写真家からみえる景色

「今年の桜」

写真で日常を切り取る、びとくらし

「びとくらし」のトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。
日常の生活が、いつもの日常とはちょっと違う今年の春。
彼女はどの様にこの春を写真に収めたのでしょうか?
その切り取り方や毎日の暮らし方を少しのぞかせていただきます。

「今年の桜

日々更新される、新型コロナウイルス感染に関する発表やニュース。
いろいろな変更を待ったなしで対応していると「なかなか疲れるな」と感じる日が続いています。

4月の初旬。
仕事帰りに利用した電車は空いている時間帯で、向かい側の車窓の景色が、座っていても良く見えました。「このタイミングだと、きっと桜がきれいだろうな」と、心の中でちょっと期待していました。

窓の外は、沿線に植えられたソメイヨシノの並木が、期待どおりの満開に。
うすいピンク色の花びらが太陽に照らされていると、流れていく景色がとても明るく感じられ、スマホの画面を熱心に見ていたひとも顔をあげるほどでした。

先行きが不透明で不安な気持ちの今年も、春を迎えていつもどおりのうつくしい桜を見ることが出来て、つかの間、心の中でお花見をしました。

4月中旬。
強い雨と風の日がありました。

雪のように散っていく花びらを見ながら「いつもなら地元の桜が散っても、奈良の吉野山や、北へ向かう桜前線の話題が、天気予報を賑わすのになぁ」と、開花やお花見の話題が控えめだった今年の桜を、なごり惜しく想いました。

ちょうどそのころ、住まいのある兵庫県には政府から非常事態宣言が出され、その数日後に県から「休業要請」が出されました。

その影響でわたしの仕事はすべてキャンセルになったので、保育園に通う息子を、家で保育することになりました。

3週間ほど外出自粛となるので、変化の少ない毎日を過ごすことになるかもしれません。
それでも、日常の些細なことが大切な時間だと思う意味でも、記録的な意味でも、日々の写真を撮ろうと思いました。

数日経ってみて、スマホの写真アルバムを開けると、主に息子と、まったくフォトジェニックでないお昼ご飯、パイナップルの落書き、ベランダで育てているサボテン、工事現場の重機、草むらのてんとう虫などが並びました。

毎日を忙しく繰り返しているとしんどくなり、何を見て、何を食べて、どう過ごしていたのか思い出せないことがあります。そんなときは写真を見て「この日はちょっと頑張ったから、今日はゆっくりしよう」と、自分自身のバランスを整え、力を抜くきっかけになればと思います。

そして、家で過ごす時間が増えるので、部屋の中に写真を飾る憩いのスペースを増やしました。

去年、桜の下で撮った記念写真、家族と、友達と、先生と。そこには誰に気兼ねもなく、みんなで遊んだり、勉強したり、仕事をしていた時間が写っています。

いま、わたしも含めて多くのひとが感じている、あたりまえの日常を送れていたことへの感謝の気持ちを、写真を通して思い出せたらな、と思います。

いつかきっとくる事態が収束したあとにも、写真をたくさん撮り続けられる毎日が待っていますように。

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嵐 祥子 Arashi Shoko

2009年、デジタル一眼レフの面白さを知り「写真を撮ること」に興味を持ち、写真表現大学で作品制作を学ぶ。

その後、ウェディングフォトに従事、2012年からフリーランスカメラマンとして活動中。2015年から一児の母です。

arashi.shoko@gmail.com

https://arashishoko.localinfo.jp/

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