写真家からみえる景色

「梅雨のあいまに」

写真で日常を切り取る、びとくらし
「びとくらし」サイトトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。
写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。

「梅雨のあいまに」

梅雨に入り、SNSのタイムラインに、あじさいの写真投稿が並ぶようになりました。

あじさいは低木なので桜ほどは目立ちませんが、見ごろを迎えて手まりのようにふっくらし、街角のあちこちで目を引いています。

昨年の今ごろ、旅行先で観た満開のあじさいがとてもきれいだったなぁと、その写真を見返していました。

そういえば、よく利用する公園にもあじさい園があったことを思い出し、観に行ってみようと、神戸市須磨区にある「神戸市立須磨離宮公園」へ向かいました。

乗り込んだバスは、新型コロナ感染予防対策で、エアコンをつけつつ窓を開放して換気されていました。

走りだすと心地よい風が車内に吹きこみ、なんだか贅沢な換気対策なのでは…と思いましたが、車のエアコンが苦手なわたしにとって、快適な乗車時間となりました。(雨の日は窓を開けられないかもしれません)

今日は、くもり空にあじさいの色がしっとりと映えるだろうと予想していたのですが、着く頃にはすっかり晴れて暑くなり、梅雨の中休みとなりました。

離宮公園は丘に広がる大きな公園で、およそ100年前、前身の「武庫離宮」が建てられ、皇室の別荘として利用されたあと、戦後、神戸市民の憩いの場として建設されたそうです。

何度も遊びに来ているものの、あじさいスポットへはまだ訪れたことがありませんでした。案内図を見てみると、行ったことのない箇所が他にもたくさんありました。

入口でスタッフさんに「いま『しょうぶ』もきれいに咲いていますよ」と教えてもらい「花しょうぶ園」へも回ってみることにしました。

広い敷地には、大きな噴水のある庭園や、季節の花が植えられた植物園があります。

「花しょうぶ園」へ着くまでの遊歩道には、背が高く立派に育った竹や紅葉が、涼しい木陰をたくさん作ってくれていました。

スタッフさんがおっしゃる通り、満開の花しょうぶは、とてもきれいでした。

あじさいと同じく、青・紫系のグラデーションの花色で、ここには約60種類が植えられているそうです。

花しょうぶの品種立札を読んだり、来園者の皆さんがおもいおもいに写真を撮っている様子を眺めたり、庭園に遊びに来ているトンボや鳥を観たり、たのしく過ごしました。

それから地図を見ながら園内を登ったり下ったり。滝の音につられて寄り道し、すこし迷いながら「あじさい園」へ向かいました。

まだ小さなつぼみの株があるものの、青・紫・赤・白・ピンク色に彩られた装飾花は、なんとも言えないうつくしさでした。

身近な存在の「がくあじさい」や、品種改良されたあまり見かけないものまで、花の形も豊富で見ていてあきません。

雨の日にはまた違った表情で、しずくがついて可憐な姿だろうなぁと思います。

すこし進んでは立ち止まり、ゆっくりと撮影しながら散策することが出来ました。

2時間で8,000歩ほど歩いたでしょうか。

自動販売機で冷たい飲み物を購入し、マスクをはずしてホッとひと息。

野外にある休憩所のベンチに座り、目の前に広がる青や緑色の風景を観ながら、思わず「良い日だな」とつぶやきました。

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Shoko Arashi 嵐祥子

2009年、デジタル一眼レフの面白さを知り「写真を撮ること」に興味を持ち、写真表現大学で作品制作を学ぶ。 その後、ウェディングフォトに従事、2012年からフリーランスカメラマンとして活動中。2015年から一児の母です。

https://arashishoko.localinfo.jp

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