イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「春の訪れを待つ」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの生活はどんな感じなのでしょうか。
ファッションや美術品、数多くの世界遺産で知られるイタリアですが、もちろん”日常”も存在しています。
そんな日常から「びとくらし」的なトピックを、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

コロナウィルス(COVID-19)が与えた影響

コロナウィルス(COVID-19)感染の広がりがまだおさまならず、気持ち的にも落ち着かない日々が続いています。
全世界に蔓延が広がっていますが、特に日本と私が住むイタリアでは早期から多くの感染が確認され、
各国の中でも注意喚起がより強く敷かているのはみなさん御存知の通りでしょう。
日本の状況もこちらのニュースでよく取り上げられ、イタリア国民の興味の高さが伺えます。
また、イタリアの状況についてですが、日本に住む多くの友人から私の身を心配するメッセージが送られてきました。そのことから、日本ではかなり厳しいトーンのニュースが流れているのだろうな、と実感しています。

私が住むエリア、マルケ州は本日(2020年3月3日)にイエローゾーンに指定され、
大学や学校の閉鎖や公共施設やお店での予防対策の義務化がなされました。
そのコムーネ(市)への出入りが禁じられるレッドゾーンよりは、
かなり緩やかな規制内容になりますが、それでも日常生活にはかなりの変化が見込まれます。
近所の郵便局では早々に入場者数の制限がなされ屋外で待つ人が見受けられたり、
レストランではテーブル同士の間隔を1m以上開けることが定められ、その規定に従っているかどうかを市当局が検査に回っているそうです。

郵便局前で列をなすひとびと

国は違えど似た様な状況も

実際の生活面で見ると日本と似たようなことは沢山起こっています。
レッドゾーンに指定された市のスーパーでは商品の買い占めが発生し商品棚が空っぽになったり、
我が家の近所でも消毒薬はずっと売り切れで、またマスクの高額転売が問題にもなっています。
残念なことに中国人の方が経営する多くのお店やレストランは休暇に入り、街でもあまり姿を見かけなくなりました。
幸運なことに見た目による差別行為を受けていませんが、在伊の日本人友達の中には辛い思いをしている人もいることは確かです。

発生当初、またイタリアにて感染が初めて認められた頃、国中がにわかにパニック状態に陥りました。
正体のわかならい敵を相手にどのように戦うべきなのかみなが右往左往し、世界の終わりが来るかのような悲壮感が漂っていましたが、時が経つに連れ穏やかになり、コロナウィルスを皮肉ったり、笑いに変えるような行動も多く見られるようになりました。
とにかく手を洗うことが推奨され、頬を寄せあってキスすることが通常の挨拶なのですが、これに関しても今は控えるようにしています。

日本と違うことは、マスクを使っている人が殆どいないことでしょうか。
主人いわく「マスクをしている姿を他人に見せるのが恥ずかしいから」という理由だそうです。
イタリア人の美意識の高さからくるものなのか、おしゃれは我慢からと言う言葉を思い出した次第です。
世界中であれほどマスク不足が叫ばれている中で、この彼らはそんなことはお構いなしの模様。
感染予防という観点からはマスクは有用なものでしょう、が、日本や中国の街の様子に比べてイタリアのそれがさほ重苦しい雰囲気にならないのは、街を行く人々の表情が見えるからなのかも知れません。

春よ来い、早く来い

3月8日は女性の日。ミモザも美しく花開きました

今年はとても暖冬で、例年なら曇りがち鬱々とした天気が続くのですが、快晴の日が多くまるで日本の冬のように気持ちの良い毎日でした。
自然環境とってはこの異常な暖かさはあまり良い影響を与えないのかも知れませんが、私にとってはとても過ごしやすい冬になりました。
そして今。
3月に入り、あれだけ暖かさを堪能した冬を経験したのに、まさに本物の春が訪れていることが感じられます。
日も長くなり、木々の花々の蕾が開き始め、小さな生まれてたのてんとう虫が洗濯物にくっつき、公道に多くの農業用車両が行き交い始めています。
新しい命が芽吹くこの季節、暖かさとともにこの新しいウィルスが力を潜めてくれることを願うばかり。

厳しい冬が終わり、新しい季節の始まりを心静かに待ちたいと思います。


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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