暮らしのそばにある折形

日本の「つつむ」という生活文化「折形」

日本の「つつむ」という生活文化「折形」

日本には数多くの伝統文化が継承されています。

私達の生活で自然と受け継がれ、その由来に気づかず慣れ親しんでいるものも多くあり、
その一つに「折形-おりかた」があります。

「折形-おりかた」は、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は日本人としての私達の生活やアイデンティティにも深く関係している伝統文化です。
“少しでも多くの人にこの「折形-おりかた」を知って欲しい“との思いで、折形の文化を学び広める活動をされている小池博美さんに、その想いや魅力についてお伺いしました。

折形は暮らしの中にあり、現代の暮らしに合った「折形」がこれからも私たちの暮らしをより、豊かにしてくれるものだとの思いも「折形」にのせて伝えたいメッセージです。

「暮らしのそばにある折形-おりかた」では、お伺いしたお話しをインタビュー形式で毎月お届けします。

-「折形(おりかた)」とは聞き慣れない言葉ですが。

そうですね、言葉自体には聞き馴染みが無い方が多いと思いますが、私達の生活に密着した文化の一つになります。

そもそも、その誕生は今から600年ほど前、室町時代の足利義満将軍の治世時にまで遡ります。

この時代に和紙を折って包むその作法が「折形礼法」として法令化され、小笠原家、今川家、伊勢家の三武家がこの折形礼法を正式に継承する高家として定められました。

この時代、和紙は大層な高級品ですので、もちろん伝えるにしても上級武家であることが必要でした。

この三武家による一家相伝、口伝のみで江戸時代まで受け継がれましたが、紙の生産が容易になり、印刷技術が格段に向上したことで書として印刷されるようになり、それと同時に多くの人に知られるようになりました。

「折形」というと確かににあまり日常生活で耳にされる機会はめったに無いと思いますが、「折紙」ならどうでしょう?江戸時代には庶民にも広まった「折形」が礼法の枠を超え、子どもたちのお遊戯として折紙が誕生したものなのですよ。

あと、お祝儀袋なども、私達のよく知るところだと思います。

-なかなか格式の高いものに感じられますが、「折形」を伝承していた武家の末裔でいらっしゃるとか?

いえいえ、全くそんなことは無いです。

「折形」の原点は和紙を使うことなのですが、ユネスコの無形文化遺産として「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」で登録された3つの和紙の一つ「本美濃和紙」が生み出される岐阜県美濃地方が私の父の生まれ故郷になります。

伝統的な和紙の名産地だったことから、生活に密接して紙を使う習慣があったことはよく覚えています。

例えば、ご近所さんにお野菜をお裾分けするとき、今ならビニール袋に入れて渡すことが普通なのでしょうが、近くにある紙を手に取ってくるりと包んで口を結んでお渡ししたり。

今日の生活様式と比べると、物を紙で包むことはもちろん、紙を使う機会そのものがとても多かったことが思い出されます。

その当時は身近にある和紙の存在を意識していたわけではなくて、それこそ私の母なら自然と紙で包んでいたよう物であっても、便利だからと既製品の袋物を使っていたくらいですから。

とにかく私が育ってきた暮らしを支える根っこ部分の一つに紙があったことは確かで、和紙を使う「折形」という日本文化に魅入られることは至極当然、納得のいく流れだったように感じます。

子供の頃のこれらの経験と、海外での暮らしは、今回の「折形」にたどりつくまでの今の私にとって、大切な一部になったと感じています。

今回は折形の入り口の部分をお聞きしました。次回に続きます。

次回は海外での暮らしについてのお話しを伺いたいと思います。

<お話しをうかがって…>

お恥ずかしながら「折形」を小池さんに出会ってから知ったわけですが、その歴史の長さや「折形」を礼法として定めたというところにも日本人らしさを感じてなりません。これからのお話しや、折形というもの自体をお教えいただくことによって日本人のルーツについて少し垣間見ることが出来そうです。

(聞き手と書き手:Atsuko Niwa)

