イタリア時間でびとくらし

イタリア時間「イタリアの結婚事情」

イタリア生活で見つける「びとくらし」

イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。

イタリアに暮らす彼女の話しを聞いていると、度々、イタリアでは日本と全く違う時間が流れているように感じることがあります。しかもとても豊かな時間でした。時間の流れの違いの中に豊かさの理由が隠されているように思えてなりません。ぜひ、この理由を一緒に探してみませんか?

夫婦のかたち、家族のかたち

イタリア人の夫と結婚してそろそろ3年が経とうとしています。
2013年にイタリアで知り合い、私は日本での再就職が控えていたため即帰国。その後、遠距離恋愛を経て2年後に渡伊をすることになったわけですが、籍を入れるまで約3年間は同居人という形で暮らし、その後入籍し今に至っています。
子供はおらず夫婦水入らずの生活です。
イタリアも日本と同様、晩婚化が顕著で、私たちの様に子供を持たないカップルもかなり数多く見受けられます。先月のエッセイでご紹介したように、若者の就職率が低くまたその親世代が比較的裕福に生活していることから、子供の親離れがなかなか進まないこと、また経済的に自立が難しということがまず問題の根本にあると思われます。あとはやはり女性も職を持つことが当たり前となった今、子育てに対しての社会的支援の相対的な欠如もあげられると思います。どちらの問題も、今まさに日本が瀕している状況と近しく、おそらくどこの国でも簡単に片づけられるものではないことがひしひしと感じられます。
物質的に豊かになり、テクノロジーも飛躍的に進歩している昨今ですが、何事も私達人間のキャパシティを超えるスピードで進化してしまって、実際の生活を自分たちが作りあげた仕組みの中に上手くはめ込めることが出来ていなような印象を受けるのは私だけでしょうか。

イタリアの結婚式とは

イタリアでキリスト教徒(多くはカトリックです)の方が結婚する場合、二人が夫婦関係となって運命共同体として人生を過ごすことを、神様のもとで誓約する儀式を行います。
いわゆる教会で神父によって執り行われる結婚式がこれを指し、多くの方は教会での結婚式を選択します。しかしながら、教会式を執り行う為には、挙式前に神父からの講義を受ける必要があったり、また自分が通う教会ではない教会での挙式に関しては、簡単に許可が降りなかったりします。
ちなみに教会は居住地によって管轄が決まっているようです。日本の学校区みたいな感じですね。

私たちの場合も、私がキリスト教徒ではない上に、夫の教会区から遠く離れた街での挙式を所望していたため、早々に教会式は諦めて、もう一つの挙式の方法であるコムーネ(市役所)での人前式を選択しました。書類を提出するだけで婚姻関係が成立する日本と違い、市長や代位する方の前で宣誓や署名をするセレモニーがあり、その場に家族や友人などを招待することも可能です。またそのコムーネ内にある「映える」場所での有償挙式をサービスとして提供している場合もあり、私たちは古城での挙式を選びました。挙式とといっても、ものの10分もかからないものなのですけど。当日、市長が不在だった為、お肉屋さんを経営している副市長さんが式を執り行って下さり、式後に披露宴会場に向かう際にお肉屋さんの前でエプロンをつけた副市長さんに再度お会いし、「おめでとう!」と言って頂いたことも今となっては良い思い出です。日本だったら「興ざめした!」とクレームを入れられそうな出来事ですが、イタリアだとなぜか大らかに受け入れられるのが不思議ですね。

結婚のシステムで一番興味深かったのが、「結婚の公告」制度です。
挙式をする前に居住地のコムーネに結婚の申請を民事登録官の前で行う必要があるわけですが、その後に最低でも8日間の間、二人の結婚が広く公告され、この結婚に意義がある人が意見を言える機会を設けます。昔は役所の掲示板を利用していたのでしょうが、現在はホームページにて掲載され、実際に私たちの結婚についてもHPで確認することが出来ました。それにしても、この公告には本人に名前や生年月日、そして結婚しようとしている事実が明かされているわけで、個人情報の取り扱いの意識の差がよくわかる事例かと思われます。ちなみに、この制度はカトリックによるもので、現在では実施に関してはコムーネの判断にゆだねられているらしいのですが、ほとんどのコムーネで実施され続けているようです。

結婚、そしてそれぞれの価値観

少し前までは20歳代に結婚し、子供を得て家族を持つことが世間の常識、人の幸せと考えられていたかと思います。私に関して言うと離婚も経験し子供もいない人生ですので、大きくスタンダードからはみ出ている状態で、少し前の時代ならば陰口をたたかれていたかも知れません。時代は大きく変わり結婚制度へもその変化のうねりは来ているように見えますが、日本では年頃の男女が一つ屋根の下に住み、子供をもうけた際に結婚を選択することが極めて「普通」にとらえられているでしょう。
さて、ここイタリアではどうでしょうか?
私の周りにたくさん存在するのが非婚のカップルたちです。結婚と言う儀式、形式が宗教からきているものであり、自分は無宗派なので結婚はしないというカップルが友達にいます。彼らには中学生と小学生の子供が二人いますが、Compagno/a (伴侶)として生活を共にしており、だれに後ろゆびを指されることもなく過ごしています。
また、そのほかにも多くのカップルが事実婚の状態で結婚しない選択をしています。
特に一度離婚を経験している人に多く見られるような気がします。もともと、カトリックの教えから離婚することが合法ではなかった歴史や、現在でも離婚までに3年間の別居が必要であったり、離婚後も収入が多い方が相手方の扶養義務があったりなど、万が一、結婚を終える際の不自由さを危惧して、自由な形式を選択している人たちが多いように思えます。

イタリア人男性のナンパな雰囲気やイタリア人の地中海性気質などがステレオタイプ的に認識されていますが、宗教の教えも大きく関与し実際はかなりシビアで真摯な状況にあるイタリアの結婚事情。実際に経験してみないとわからないことだらけですね。

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Atsuko Niwa 丹羽淳子

イタリア マルケ州在住。現在はワインや蜂蜜を日本に輸出する業務に携わり、翻訳やアテンド業を行う。

出版広告業界を経て、長年不動産業界の広報・採用業務に携わっていたが違う世界を見てみたくなりワイン業界へ転身。イタリアワインのエチケットを理解したいと思いイタリア語を習い始めたことをきっかけから最終的に渡伊し、現在で7年目に至り、イタリア商品の日本輸入コンサルタントなどで活躍する。

AIS認定ソムリエ、WSET Level2(ワインを理解するうえで不可欠な知識を得ることを目指すイギリスの資格)。

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