イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「復活祭」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

春のおとずれとやってくる復活祭の季節

季節も4月に入り、いよいよ春まっさかり。
私が住むエリアでは4月下旬から海沿いのエリアのお店が開きだし、
長くどんよりとした冬のうっぷんを晴らすかのように、街に住む人々はシーサイドライフを
「これでもか!」と楽しみ始めるようになります。
この季節にあるとても大切な宗教行事が、PASQUA:パスクアと呼ばれる復活祭です。
復活祭なんて、日本人の多くの方にとっては縁のないものだと思います。
しかしながらここイタリアでは、Natale(クリスマス)と並んでとても大切にされている行事の一つ。
読んで字のごとく、十字架にかけられ命を落とした主イエス・キリストがその三日後に復活したことをお祝いする、キリスト教においては最も重要なお祭り事なのです。

復活祭:パスクアを象徴するものはもちろん食べ物にも

卵の殻にペインティングや模様を施し、それを飾りとして使うイースターエッグ。
これも復活祭の象徴的なオーナメントの一つとしてよく知られています。
なぜ”卵”なのか?と言うと、殻を割って生まれ出てくる”生命”をより象徴していると捉えられているだとか。
この時期になると、イタリアでは卵の形をしたたくさんのグッズが売り出されます。
特によく目にするのが卵の形をしたチョコレート。

スーパーマーケットに並ぶパスクア用チョコレートの数々。

サイズは様々ですが、高さが30㎝程あるような特大サイズのものもあり、
2月の末頃からスーパーやお菓子屋さんの店頭に並び始めます。
この卵型のチョコレートの中身は空洞で、子供向けとして中に玩具が入っいるものもあります。

上:ピスタチオやアーモンドをまぶした卵型チョコレート。お値段もなかなか。 下:頃合いよくプレゼントしてもらった卵型チョコレートを割ってみたところ、懐かしい”カリメロ”のキャラクターが入っていました。

卵の形をしたチョコレートと肩を並べる、パスクア時期のお菓子の二大巨頭のもう一つとして
知られるのが「コロンバ」と呼ばれるケーキ菓子。
クリスマス時期に食べられるパネットーネやパンドーロと同様、日持ちする大きなお菓子タイプのパンなのですが、パスクアには「コロンバ:鳩」の形のものが主流になります。

これを見て「鳩の形だね」と言いあてることが出来る人はほとんどいないと思いますが、鳩なのです。

そしてパスクアに戴くメイン料理は「子羊」を使ったものになります。
Agnello(アニェッロ)と呼ばれ、Umido(ウミド)と呼ばれる煮込料理か、グリルタイプが主流。羊独特のくさみがあるので、私はもっぱらグリル派です。
そにしにても、なぜ子羊を食べるのでしょうか。
聖書の中に子羊はよく登場します。特に犠牲や純粋さの象徴として表現されています。
常に神への犠牲(生贄)として捧げられてきた子羊を、
パスクアでは現代も神への捧げものとして同様に戴くことが習慣として残っているようです。

みんなそれぞれのパスクアの過ごし方

パスクアはイタリアでとても大切な宗教行事の一つなのですが、
なんと毎年「日」が異なります。
そう、2018年は確か4月1日の日曜日でしたが、2019年は4月21日の日曜日。
パスクアの日がどのように決められているかというと、
「春分のあとの最初の満月の後の日曜日」。
日曜日であることは変わりないのですが、年によって日が異なるのはこのせいなのです。
パスクアの日曜日には、多くのレストランはパスクア専用のメニューを提供しているので、
外食をする人も多いですし、親兄弟や親戚など家族で集合して食事をとるという人も多いでしょう。

そして、パスクアの翌日はパスクエッタ(小さなパスクア)と呼ばれ、祝日になります。
この日はお友達などで連れ立って外でピクニックやBBQをするのが主流らしく、
去年もBBQが出来る大きな公園へ数家族と出かけ、一日中、外でのんびり過ごしました。

日本では馴染みの薄いパスクア、復活祭ですが、
ここイタリアでは季節の行事の一つとして大切にされています。
ただ、「食べること」がメインで、本来の宗教的な意味がどこまで重んじられている
のかははなはだ謎ではありますが…。
今年のパスクアはいよいよ来週末です。私にとってなんと5度目。
私のパスクアは実家で家族で食事、そしてパスクエッタはお友達とBBQというコース。
ですので、食べる量をしっかりと調整し体調を崩さないようにしないといけません。
ナターレもパスクアも私にとっては”食べろ”攻撃との戦いです。
今年のパスクアこそ勝利をおさめたいと思います。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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