旬の野菜でひとつきひとくぎり Italia編

「ジャガイモ」 イタリア料理編

旬の野菜、 Italia編をお届けします

毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。

ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインをセットでお楽しみください。

イタリアでも定番のジャガイモは、ニョッキや副菜に多用されるコスパの高い人気野菜

ここイタリアでジャガイモ料理と言えば、オリーブオイルとローズマリーなどの香草とともにオーブンで焼いて提供される副菜としてのオーブン焼きや、またプリモピアット(第一のお皿)として食されるニョッキなどがまず思い浮かびます。
どちらのメニューもイタリア料理店のメニューには必ず存在するものですので、イタリアでのジャガイモの利用率は高めであると言えるでしょう。
そして、ジャガイモは我が家の常備菜でもあり、底をつく前に必ず2kg程度のネット入りのものを購入しています。
価格にしておおよそ3€程度(約400円)でしょうか。コストパフォーマンスが高い食材ですよね。
南米のペルーやボリビアなどが原産国で、ヨーロッパ大陸には1570年にスペインへ伝来したのが始まりだそうです。

お料理は「Baccalà in umido con patate  バッカラとジャガイモの煮込み料理」

まずはバッカラをご紹介しましょう。
簡単に言うと塩鱈になります。日本でもお正月に保存食として加工された鱈、“棒鱈”が食べられますが、こちらヨーロッパでも鱈は保存がきく魚として扱われており、開いて内臓を取り天日干しをしたものが日常的に食されています。
干し鱈にもStoccafisso (スカッカフィッソ)と Baccalà (バッカラ) の二種類があり、前者は無塩、後者は有塩で加工されています。日本の棒鱈と違うところは、基本的に浸水し柔らかく戻した状態で販売されていること。ですので、購入してから何日も水につけこみ塩を抜き、柔らかくする必要はなく、すぐに調理することができます。

実は今回のお料理、バッカラではなくストッカフィッソを使いたかったのです。というのも、ストカフィッソ アンコネターノ:アンコーナ風ストカフィッソ という名の郷土料理がここアンコーナには存在しており、2年ほど前に初めて食べて衝撃を受けたのです。
主役であるストカフィッソの美味しさよりも、一緒に煮込まれているジャガイモの美味しさに! この味をわが町の郷土料理としてご紹介したかったにも関わらず、間違ってバッカラを購入してしまっておりました。

少しばかり塩がしっかりしてしまいましたが、美味しさは変わらずでした。
日本でならおそらく鱈の切り身で代替してお作りいただけると思います。Baccalàの切り身はこちらになります。
真っ白で身がほろほろとしているのが見て取れるのではないでしょうか?

・材料 (6人分)
バッカラ   6切れ 約800g
ジャガイモ  3個
ミニトマト  10個
オリーブ(緑色で種を取ったもの) 20個
白ワイン   1カップ
松の実    50g
玉ねぎ    1個
にんにく   ひとかけ
西洋パセリ  一束
ローズマリー 適量
エキストラバージンオリーブオイル 大匙4
塩 適量
赤唐辛子   適量

・つくり方
1. 玉ねぎ、にんにく、西洋パセリ、ローズマリーを細かくみじん切りにして合わせます。
2. 底が深めのフライパンにエキストラバージンオリーブを入れ熱し、1を入れて炒め、
香りが立ったところでバッカラを並べ入れます。
3. 白ワインを流しいれ、半分に切ったミニトマト、オリーブ、細かく刻んだ松の実も入れ蓋をし10分ほど
蒸し焼きにし、味わいをつけます。
4. 皮をむき一口サイズに切ったジャガイモと適量の赤唐辛子を加え、
ジャガイモが柔らかくなるまで蓋をして煮込みます。
5. 仕上げに塩を加え、味を調えて出来上がり。

あわせたワイン

原産地 :ドイツ モーゼル地方
ワインの名前:Wehlener Sonnenuhr Riesling Spätlese Trocken
生産者 :Weingut Kerpen
年度 :2013 年

ドイツのモーゼル川の中流部にあたるヴェーレンエリア、その中でも非常に評価の高いクリュで採れた遅摘みのリースリング種を利用して作られています。
リースリングはドイツやイタリア北部エリアで栽培されるブドウ品種の一つ。
ドイツの様な冷涼なエリアで醸造されたものでは、リンゴやそのほか木に熟する果実の香りとしっかりとした酸味が楽しめます。
また、このワインはシュペトレーゼという階級になり、あえて熟しきった遅摘みブドウを使っており、完熟したブドウのしっかりとした糖度を使い、芳醇な味わいを持つ辛口タイプ(トロッケン)に仕上げられています。

・生産者の紹介
モーゼル地域で約250年、8世代にわたってブドウ栽培、ワイン生産を行っています。
このエリアは世界最大の連続的なリースリング栽培地域で、代々と受け継いだ素晴らしい土壌と技術に加え、
新しく改革的なことも行っています。

・アッビナメント
お料理はかなりしっかりとした塩気と、魚が持つエキスを感じられるものですので、その味わいにつりあう奥行きのあるワインとして、リースリング種でもシュペトレーゼ(遅摘み)タイプのものを合わせてみました。
こちらのワインは2013年ヴィンテージ。
香りにはリンゴなどの果実感は、かなり熟れた感じに変わっており、またリースリング独特のぺトロール香(石油の様な香り)がかなりしっかりと感じられました。
料理自体の重さ、魚のちょっとした臭みなどは、このぺトロール香とまったりとした味わいがしっかりと合わさり、素晴らしいハーモニーを楽しむことができました。


文・写真/Atsuko Niwa


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

http://amaregiappone.com
https://www.facebook.com/amaregiappone.Atsuko.Niwa/

http://amaregiappone.com 記事一覧を見る

カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。

  • vol.3 高齢社会の実態-家族構成と一人暮らし-

    高齢社会の実態をデータから読み解く

    日本の高齢社会の実態を理解したうえで、高齢者の「整理収納」における課題を考えます。

  • vol.2 既往研究から探る -高齢者と住み替え-

    「高齢者」「住み替え」「モノの整理」に関する先行研究のまとめ

    高齢者の住み替えやモノの整理に関して、これまでの研究ではどのようなことに着目し、どのような結論を見出しているのでしょうか。過去の研究内容を分かりやすくまとめました。

  • vol.1 高齢社会における「整理収納」

    高齢期に向けた整理収納の課題とQOL向上のヒント

    暮らしにあふれるモノは、人生の節目ごとに見直しが必要です。高齢期には生前整理や遺品整理と向き合う場面も増えますが、自分らしく整えることが、安心と心地よい暮らしにつながります。

  • bitokurashiリニューアルのお知らせ

    みなさま、はじめまして。あるいはお久しぶりです。「bitokurashi.com」をご覧いただき、ありがとうございます。 2017年7月にスタートした「びとくらし」は、2025年9月に内容やコンセプトをリニューアルをさせ […]

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]