「ひととき」

写真家からみえる景色

写真で日常を切り取る、びとくらし
「びとくらし」サイトトップのメイン写真をご提供いただいている、嵐祥子さん。
写真家ならではの視点や、景色の切り取り方、毎日の暮らしぶりを写真と文章で伝えいただきます。

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「ひととき」

朝、出勤中のあわただしい時間。
仕事の予定が急きょ変更になったと連絡があり、3時間ほどぽっかりと空き時間ができました。

急ぎ足で移動していた速度をゆるめ、どう過ごそうかと考えて「そういえば、今朝はまだコーヒーを飲んでいない。とりあえず一杯飲もう」と、駅のコンコースにあるカフェに入ることにしました。

注文口で店員さんにコーヒーのサイズを聞かれたとき「この感じはすごくひさしぶりだ」と思い、そういえばここへ来たのは一年ぶりか、それ以上前になるかもしれないと、時の流れの早さにおどろきました。

コーヒーの出来あがりを待ちながら、コロナ禍で過ごした今年度は、本当にあっというまに過ぎてしまったなぁと、しみじみと振りかえりました。

ソーシャルディスタンスをとられた店内はゆったりとした席数で、イートインはまばらな時間帯。
勉強をしたり、書き物をしたり、常連さんが店員さんと話していたり、それぞれが思い思いに静かに過ごしていました。

コンコース側には大きな窓があり、外の様子がよく見えるようになっています。

わたしはすみっこのソファ席に落ち着き、窓の外をいき交うひとびとが、スピードをゆるめずに足早に通り過ぎていくのを「さっきまでわたしもその中にいたんだ」と、不思議な気持ちで眺めていました。

店内に流れるBGMはゆっくりな曲調のものがセレクトされ、エスプレッソマシンの音とその香ばしいかおり、雰囲気をこわさないように静かにたてられる食器の音。

それらに囲まれて「外と中では、ずいぶん時間の流れが違うように感じるな」と心地よく過ごすうちに、同じ敷地内にあるショッピングモールの開店時間になり、あたりが明るくなりました。

カフェ店内もお客さんが増えてきたので、ちょっと早めに出発し、大きなミモザの木の下を通って仕事場に向かおうかと、お店をあとにしました。

目的地に近づくと、たくさんの小さな黄色の花をつけて重そうな枝が、春の強めの風をうけて、ゆらゆら揺れているのが見えました。その下を「来年の3月までも、やっぱりあっという間に過ぎてしまうのかな」と思いながら撮影し、通り抜けました。

季節がめぐり、おなじ花を、おなじ場所で「今年もみごとだなぁ」と見上げることができ、その一瞬のような時間に立ち会えたことを、うれしく思いました。

いつもは目先のやらなければならないことに、たくさんの時間を使う日々です。
でもときどきは今日のように、時間の流れにゆっくりと添うようなひとときを持ちたいなと思った、一日の始まりになりました。

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