小池博美さんのお教室が阪神電車西宮駅にある喫茶部ガレージにて開催されます。
ご興味のある方はぜひご参加ください。

【お教室】折形(おりかた)−暮らしの中で愉しむ季節の折形−

詳細はこちらのブログを御覧ください。[ブログはこちら

当サイトの画像やイラスト、文書等の無断転載・無断使用はお断りいたします。ご使用をご希望される場合はお問い合わせください。

Hiromi Koike 小池博美

2014年に「折形」と出会い、現在は大阪の「荒木蓬莱堂」の4代目店主、荒木隆弘氏に師事。 古書や文献を頼りに自身も「折形」の研究に励み、現在はその魅力を少しでも多くの人に知ってもらうべく、セミナーなどで講師業を行っている。

https://instagram.com/so1126mh?utm_medium=copy_link

記事一覧を見る

カテゴリー内の最近更新された記事

  • vol.9 高齢期の「整理収納」に関する意識調査

    人生の最期に向けた準備や意識

    身の回りのモノの整理や遺産相続についてなど、生前に自分がしておきたいことを考える時間はとれていますか。アンケート調査から「終活」の準備への意識を読み解きます。

  • vol.8 遺品整理業者に聞く「生前整理」の準備

    遺品整理の実情とは

    高齢者が行う「生前整理」と遺族が行う「遺品整理」。終活は、高齢者本人だけでなく、家族みんなで取り組むテーマです。

  • vol.7 高齢者住み替えアドバイザーが語る高齢期の整理

    高齢者の「住み替え」のタイミング

    高齢者の「住み替え」はどのようなタイミングが良いのでしょうか。また「住み替え」に伴うモノの移動や処分はどのように行われるのでしょうか。高齢者住み替えアドバイザーから学びます。

  • vol.6 「モノ」への意識に関する調査

    家の中のモノの量とモノを捨てること

    家の中のモノの量やモノを捨てるということに関して、アンケートをもとに性別や年齢別に比較しています。家の中でどのようなモノが多く存在し、どのようなモノが捨てられないのでしょうか。

  • vol.5 暮らしのなかのモノの変化

    「生活財生態学」とは?モノを生態学的にとらえる

    戦争や産業の発展などの社会情勢の変化は、家庭内のモノにも大きな影響をもたらしていました。日本の家庭に保有される生活財を調査した「生活財生態学」の研究から、モノの変遷を読み解きます。

  • vol.4 「整理」に関する書籍の変遷

    書籍から読み解く「整理収納」への関心

    今では広く使われるようになった「断捨離」や「終活」といった言葉は、いつ誕生したのでしょうか。「整理」に関する出版書籍から、時代とともに変化する言葉やターゲット層について読み解きます。

  • vol.3 高齢社会の実態-家族構成と一人暮らし-

    高齢社会の実態をデータから読み解く

    日本の高齢社会の実態を理解したうえで、高齢者の「整理収納」における課題を考えます。

  • vol.2 既往研究から探る -高齢者と住み替え-

    「高齢者」「住み替え」「モノの整理」に関する先行研究のまとめ

    高齢者の住み替えやモノの整理に関して、これまでの研究ではどのようなことに着目し、どのような結論を見出しているのでしょうか。過去の研究内容を分かりやすくまとめました。

  • vol.1 高齢社会における「整理収納」

    高齢期に向けた整理収納の課題とQOL向上のヒント

    暮らしにあふれるモノは、人生の節目ごとに見直しが必要です。高齢期には生前整理や遺品整理と向き合う場面も増えますが、自分らしく整えることが、安心と心地よい暮らしにつながります。

  • bitokurashiリニューアルのお知らせ

    みなさま、はじめまして。あるいはお久しぶりです。「bitokurashi.com」をご覧いただき、ありがとうございます。 2017年7月にスタートした「びとくらし」は、2025年9月に内容やコンセプトをリニューアルをさせ […]

  • 今月の旬を味わう「みかん」

    季節がかわるごとに、いろいろな食材を目にします。 「旬」の食材をいただくことは、その美味しさはもちろん、自然に共調し心身ともに健やかにしてくれます。 しかしながら、毎日を慌ただしく過ごしていると、いつの間にか時間が目の前 […]

  • イタリア時間「年の終わりは忙しなく」

    イタリア生活で見つける「びとくらし」 イタリアでの日常生活の中にある、すこしだけ幸せに感じたり、すこしだけリラックスできたりするような「びとくらし」的な出来事を、マルケ州アンコーナ住まいのライターが紹介します。 イタリア […]