イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「イタリア人とおしゃべり」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

会話は生まれるのではなく創り出すもの

「さぁ、今日あったことを僕に話してみて。」
この言葉は私の主人がよく私との会話で使うフレーズの一つです。
私にとってはいつもと大して変わらずなんら特筆すべきことがない1日でも、彼に語って聞かせなくてはいけなく、これがなかなか難しい。
日本人特有の「相手の気持ちを慮る(おもんばかる)」癖があるのか、どうしても聞き手の気持ちを考えてしまい「つまらないこと」をわざわざ披露することを躊躇ってしまいます。
ですが、もしイタリア人に同じ質問をしたらどうでしょう。
おそらく「Allora… (えっとねぇ~)」という言葉を皮切りに、買い物に行ってかわいいブラウスを見つけたことや、面白いシリーズドラマを見始めたこと、隣りに住むおじいちゃんが飼っている鶏が生みたての卵をくれたことなどをよどみなく話し始めること間違いなし。
もともと会話を準備していたわけではないのに、嬉々として自分に起きたことを語りはじめるその様子は、聞き手からするとまるでちゃんと用意されていた話しを聞いているかのように感じられます。
その様子は大人と子供の会話でも同じです。子供だからと言って特別な扱いをするわけではなく、まるで大人同士の様に会話を促し、子供も大人からの問いかけに対等に答えます。
このように小さな時から大人と遜色なく話す機会が多くあり、いろいろな会話と間近に接している彼らは自然と話題を創り出す術を培っているのではないでしょうか。

メロディアスな言葉がつらなって

二人きりの時でもグループででも、とにかく会話が尽きることは無く時間のすべての空白を埋めるかのごとくさまざまな会話が成されます。
特にグループの時は大変で、それぞれが好き勝手に話題を振って話しだすことがよくあります。そして、その会話の相手が離れた席に座っていてもお構いなし。食卓の上をクロスしていくつもの会話が行き交い、それにつれて皆の声のボリュームがあがっていく、なんてこともよくある話しで、レストランがとても騒がしく感じられるのはこれが一因だと睨んでいます。
電話でのおしゃべりも毎日会っている様な間柄であっても、相手の体調や家族の様子を聞くことから始まり、まるで人生を語りつくしているのではないだろうかというくらいに話し続けます。
ちなみに仕事中であっても私用電話が許されるケースは多く、伴侶やパートナーからの電話の受け答えしている人の多いこと。しかも1日に数度という頻度で掛け合っていて何をそんなに話すことがあるのか?と不思議に感じます。
実のところ、私の主人も仕事中に何度も電話をかけてきては「調子どう?大丈夫?」と聞いてくるのですが、少しでも面倒くさそうに答えようものなら、更に心配をしていつも以上にコンタクトを取ろうとするので、できるだけ笑顔を保ち平静に対応するように心がけています。
顔と顔を合わせての会話でも窮することがある私ですが、電話での会話は本当に難しく、発信ボタンを押す前に伝えるべきことはもちろん、会話に挟む小ばなしをまずは頭の中で整理して挑んでいます。とは言うものの、大概は相手のペースに乗せられれて、小ばなしを披露する機会はあまりありませんが。そう、イタリア語は音楽を奏でるかのようにメロディアスで、リズムよいテンポと抑揚を持っています。イタリア語を知らない方ならば、イタリア語で流ちょうに語る姿を見て、まるで歌を歌っているように感じらることでしょう。
ですので、会話にもこのリズムとテンポが必要で、丁々発止なやりとりがその基本にあるのかも知れません。大阪生まれ、大阪育ちの私にとっては「ボケ」と「ツッコミ」を基調にしたテンポの良い会話の中で培われた会話能力をぜひ生かせるようになりたいものです。

マルケ州の名所めぐり(1) マルケ州最南部、アスコリピチェーノ県にあるポポロ広場 Piazza del Popolo。イタリアで3大美しいピアッツァの一つに数えられています

当サイトの画像やイラスト、文書等の無断転載・無断使用はお断りいたします。ご使用をご希望される場合はお問い合わせください。

 


Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。 出版広告業界を経て、不動産業界の広報・採用業務に携わり、40歳目前に違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に41歳の冬にイタリアに渡り、現在で6年目に至る。 AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

http://amaregiappone.com
https://www.facebook.com/amaregiappone.Atsuko.Niwa/

http://amaregiappone.com 記事一覧を見る

カテゴリー内の最近更新された記事

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]

  • 「掃除のちから」

    bitokurashiの主宰者小林朗子さんは整理収納コンサルタント。 単に住まいの整理を助けるという役割で終わるのではなく、整理するターゲットを住まい、ひと、街とへと広げ全体を俯瞰し、ひとの暮らしについて深く研究されてい […]

  • 今月の旬を味わう「柚子」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「まだまだ遠い日本」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]

  • 「使ってみてわかる良さ」

    bitokurashiの主宰者小林朗子さんは整理収納コンサルタント。 単に住まいの整理を助けるという役割で終わるのではなく、整理するターゲットを住まい、ひと、街とへと広げ全体を俯瞰し、ひとの暮らしについて深く研究されてい […]

  • 写真とエッセイ「アサギマダラに会いに」

    写真で日常を切り取る、びとくらし。 写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。 スマートフォンの普及で写真を撮る機会が多くなった昨今ですが、何を写すか、どう感じるか、など、 […]

  • イタリア時間「幸せのはかり方」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]

  • 今月の旬を味わう「ざくろ」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • 「私の考えるおかたづけ」

    bitokurashiの主宰者小林朗子さんは整理収納コンサルタント。 単に住まいの整理を助けるという役割で終わるのではなく、整理するターゲットを住まい、ひと、街とへと広げ全体を俯瞰し、ひとの暮らしについて深く研究されてい […]

  • 写真とエッセイ「森の道」

    写真で日常を切り取る、びとくらし。 写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。 スマートフォンの普及で写真を撮る機会が多くなった昨今ですが、何を写すか、どう感じるか、など、 […]

  • イタリア時間「不合理な日常茶飯事」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]