旬の野菜、 Italia編をお届けします
毎月お届けしている「旬の野菜で、ひとつき、ひとくぎり」は、和食で「小鉢」になる料理を紹介していますが、「Italia編」では、ワインとあわせたイタリア料理をお届けします。
ソムリエの資格もお持ちの彼女ならではの、料理にあうワインを紹介いただいています。イタリア料理とワインをセットでお楽しみください。
イタリアの地方都市に住むと歴然とわかる日本の流通網の凄さ
びとくらしさんとのお題目会議で「オクラ」を提案いただいたのは春の終わり。
我が家近隣にある十軒を超えるスーパーマーケットや八百屋さんで「オクラ」を見たことはなかったものの、いつもアジア食材を買い求める中華マーケットで売られているのを、丁度確認したばかりだったので「それでいきましょう!」と答えました。
ところがどっこい、その後、お店に再来してみるとオクラの姿は見当たらず。
イタリアに来て痛感することの一つに、日本で流通する野菜や果物の種類の豊富さがあります。
イタリア(私が住むのは地方都市です)は野菜の種類が驚くほど少なく、またその野菜の旬以外の季節にはあまり流通しません。
例えで言うと前回に使ったキュウリ。冬の季節に店頭に並んでいる姿を見たことはありません。
旬の野菜を戴くことは野菜を食べる上で最高の贅沢かと思いますが、日本で長く住んでいた私がイタリアの野菜売り場を見た時「こんなに種類が少ないと、毎日の料理が大変やわ」と戸惑ったものです。
しかしながら、その戸惑いはすぐに解消されました。というのもイタリア人の多くが、かなり単調な食生活を送っていたことを知ったからです。日本の多くの家庭では、お母さんたちはいろいろな食材を使い、様々な調理方法を組み合わせて、毎日の食にバリエーションを加えていると思います。和食、洋食、中華は、普通に自宅の食事として食べられるメニューだと思いますが、イタリアでは基本的に“イタリア料理”しか食卓に並びません。加えて前述の食材の少なさ。
どうしても食卓がワンパターンになってしまいがちなのは納得できますよね。ハレの日の料理は「おおおっ」と手の込んだものが振舞われますが、日常となると皆さんの想像をはるかに超えるシンプルな食事が主流になるというのが本当の生活なのだろうと思います。
オクラ不在のピンチピッターに現れたのは“Sedano Rapa”(日本語直訳で”セロリ蕪“)
残念ながらオクラを買い求めることができなかったので、日本で見慣れない変わった野菜を探しに八百屋さんとスーパーマーケットへ向かってみました。
今は夏。夏期は野菜の種類がとても少なくなります。店先に並んでいるのは数種のトマトとズッキーニ。
“この野菜をみなさんに紹介したい”と考えていた野菜も季節が終わってしまっていて手に入れられず、ようやく見つけたヘンテコ野菜がこのSedano Rapaでした。
Sedano Rapa は日本ではセロリアックと呼ばれセリ科の植物で、葉っぱも多く茂りますが、苦みがひどく食用にはならず、この根となる蕪の分のみを戴くようです。大きさは直径が20cm前後で、おそらく重さは平均的に1㎏程度。香りと味わいはセロリにそっくりで、歯触りは大きくなりすぎた牛蒡でした。恥ずかしながら今回が初購入で初食。いろいろなレシピを見てみたものの、メイン料理は決まっていたので、それに合う簡単な副菜メニューを選ばせていただきました。シンプルなだけに味わいがしっかり感じられました。ただ、セロリがあまり好きではない私にとっては「超美味しい!」というものではなかったですが、味わいがしっかりしているものの軽い触感ですので、ヘルシーな食事を心がける方に適したメニューとお勧めできます。
お料理は「Sedano rapa al forno con Bonarda frizzante セロリアックのオーブン焼きとボナルダフリッツァンテ」
・材料
セロリアック 1個 (重さは1㎏前後あります)
粉末パプリカ 適量
シーズニングスパイス 適量
パルミジャーノレッジャーノ 適量
エキストラバージンオリーブオイル 大匙2
・つくり方
1. セロリアックをよくみずで洗い、固い部分などを取り除きながら皮をむきます。
そして棒状に切り分けます。粘りがあるので包丁使いにご注意ください。切り分けた後、もう一度水洗いします。
2. 小さなボウルにパプリカパウダー、シーズニングスパイス、パルミジャーノレッジャーノチーズ、エキストラバージンオリーブオイルを入れ混ぜ合わし、そこにセロリアックも加えよくなじませます。オーブンを200度に温め始めます。
3. オーブンのパッドにオーブンシートを敷き、セロリアックを重ならないように広げ置いて200度のオーブンで15分焼きあげたら出来上がり。
あわせたワイン
ワインの名前:Bonarda Frizzante
生産者 :Bisio Devis
年度 :2016年
生産地 :イタリア ロンバルディア州オルトレポーパヴェーゼ
オルトレポーパヴェーゼは私にとってゆかりのあるエリアで、今までで3度ほど訪れたことがあります。北イタリアを縦断する形で流れるポー川、その川の向こう側のエリアという由来が名前にはあり、ポー川からの恩恵を受けた素晴らしいワインが数多く作られます。そのなかでも私を魅了するのがこのボナルダ フリッツァンテ。フリッツァンテなのでガス圧は低いですが、さわやかな飲み口で、ブドウ品種のクロアティナが持つタンニンの渋みもしっかりと後味で感じられ、面白い余韻を楽しんでいただけます。
・生産者の紹介
Montalto Paveseはオルトレポーパヴェーゼの丘にある小さな村。この村でBisio 家は3世代にわたって良質なワインを生産し提供しています。 有機農法(BIO)認定を受け、その原則に従い9ha の畑から数種類のワインを作り出し、 ブドウの植栽、選定、醸造に至るまで、ブドウの特性を生かしたワイン造りに真摯に取り組んでいるカンティーナの一つと言えるでしょう。。
・アッビナメント
メイン料理に合わせた選んだ今回のワインでしたが、意せずして、Sedano Rapa al fornoにもよく合いました。今日の気温は30度、しっかりとした暑さを感じる一日でしたので、お肉料理をメインにしたと雖も赤ワインのフェルモ(fermo :泡無しの普通のワイン)を合わせるとかなり重たく感じてしまいます。ということで、喉ごしが良く、ぐびぐびと飲めるこのフリッツァンテワイン。12.5°度とアルコール度は低めですが、泡の細やかさと香りの高さ、タンニンの渋みがうまく折りあっています。セロリアックに施したしっかりとしたシーズニングとパプリカの味わい、メイン料理の焼きあがったカラっと感が、このワインの存在感とうまく合わさっています。暑い夏の夕べにお肉を食べられる際は、ぜひとも赤もしくはロゼのスプマンテ、フリッツァンテをお試しください。