イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「マンモーネと家族の形」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

相対的に家族同士の距離が近いイタリア

EU内で経済状況が芳しくない国第3位のイタリア。
意外とこの事実を知らない方も多いのではないでしょうか。
有名な観光地が数多くあり、多くのハイブランドを輩出している事実から、
漠然と「イタリアは裕福だ」というイメージが付いているのかもしれませんが、
リアルな統計から見ると、イタリアは決して経済的に裕福な国ではありません。
失業率も高く、殊に学校を卒業したばかりの若い世代の人たちが職に就くことが難しく、
18歳から24歳の若者においては25%がニート(無就学・無就業)という結果※あるほどです。
イタリアでのお金の話や経済問題についてはまた別の機会で取り上げるとして、
この経済状況の悪さが子供の自立を遅らせる大きな要因となり、
親子同居の長期化につながっていると予想に易いですが、
そもそも親と子供、兄弟や親戚同士の距離と関係性がとても近く密なことが、
イタリア家族の大きな特徴に感じられます。
ここで暮らすと、日本では希薄になってきている家族同士のつながりや団結感を
身近に感じる出来事に数多く出会うことができます。

インターネット検索も凌駕する”マンモーネ”の信頼度

イタリア男性のステレオタイプを紹介する言葉に”マンモーネ”があります。
これは「マンマっ子」を意味し、あまり良いニュアンスでは使われません。
イタリアのすべての男性が”マンモーネ”というわけではありませんが、
かなり高い割合で存在することは間違いなく、私の周りを見渡しても、
マンモーネでは無い男性はいないと言っても過言ではありません。
結婚し新しい家庭を持っている男性であっても、母親と連絡を取り合っている人は少なくないですし、週に一、二度は実家でマンマの手料理を食べに行くことも当たり前。
新しい二人の住まいも実家からスープの冷めない距離で、なんてこともよく見られる光景です。
ここまで書いてみて、私たち夫婦の事を振り返ってみますと、
主人が新しく購入した住まいは実家から歩いて15分ほどの距離で、
2~3日に1度は「あんたたち、全然、連絡してこないわね!」と義母から電話がかかってくる、
そして大体の日曜日のお昼ご飯は、両親宅でご相伴に預かっているという状況です。
日本人の目から見ると「すごい!親とべったりだ!!」と思わそうですね。
でも、我が家くらいが母親と息子の平均的な関係性であるような気がします。
「毎日必ず電話連絡」「アイロンがけはマンマの仕事」「食事も寝るのもマンマの元で」なんて、
びっくりする様な既婚マンモーネもたくさん存在していますから。
恐らくイタリア人女性の中にはこのマンモーネを面白くなく感じる人も多いことでしょう。
もちろん私も最初は面食らいました。
だって、生活においての判断の基準が「マンマ」ですから。
イタリアで生活しだした当初はわかならいことばかりで、彼(今の主人)に質問しようものなら、
答えは「わからないから、マンマに聞いてみて」。
今の時代、わからないことは”Siri”や”Google先生”に聞くことが当たり前なのに、
マンマがまだ彼の判断基準を掌握しているのかと思うと
「えらい人の元にやって来てしまったものだ」と、前途多難に感じたものです。

慣れると意外と心地よいイタリア家族のスタイル

度の過ぎる”マンモーネ”はちょっと問題ですが、
子供の男女の性を問わず、日を置かずに親と連絡を取りあい、
週末は家族で食卓を囲み、誕生日や記念日にあっては家族総出でパーティを企画する、
この家族のスタイルは慣れてくると、なかなか気持ちが良いモノに変わってきます。
なんと言っても便利。
両親の健康状態はもちろん、友達関係や細かいことも常に把握できますし、
子供世帯の多くは共働きがほとんどですので、
日本のように学童保育などが充実していないここでは、
自然と孫たちの面倒は祖父母世帯がみるケースが多くなります。
家も近所にあって、連絡を取り合っている習慣がもともとあるので、
祖父母の家が第二の保育園に変わることも非常にスムーズ。
私の住むマンションには祖父母世代のご夫婦が数組住んでいますが、
お昼ご飯後にはその孫たちの声がよく響いてくるものです。

逆に日本での親子関係はなぜこんなに希薄になったのでしょう。
社会に出て一人暮らしを始めたり、結婚して家を出ると、
実家に戻る機会なんて一年で盆と正月ではないでしょうか?
今は携帯電話があるので、メッセージのやりとりはたまにしているかも知れませんが、
電話をかけるなんてことは用事がある時くらいしかないですよね。
目上の人や両親を大事にする、という思想がある国なのに、
この新しい家族を持つと核家族化に拍車がかかることがとても不思議です。

あと、面白いことですが、両親と子供の関係性は密であるにもかかわらず、
日本のように結婚後に親と同居をするというケースは非常に少なく、
連れ合いに先立たれた高齢な親がいたとしても、住まいは別にしている人たちが殆どです。
いわゆる嫁や婿が舅姑が完全同居をしてキッチンやバスルームを共有してる家族を
私自身はまだ見たことがありません。
(地方やエリアによって違いはあるかも知れませんのであしからず)
精神的には強くつながり合う親子ですが、
新しい家庭を持つと、実情はどうであれ物理的には線を引いて、
否が応でもある程度の距離を取るようにしていることから見て、
子供を自分の付属物として考えず、個として尊重している様に思えます。

”マンモーネ”化で詐欺の撲滅も可能に?

さて、この親子の距離が非常に近い家族の関係で「なるほどな」と感心したことが一つあります。
それは日本で横行している”オレオレ詐欺”が存在しないこと。
日をあけずして近況報告をしあっている親子が多いですから、
「オレオレ!マンマ、今日、仕事で大きな損失を出しちゃった」なんて電話なんてしようものなら、
「あんた!さっき話したとこじゃないの」となることが目に見えていますよね。
”オレオレ詐欺”の類いがまだまだ無くならない日本では、
イタリア男性を倣った”マンモーネ”を啓蒙するべきではないでしょうか?
そうすれば、家族関係の希薄さを狙ったような姑息な詐欺が一網打尽できること間違いなし。

※部は以下のサイトを参照しました https://www.panorama.it/economia/lavoro/occupazione-perche-giovani-non-trovano-lavoro/

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Atsuko Niwa

イタリア在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳、日本語教師なども徐々に行っています。

出版広告業界を経て、その後15年弱、不動産業界の広報・採用業務に携わる。40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアに興味を持ったのは、様々な種類があり個性豊かなイタリアワインをよく飲む中で、イタリアワインについているエチケットが自分で読めたら、もっとワインを愉しめるのではないかと思いイタリア語を習い始めたのがきっかけ。 その後、3ヶ月間イタリア旅行へ行き、アモーレと出会い、41歳の冬にイタリアに渡り、現在に至ります。

AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

http://amaregiappone.com

https://www.facebook.com/amaregiappone.Atsuko.Niwa/

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