イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「人間らしいリズム」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

昼下がりにお店が開いていない

「イタリア人はあまり働かない」と思われている方は多いのではないでしょうか。
このステレオタイプなイメージが生まれる原因の一つとして、
「昼休みが日本に比べて長い」という彼らの時間の使い方があると考えます。
日本から旅行に来た際、”商店がお昼すぎから夕方前までクローズする” ことに憤り、
”レストラン等が日本に比べて圧倒的に時間限定でしかオープンしていない” ことに戸惑われた方、多いと思います。
日本と同じ感覚で旅程を組まれていると、予定が散々狂ってしまう大惨事になりかねませんよね。
もちろん私もこの時間の流れの差には泣かされました。
「ここの店なら開いているはず」という期待を何度裏切られ、出戻りを食らわされたことか…。
目的を達成できなかった無念さと、一旦帰宅してまた出かけなくてはいけないという無念さで、
本当に自分自身を情けなく思ったこと、またイタリアのこのシステムを憎んだことも何度もありました。
わざわざ帰宅せずに開くのを待っていたらいいのでは?とお思いかも知れませんが、
もちろん、簡単にお茶をできるバールなども含めて、
多くのお店も同様に閉店しているので、約3~4時間もの時間をつぶすことができないのです。
開いている本屋も無ければ、基本的に郊外型として店を備えるマクドナルドの様な便利なファーストフード店は街中にはありませんから。

イタリアでもシエスタ?

まるで駐車場かのように並ぶ車たち

よく「イタリア人、シエスタするよね」とも言われます。
そもそもこのシエスタ(Siesta)はスペインで使われる言葉で、
ラテン語を由来としますが、イタリアではシエスタという言葉は使われません。
このシエスタ、昼食後に取るお昼寝時間をさすもので、時間の頃合いは13時から16時ころまでだとか。
「どれだけ怠けているんだ!」と思う方もいらっしゃると思いますが、
この時間設定は昼寝がしたい、とか、仕事がしたくないからという理由ではなく、
昼下がりの強い日差しを受けることなく、効率よく仕事を行う為の仕組みです。
もちろんその分朝は早く、また夕方は遅くまで仕事をするのが常です。

イタリアでもスペイン同様、シエスタとは呼ばずとも、
昼休みが13時から15時など、2時間程度確保されている企業は多くあります。
工場などはおそらく長めの昼休み設定の場合が多いのではないでしょうか。
あとスーパーマーケットを含む商店も、長めの昼休みを取っています。
さて、こんなに長い昼休みを一体どのように過ごしているのか不思議になると思いますが、
地方都市は特に「職住近接」者の割合が高く、多くの人が自宅に戻って食事をとっています。
住宅街である我が家近所も、13時頃には路上駐車が一気に増え、
14時を過ぎるころには続々と職場に戻り始め、再び道路はガランとした状態になります。
自宅で食べた方が美味しい食事にありつける、ということと、経済的な理由も大きな一因にあるかと思います。
そして、もちろんスペインと同様、昼休みが長い分、終業時刻が変わってきます。
例えば、8時半に出社し、13時から2時間の休憩をはさみ、15時から18時半まで就業、といった感じです。
1週間の労働時間は40時間と規定されているので、日本と同じ1日8時間労働が基本になっています。
時間外労働については、労働者の権利がかなりしっかりと守られている様で、
日本のような超残業はあまり聞いたことはありませんが、必要なときは残業までして、
自分の職務を全うしているイタリア人も多く存在しています。
当たり前と言えば当たり前なのですが、目の当たりにするとちょっと驚きますよ。

怠けではなく理にかなった彼らのリズム

イタリアの人々が日本人がイメージしているよりも、ちゃんと働いているということがご理解いただけたでしょうか?
あくまでも、「イメージしているよりも」ですが。
彼らの仕事の質に関しては、また別の機会にお話しましょう。

さて、長い昼休みの話しに関してですが、
最初はとても不自由に感じたものの、これはこれで人間の身体のリズムにとても理にかなったものなのではないか、と思えてきだしました。
イタリアの食事は日本の食事に比べるとボリュームも多く、重いため。
そんなものを食べた後に必要なのは食事を消化する時間です。
消化もせず仕事を始めてしまうと、眠気、だるさ、やる気の無さが出てきてしまうでしょう。
それに、なんと言っても「自宅に帰ってリラックスして食事ができる」ということも
コンビニで買ったサンドイッチを、仕事しながらオフィスでほおばらなければいけない
日本人(在りし日の私の姿です)に比べると、とても人間的な素敵なことだと思います。
そして、お店の休憩時間に関してですが、街にあるお店は殆どが個人商店。
お店にいる人は店主や仕事に出ていない家族のうちの誰れかで、
店員として他人を雇っていない場合も多くあり、お昼を食べる時間に代わりに店番をできる人が存在しないという状態になります。
ですので「お昼休みはしっかりと閉めてしまいましょう」となるのです。
どうでしょう、すごく理にかなっていると思いませんか?

人間の生活する時間を考えると、とても真っ当な考え方だと思います。
物質的な豊かさや、競争する原理にすっかり慣れてしまっていると、
ここでの人間的な時間の使い方を、真っ向から否定的にとらえてしまいがちです。
ここでの、不便なことが当たり前であるという現実は、時間に追われるのではなく、
時間に合わせて暮らしていく大切さを私に気付かさせてくれました。
とは言え、大型ショッピングセンターやファーストフードショップの進出など、
ここにもジョジョにアメリカ的な発展の様相が見えてきています。
便利すぎる国、日本から来た私ですが、
イタリアには、この人間らしい「不便さ」を絶対に無くしてほしくないと祈るばかりです。

主人のnonna(おばあちゃん)が用意してくれたお昼ごはんはお肉だらけ。


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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