イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「ヴァカンスに行くということ」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

季節はうつりかわるもの

9月に入り1週間が過ぎようとしています。
6月からの記録的な暑さもようやくなりをひそめ、涼やかな季節の到来を感じるようになりました。
そう、今年の夏が終わります。
秋から冬にかけては、寒さがつらいというよりも、
日照時間がとても短くなる上に、太陽が雲に隠れたすっきりしない天気が続くため、
街全体がどんよりと重たい空気につつまれ、人々も心なしか寂しげに見えるようになります。
そのためか冬は厭われがちで、
夏が終わるその瞬間から、次の夏の到来だけを楽しみにしていると言っても過言でない人も少なくありません。
この時ばかりは、リンと澄んだ空気がはりつめる日本の美しい冬の日が恋しくなります。

朝一番から照り付けていた強い日差しもかなり柔らかく

ヴァカンス”は夏の最重要事項

夏にほとんどのイタリア人にとって、とても大切な行事があります、
それは”ヴァカンスをすること”。
学校の休みが6月中旬から9月中旬と3か月に及ぶ中、
仕事を持つ大人の夏休みはどのようなものなのかと言いますと、
私の知り合い達を見てみると、大体、2週間から3週間程度の休みを取っています。
子供たちの休みにあわせて、夫婦で相談して2度以上に分けて取る人もいますし、
多くの人は長期で休みを取り、その期間に「ヴァカンス」へと出かけていくのです。
日本ではお盆時期の数日に皆が集中して取得しなくてはいけないため、
このハイシーズンに「ヴァカンス」へ行くことも難しい状態ですが、
こちらでは幅を持たすことが出来るので、長期で分散して出かけることもさほど難しくないのです。

どこに出かけるのか、ヴァカンスと言えば、海か山。
海ならば、プーリア州やシチリア島、サルディーニャ島、
山ならば、ドロミテ渓谷やシャモニー、クールマイヨールなどのモンブランエリアなど、
人気のヴァカンスエリアが沢山あります。
期間で言うと短くて1週間。
今回の夏、私達も3泊だけの「ヴァカンス」を2度したのですが、周りのイタリア人たちには短すぎる!と驚かれたものです。

休暇を取る機会が多いことについて日本との差に驚き、主人にその驚きを伝えたところ、
会社に「給料を上げろ」と要求しても実現されず、代わりに休暇を増やしてくれるのだとか。
休暇だらけにならないように気を付けておく必要がありそうです。

ヴァカンスの必要性とは

アンコーナ ヌマーナエリア。イタリア国内はもとより、全世界からツーリストがヴァカンスを楽しみにやってくる

さて、夏のヴァカンス時期が近づいてくるとこの言葉をよく聞きます。
「あぁぁ!そろそろヴァカンスに行かないと、もう身体が持たないわ!」。
初めてこの言葉を聞いた時、くすっと心の中で笑ってしまいました。
いや、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたと思います。
「え?そんなに大変に毎日を過ごしていたっけ?」と。
おそらく、ヴァカンスをするための正当な理由が必要なのでしょう。
日常生活だけを送っている人間にとって、非日常なヴァカンスは無くてはならないものです。

そして、このヴァカンスへ行くという事実を、周りの人に見せつけ、知らしめる必要性がとても高いように感じてなりません。
とにかく、夏の間の会話のきっかけは「どこにヴァカンスに行くの?」です。
人から称賛されるような素敵なヴァカンスを披露したいという願いを持っている人は多く、
他人から羨ましがられたい、格好悪いところは見せられない、という見栄っ張りなイタリア人らしい特徴ですよね。

また、ヴァカンスを実現するためにかなり無理な出費をしている人たち少なからずいるとも簡単に想像できます。
インターネットで検索すると、簡単に旅行用のローンサイトを見つけることもできます。
一瞬の快楽の後に長期に及ぶ労苦が待っていると思うと、今はとりあえずヴァカンスは我慢しよう、と私なら考えてしまいますが、
とにかく楽しむ!楽しんだ後なら、ちょっとくらいの労苦はへっちゃらさ!と考えられる彼らの思考回路が心の底から羨ましいと感じる今日この頃です。


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

http://amaregiappone.com
https://www.facebook.com/amaregiappone.Atsuko.Niwa/

http://amaregiappone.com 記事一覧を見る

カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。

  • vol.3 高齢社会の実態-家族構成と一人暮らし-

    高齢社会の実態をデータから読み解く

    日本の高齢社会の実態を理解したうえで、高齢者の「整理収納」における課題を考えます。

  • vol.2 既往研究から探る -高齢者と住み替え-

    「高齢者」「住み替え」「モノの整理」に関する先行研究のまとめ

    高齢者の住み替えやモノの整理に関して、これまでの研究ではどのようなことに着目し、どのような結論を見出しているのでしょうか。過去の研究内容を分かりやすくまとめました。

  • vol.1 高齢社会における「整理収納」

    高齢期に向けた整理収納の課題とQOL向上のヒント

    暮らしにあふれるモノは、人生の節目ごとに見直しが必要です。高齢期には生前整理や遺品整理と向き合う場面も増えますが、自分らしく整えることが、安心と心地よい暮らしにつながります。

  • bitokurashiリニューアルのお知らせ

    みなさま、はじめまして。あるいはお久しぶりです。「bitokurashi.com」をご覧いただき、ありがとうございます。 2017年7月にスタートした「びとくらし」は、2025年9月に内容やコンセプトをリニューアルをさせ […]

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]