写真で日常を切り取る、びとくらし
「びとくらし」のトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。
いつもの日常も切り取り方、感じ方次第で特別な日になることもたくさんあります。
そんな切り取り方を少しのぞかせていただきます。
「街路樹のおはなし」
道路沿いに植えられている樹木、街路樹。
四季のゆたかな景観づくりだけでなく、防風・防じん・防音・防火など、他にもいろいろな役割を持ち、わたし達のくらしを守ってくれています。
身近な街路樹のひとつに「車輪梅(シャリンバイ)」という、低く剪定された常緑樹があります。
はじめは「よくある植え込み」くらいに思っていたのですが、ある日、顔なじみのおじさんが「名前は『シャリンバイ』。大島紬の染料に使われているんだよ」と教えてくださいました。
名前を知ると親しみがわき、それからは、初夏に白いかわいい花が咲き、ついた実が、秋から冬にブルーベリーのような色に変化していく季節の移ろいを、家族で観察し話題にしています。
阪神間ではもうすぐ、ハクモクレン、コブシ、ハナミズキなど、白い花をたくさんつける木があちこちで見られ、道ゆくひとの目を楽しませてくれる季節です。
元町駅近くで、初めて見た満開のコブシに、とても感動したことを覚えています。
その木の多くは「阪神淡路大震災」の発生後に、著名人らの呼びかけで始まった「ひょうごグリーンネットワーク運動」という活動で集まった、募金や苗木の寄付で植えられたものでした。
10年間で被災地に植えられ木は、約30万5千本。
そのうちの半分以上が「白い花をいっぱい咲かせよう」と、白い花をつける木なのだそう。
そしてその花には、亡くなったかたへの鎮魂、震災の教訓を忘れない気持ちが託されているのだそうです。
今年で震災から25年。
わたしが神戸に住み始めて16年。
そのこめられた想いを知らず、ただただ「キレイだなぁ」と春がきたことをよろこび、鑑賞して過ごしていました。
これからはその木々を「今年も白い花がいっぱい咲いてくれたな。無事に咲くことができて、ほんとうに良かったな」と、これまでとはすこし違う気持ちで、見守っていきたいと思います。