イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「不便な暮らし」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

季節外れのヴァカンスで日本へ

ようやく秋らしい季節になってきました。
暑さが和らいでくると日の入りの時間が早くなり、今年は10月の終わりにサマータイムが終了しました。
それでも、17時ころには辺りはかなり暗くなり、すっと冬の夜の静けさを感じるようになります。
日本でも爽やかな気候となるこの時期。
暑さに弱いイタリア人の主人は好んで日本への渡航を計画します。ということで、今年は10月中旬から11月初旬までの2週間強を日本で過ごしてきました。
休暇を取ることに対して寛容なお国柄とは言え、同僚の皆が働いている時期に2週間以上ものヴァカンスが出来るなんて本当に素晴らしいことですよね。
日本の友人たちはそんな彼のヴァカンスに驚き、羨ましく思っていそうなものの、その反面「だからイタリアは…」と感じていたように思われます。
イタリア人を間近で見ていて言えることですが、この長いヴァカンスが彼らの労働生産性をUPさせていることは間違いないですので、ご心配には及ばずですよ。

快適すぎる日本の便利さ

さて、今回の日本の旅は私達夫婦2人だけではなく、途中、イタリアの親戚達とも合流しにぎやかな旅となりました。
日本語はもちろん英語もほとんど話せない彼らですので、ガイド役は必要不可欠ということで、私が旗振りをし、わがままでお喋りなイタリア人5人の旅をアテンドしたのですが、
最後は言葉を発する元気もなくなるほど疲れ切ったことは言うまでもありません。
日本はイタリアと違い、街には人と驚くほどのモノが溢れかえり、それらのモノを整理するかのごとく様々な情報や交通網が縦横無尽に存在しています。
街は美しく、ホテルやレストランでのサービスも素晴らしく、多くのお店や公共施設には清潔なお手洗いが設置されています。
彼らと旅を進めることによって、日本という国がホスピタリティとして人それぞれからのサービスや、機能としてのサービスが充実していることを深く感じることが出来ました。
また、インターネットで食べたいモノや買いたいモノを検索すれば、何十ものお店がヒットし、どこか目的地へいくためのルートを探せば、色々な選択肢に巡り合うことが出来ます。
モノやサービスの中から最良のものを選ぶ行為というのは、皆が持つ能力ではなく多くの日本人は生活をする上で自然に培われた技能として有していることを実感した次第です。

あえて不便が暮らしやすい

東京での地下鉄の充実ぶりは周知のことかと思いますが、あの地下鉄を使いこなせるようになるには一体どのくらいの期間がかかるのでしょうか。
今回、大阪や京都で何度かJRや私鉄に乗る機会がありました。駅の券売機の多くはタッチパネル化し、イラストをふんだんに利用したグローバルデザインが採用されていました。
万人に理解しやすい工夫がなされていましたが、「お金で切符を一枚買う」というごくシンプルな購入行動を成し遂げる為に、様々な情報を理解する必要がありました。
支払いに関しても、現金だけではなく色々なカードの利用が可能ですが、なぜかクレジットカードには対応していなかったり。確かにかなり便利になっていますが、その過剰さに不便さすら感じることもしばしば。
世界的に有名な日本のトイレ機能の素晴らしさ。
あの高尚な洗浄システムを一人ぼっちの状態で初めて使いこなすことはなかなか難しいことでしょう。
お尻を洗うことは出来ても、水を流すレバーやボタンの在り処がわからないようです。
複数のイタリア人とともに久々の日本を過ごした私ですが、
物事をシステマティックに整備し、限られた時間を有効活用、その上他人に対しての思いやりを忘れない日本人基準の便利さは、受け取る側の訓練が必要であることを実感しました。

買い物に行く際も、選択肢が無いため目的の場所は必然的に決まり、
電車やバスが遅れたとしても、代替手段がふんだんにあるわけではなくだた待つのみ。
シャワートイレやお風呂の自動湯沸かし機能も無く、
多くの家庭には電子レンジが不在で、冷凍された食品は自然解凍で温めはコンロを使う。
時間や手間はかかるかも知れませんが、思考方法と行動パターンはとてもシンプル。
モノの量も少なく、いたれりつくせりなサービスも無いので選択に際して迷いが生じることはありません。

日本とイタリアのどちらが暮らしやすいか?とよく聞かれますが、
不便さを感じるイタリアでのシンプルな生活もなかなか良いものだなと思えるのは、
便利すぎる日本の生活に少し窮屈さを感じるほど、感覚がイタリア人化している証拠なのかも知れません。
イタリアを旅される際は、日本に比べてとても「不便である」ことを念頭に置いて、
ぜひこの不便さから生じる、時間のすき間や心の余裕を楽しまれてくださいね。


Atsuko Niwa

イタリア在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳、日本語教師なども徐々に行っています。

出版広告業界を経て、その後15年弱、不動産業界の広報・採用業務に携わる。40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアに興味を持ったのは、様々な種類があり個性豊かなイタリアワインをよく飲む中で、イタリアワインについているエチケットが自分で読めたら、もっとワインを愉しめるのではないかと思いイタリア語を習い始めたのがきっかけ。 その後、3ヶ月間イタリア旅行へ行き、アモーレと出会い、41歳の冬にイタリアに渡り、現在に至ります。

AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

http://amaregiappone.com

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