道具選び

包丁を選ぶ 2

前回は、「包丁を選ぶ1」として、和包丁と洋包丁の種類についてお伝えしました。

道具を選ぶ際、最終的に決めるための要素はデザインや重さ、握った感触などがありますが、使用するにあたってどのようにメンテナンスをするかということを理解した上で選ぶことが欠かせません。
包丁を繰り返し使うためには、「研ぐ」ということが大切ですね。
しかし、「研ぐ」ということはどういうことかを理解する前に、包丁がどのような仕組みかを理解しておく必要があります。

今回、「包丁」についてお話を伺わせていただいたのは、「三寿ゞ刃物製作所」の宮脇さんです。
「三寿ゞ刃物製作所」は、兵庫県三木市で400年培われた伝統的な製法を受け継ぐ包丁メーカーです。

そもそも、包丁はどのような構造なのか

一般的な和包丁は2種類の鉄が合わさってできています。

ひとつは食材を切る部分にあたる「鋼(はがね)」、そして鋼と合わせる地金部分の「軟鉄(なんてつ)」です。
鋼は炭と砂鉄でできたとても貴重な資源です。
日本は資源が豊富に無い国だったからこそ、この二種類を合わせる工法で貴重な鋼を必要量だけ使用し、この工法が生まれました。材料が少ない日本ならではの仕組みです。

軟鉄と呼ばれる柔らかく衝撃に強い鉄と、刃の部分に使う鋼を貼り合わせて作ります。断面を見ると、鋼の上に軟鉄がのっている二層構造になっています。

この二層構造がポイントです。
包丁をみたときに、刃の部分に線が入っている部分があるでしょう。それは模様ではなく、鉄が重なり合っている部分で刃境(はざかい)といいます。

包丁を研ぐことで、新しい刃が生まれます。
わかりやすく言うと、鉛筆が丸くなり書きづらくなってくると、深く鉛筆を削ります。
研ぎ専門の店では、鉛筆削りのように最適な鋭さに刃の形を整えます。
そこから、少し自分好みの使いやすさを加えることが自宅で行う研ぎ作業です。鉛筆も鋭すぎると書きづらいという方は少し先を丸めてから使用する方もいますね。それと同じです。
そして少し使って丸くなった程度であれば、自分で少し整えることもできますね。その日常的に補正する包丁研ぎがご家庭でできる研ぎです。
包丁は研げるだけずっと使用できます。お寿司屋さんの包丁はとても長いものが使用されています。それは魚の繊維がつぶれないように一度で切れるようにしているためです。そのような包丁も次第に短くなり、ペティナイフのようになります。

それは長年、研がれ続けてきた証です。

包丁はどのような工程でつくられているか

とても簡略的に説明すると、まずは包丁の材料が必要ですから、材料屋がいて、原型をつくる鍛冶屋、そして焼入れ(熱処理)、研ぎ屋、最後に仕上げと、全5つの工程を経て出来上がります。

(1) 鍛冶
包丁の形をつくります。
さきほどの話にもありました、二種類の鉄を合わせる作業です。
ここでは、炉で溶かした二つの金属をあわせ、ハンマーでたたき、合わせていき、一枚の板ができます。
そして包丁の形をつくり出していき、均一になるようにいくつもの工程を経て整形していきます。

(2) 焼入れ
しなやかで良い包丁にするために、熱処理を加えます。

(3) 研ぎ
ここまでの工程では、鉄のかたまりの状態です。ここから包丁が整えられ、刃になり、磨きがかけられていきます。
荒研ぎから少しずつ研ぎの目を細かくしていき、繰り返し研ぐ作業工程を重ね。包丁の命となる「刃」をつくりだします。

研ぎもそろそろ仕上げです。仕上げ砥のような非常に目の細かい砥石を使って、丁寧に包丁の刃を研ぎ上げます。刃のかえりが出るまできちんと研ぎ、裏面のかえりを取ったら、鋭い和包丁の切れ味は完成です。

(4) 仕上げ
そして、銘切(制作者やブランド名を彫り入れる)、柄付けをして、完成です。

修理やメンテナンスができる道具選び

包丁ひとつとっても、道具は修理やメンテナンスを繰り返しながら、長年使い込むことで、自分の手に馴染んできます。
馴染む前に簡単に買い替えるのではなく、長く使うことを前提に大切に選んで使いたいです。

よく手に馴染んだ道具は、使う人のクセが道具に反映されて、購入時よりも使い易くなっています。

そして、使って馴染んだ道具を修理やメンテナンスをしてくれる場所があることを、大切にしたいです。

前回の記事「包丁を選ぶ1


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