イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「本場のNatale」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

こころ踊る季節の到来

日本ではいつ頃からか”ハロウィン”が一般的なイベントとして楽しまれるようになり、
その時期が終わるとすぐに街はクリスマスモード(商戦)へと突入するようになりました。
ヴァレンタインデーのチョコレートプレゼントや節分の日の恵方巻の丸かじりなど、
何かとイベントごとで大いに盛り上がる、この私達の習性は何に起因するものなのか?と不思議に思えてなりません。
日本人の特性は、”謙虚”で”思慮深い”点だと認識しているのですが…。

クリスマスと言えば、国民の多くがカトリック信者のイタリアではとても大切な習慣の一つになります。
そりゃそうですよね、イエス・キリストが生まれた日なのですから。
クリスマスは”キリスト教”のイベントとして認識されていますが、
キリスト教と言っても多くの教えや宗派があり、イタリアで多くの信者がいるカトリックとは、
アメリカで多くが進行しているプロテスタントとは異なるものになります。
信仰によってお祝いの仕方に違いがあるようですが、
とにかく皆がウキウキするのはイタリアでももちろん同じ光景です。

11月下旬のVerona

クリスマスではなくNatale、イエスではなくジェズー

先月、カトリックの最高位聖職者であるフランチェスコ教皇が日本に訪問され大きく報道されていたことも記憶に新しいですが、安直なイメージとして、キリスト教というものは教皇がいるヴァチカン市国が最も重要な場所であり、また、そのヴァチカン市国が所在するイタリアで祝われている”クリスマス”が世界のベースになっているとものだと思っていました。
しかしながら、イタリアではクリスマスはNatale (ナターレ)と呼ばれており、
イエスに関しても、Jesù と綴りジェズーと発音します。
海外からの文化においては、アメリカの影響を受けていることを実感します。

イタリアと日本の間でNataleに対して日常生活上での違いで言うと、Nataleにあたる12月25日と26日はイタリアでは祝日で、またNataleよりも重要な行事として知られる復活祭(Pasqua:パスクア)もありますが、この日も同様に祝日となります。
日本には宗教に関連した祝日は存在しませんし、言っても国民全員が全員が同じ宗教を進行しているわけでもないのにな、と思うとなんだか不思議な感じがしませんか。

”本場”のNataleの愉しみ方

11月中旬にもなると、ショッピングセンターなどではNatale装飾が施され始め、自宅用の飾り付け売り場は週末にはすごい人だかりになります。
また各街に独自のイルミネーションが設営され始めますが、基本的にツリーなどのNataleの装飾は12月8日以降に大々的にお目見えします。
なぜ12月8日以降なのかと言うと、この日は「無原罪の御宿り」の日。
「ジェズーの母親である聖母マリアはその存在の最初(母アンナの胎内に宿った時)から原罪を免れていた」ということを、時のローマ教皇ピウス9世が教義として正式に制定したのが1854年のこの日になります。そして今日では祝日になっています。
来たるNataleをお祝いするために人々はこの日から自宅の飾り付けなどを始め、Nataleがやってくるので気持ちを落ち、着け清らかな心持ちで準備をしましょう、という教えがあるためにNataleに関する装飾は8日以降に披露されることになります。
もちろん、そんな教えはよそにその日を待たずに家中をキラキラに装飾している家庭も多くありますので、Nataleを楽しむ気持ちはどこでも共通ですね。
また、飾り付けにはクリスマスツリーはもちろん、ジェズーの誕生の時をジオラマ的に表現したPresepio(プレゼーピオ)などがあり、これを見たら一気にクリスマス気分が盛り上がります。

Jesu’が生まれたところを表現したPresepio。Jesu’ の人形は12月24日の夜中に置かれます

Nataleの当日は25日ですが、多くの人達は24日の晩からお祝いを始めます。
日本人にとっては24日の晩がクリスマス本番なのですが…。
多くの人はこの2日間は家族と一緒に自宅で過ごします。
24日の晩は la Vigilia (ヴィジリア) di Natale と呼ばれ、お肉を食べず清貧に過ごす夜と考えられており、伝統に則りお肉料理が食卓に上がることはあまりありません。
ですが、今となっては「お肉を食べない」定義だけ尊重され、清貧には程遠いとてもとても豪華な魚介系の料理をマンマたちは盛大に用意します。
そして、25日は家族や親戚一同で盛大な昼食です。お肉料理を戴く方がほとんどではないでしょうか。
サンタクロース、彼もイタリアではBabbo Natale(バッボナターレ)とイタリアンネームで呼ばれています。プレゼントを枕元ではなくツリーの下に置いていくので、そのプレゼントの包みを豪快にバリバリと開けるお楽しみも忘れてはいけません。

Natale期間が終わるのは、なんと公現祭と呼ばれる1月6日で、そしてもちろん祝日です。
東方の三博士がジェズーの誕生を祝しその元に訪れた、ジェズーの誕生と存在が公けになった日で、ロシア正教会などでは、1月6日をいわゆる”クリスマス”として盛大にお祝いするほど、宗教的にはとても重要な日とされています。
イタリアでは、この日はエピファニア(Epifania)と呼ばれ、ベファーナと言う魔法使いのおばあさんが子どもたちにプレゼントを持って自宅にやってきます。
ベファーナはなんと日本のサンタクロースの如く、子どもたちが用意した靴下の中にプレゼントを入れていくのが興味深いこと。
この日を経て装飾を片付けだし、ようやく長かったイタリアのNataleが終了を迎えることになるのです。

Nataleの日の家族のテーブル。前菜から始まり食事はまだまだ続きます

Nataleの本来の趣旨も大切に…

私が子供の時からクリスマスは無くてはならない大事なイベント。
サンタさんからのプレゼントを心待ちにしたり、
大きくなると友達とパーティをしたり、恋人と素敵な食事をしたり、素敵な想い出が沢山出来る日ですが、せっかくですので本場での愉しみ方、意味や由来をご紹介させていただきました。
商業的な観点から年を追う毎に盛大に楽しまれるようになってきているのは致し方ないことで、なんと2005年にはローマ教皇のベネディクト5世が、今のNataleの商業的側面に対して本来の降誕祭のあり方を考えるように、とコメントを出されているほど。
私が若かった頃はカップルたちが12月24日の聖夜を二人きりで過ごすために高級ホテルをこぞって、競いあって予約していました。
そんな当時の日本の状況を思い出すと、顔から火が出るほど恥ずかしくなっちゃいます。


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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