イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「名前にまつわるびとくらし」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの生活はどんな感じなのでしょうか。
ファッションや美術品、数多くの世界遺産で知られるイタリアですが、もちろん”日常”も存在しています。
そんな日常から「びとくらし」的なトピックを、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

なぜこんなに同じ名前の人が多いのか

世界遺産にも登録されているアッシジにあるサン・フランチェスコ教会

イタリアに暮らし出すまではイタリア人の知り合いも少なく、大して気にはしていなかったのですが、ここにはとにかく同じ名前を持つ人がたくさん存在しています。
男性ならマルコ、ファビオ、アルベルト、女性ならマリア、アンナ、ジュリアなど、日本ででもよく聞く所謂外国人名だと思いますが、私の知り合いの中だけでも、これらの名前を持つ人は複数いて、名前が被らない事はまず無いと言っても過言ではありません。
日本で子供の名前を決める際、音や漢字の意味、画数などを吟味するものですが、イタリアではどうなのかというと「守護聖人」にあやかった名前が多く見受けられます。
守護聖人とは様々な場所や職業を守護するために定められた「聖人:Sant (サント)」のことで、例えば、日本という場所には、日本にキリスト教を初めてもたらした宣教師フランシスコ・ザビエルが守護聖人として定められています。
さて、フランシスコの綴りはFrancesco。イタリア語の発音では”フランチェスコ”となります。
フランチェスコと言うと、今のローマ教皇はフランチェスコ(フランシスコ)ですが、この
マルケ州との境に近いウンブリア州のアッシジの聖人フランチェスコの名前に由来しています。
アッシジの聖人フランチェスコは「清貧の聖人」と呼ばれ、中世の聖人達の中でも非常に人気が高く、そのため、ウンブリア州と共に教皇領であったマルケ州では、今なお彼の名前、男性ならフランチェスコ、女性ならフランチェスカ、を持つ人がとても多いことが特徴的です。
私の周りにもびっくりするほど沢山存在しています。
この様に、いろいろな役割や逸話を持つ聖人にちなんだ名前を自分の子供につける親も少なくありません。
ちなみに、フランチェスコという名前、今では聞き馴染みのある名前ですが、聖人フランチェスコがそう名付けられた頃には「フランス人」という意味を持つ程度の名前で、とても珍しいものとして認識されていたらしいです。
当時で言うキラキラネームですね。今のこの普遍性が少し面白く感じられます。

家族をつなげる名前の存在

また、聖人の名前をつける他によくある名付け方は、親族の名前を継承する場合です。
多くは祖父母の名前を子供につけるという形でしょうか。
亡くなった大好きなおじいちゃんの名前を息子に、とか、素敵な叔母さんの名前を戴いた、などはよく聞く話しです。
私の主人の名前も実は彼の祖父の名前をそのまま戴いたもの。
義父がまだ幼い頃に亡くなった祖父を偲んで、男の子が出来たらつけると決めていたのだとか。
お父さんを早くに亡くした友人は、自分の子供にお父さんの名前をそのままつけています。
日本でよくある、あやかりたい人の名前に使われている漢字の一つを使うというものに似ていますね。
名前のヴァリエーションがとても少ないのは、家族で名前を脈々と受け継いでいること、そして当然のものとして受け継ぎ続けていることも由来しているのでしょう。

ちなみに、典型的なイタリア名の考え方に、男性名ならば”O”で、女性名ならば”A”で終わるというものがあります。
Francescoの例でも挙げましたが、男性ならばFrancesco(フランチェスコ)、女性ならばFrancesca(フランチェスカ)。他にも、Roberto(ロベルト・男性)、Roberta(ロベルタ・女性)、Carlo(カルロ・男性)、Carla(カルラ・女性)など、色々と存在しています。
これはラテン語が派生したイタリア語ならではで、そもそもすべての名詞には性別があり、男性名詞の多くは”O”で終わり、女性名詞の多くは”A”で終わるというものと同じです。
名詞に性別があるということ自体が、日本語を使う私達にとっては何ともつかみにくいルールですよね。
”子(Ko・こ)”が最後につく日本女性の名前は、音からすると男っぽく感じられていそうで、
私のNiwa(名字)、 Atsuko(名前)は、彼らからすると、どちらが名前なのか一見理解しにくいのだろうな、と思ってしまいます。

名前呼びがヒトの関係を近くする

さて、日本と違い「さん」や「君」などの呼称が無いこの国では、想像に易いと思いますが人を呼ぶときは基本的に名前の呼び捨てになります。
これはイタリアだけでは無く、おそらく多くの他の外国でも同じ様な状況なのでは無いでしょうか。
ただ、同じ名前があまりにも多く存在するために、仲間内では苗字で呼び合ったりもしていて、外国人は名前で呼び合う、と勝手にイメージしていた私にとってはとても新鮮なものでした。
ちなみに苗字については日本と違いかなり多くの種類があるように感じられます。
また特定の苗字には土着性があり、イタリアのどのエリアの出身かが分かることもあるようで、興味深いですよね。

この”誰れでも名前で呼ばなければいけないという”状況ですが、当然ながら相手がどんな立場にあっても名前の呼び捨てになります。
そう、会社の上司や社長、はたまた義理のお父さんやお母さんが相手であっても。
想像してみてください、職場であなたの上司に当たる人を「たかし!」なんて呼んでいるところを。
日本で暮らした年数が長いからか、目上の人や年上の人を名前で呼び捨てにすることが、私にはとても難しく感じられ、実は今でもちょっと苦手です。
ただ一つ言えることは、この相手のことを名前で呼ぶという作業、コミュニケーションをうまく取る上では想像以上に効果的です。
名前に呼称を付けずに相手と会話を行うと、二人の間にある壁が一気に取り払われる感覚に陥ります。
ステイタスが違えども互いの立場は対等であり、日本の様に上下関係のしがらみがある故に言葉を遣いを細かく考えて会話する必要もありません。
ぜひ、イタリアに来られた際は、大して知らない相手との会話ででも、気軽に名前を呼び捨てにして会話をしてみてください。
空気がなごみ、まるで昔からの友達かのようなリラックスした雰囲気で彼らは話し始めると思いますよ。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳、日本語教師なども徐々に行っています。

出版広告業界を経て、その後15年弱、不動産業界の広報・採用業務に携わる。40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアに興味を持ったのは、様々な種類があり個性豊かなイタリアワインをよく飲む中で、イタリアワインについているエチケットが自分で読めたら、もっとワインを愉しめるのではないかと思いイタリア語を習い始めたのがきっかけ。 その後、3ヶ月間イタリア旅行へ行き、アモーレと出会い、41歳の冬にイタリアに渡り、現在に至ります。

AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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