少しだけ感じるヴァニラのヒント。
味わいはなめらかな酸味、バルサミコ酢、スパイスなどととても豊かです。10ヶ月の樽熟成が施されており、丸みはすこし感じるものいきいきとした骨格を感じる素敵なワインです。
・生産者の紹介
古くからぶどうとリンゴの栽培を行うVescovi一族。一時期ワインの製造を止め、栽培したブドウを協同組合に販売していましたが、現在のオーナーであるジュリオ氏がワイン醸造学の学位を取得したことにより、2003年にワイン造りの伝統が復活しました。BIOおよびバイオダイナミクスによるブドウ栽培を行っており、生産本数も5万本弱。日本国内では恐らく現在取り扱いのない生産者になります。
・アッビナメント
ワインが持つバルサミコのような味わいと、Sapaの持つ独特な甘さが良くあります。また加熱したことでポロ葱の甘さが引き立つものの、もともと持つネギ独特の香りとワインが持つスパイス感が、そして、噛むたびに口に広がる豚肉の旨味とワインの程よいボディが驚くほどよく調和します。
・in addition
上に「(緑の)葉の部分を違う料理に…」と書きましたが、この緑の葉の部分、写真で見てわかるように横に平たい形状になります。
ネギというよりは、韮のような感じですよね。味わいも韮に似ているので「即席ニラチヂミ」を作りました。
細かく切った葉の部分と、小麦粉適量、卵、お水、だしの素をざっくりと混ぜます。 フライパンに油とゴマ油を少量ひき、そこに生地を薄く延ばし入れ片面に焦げ目をつけた後、ひっくり返しギュッギュっと生地を押し付けます。そのあとフライパンに蓋をして3分ほど弱火で蒸らし焼き。最後に焼き色を付けて出来上がりです。つけダレは唐辛子入りのレモン醤油、ばっちり合います!
写真左から:Sapa/Braciole di Lombo con Porro/即席ニラチヂミ
文・写真/Atsuko Niwa